承認
社会哲学と社会政策の対話

A5判 / 458ページ / 上製 / 価格 5,720円 (消費税 520円) 
ISBN978-4-588-62529-9(4-588-62529-2) C1030 [-0001年11月 刊行]

内容紹介

一橋大学大学院社会学研究科の先端課題研究において、「承認」をキーワードに新しい社会状況に対応する社会政策のパラダイムを構想し、政策への応用を試みた共同研究の成果。最先端の研究動向の検討とともに、尊厳の毀損、差異、アイデンティティにかかわる問題を「承認」においてすくいあげ、社会政策、教育学、障害者福祉、ジェンダー論、多文化主義論、政治学など諸領域を横断する体系の構築をめざす。

著訳者プロフィール

田中 拓道(タナカ タクジ)

1971年生まれ。北海道大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(法学)。一橋大学大学院社会学研究科教授。政治理論、比較政治学専攻。『貧困と共和国』(人文書院、2006年)、『福祉レジームの収斂と分岐』(分担執筆、ミネルヴァ書房、2011年)、『よい社会の探求』(風行社、2014年)、ほか。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

編者まえがき
序 章 承認論の射程──社会政策の新たなパラダイム(田中拓道)

第Ⅰ部 理論編
第1章 リベラリズム批判としての承認論──「正義」と「善」の関係をめぐって(大河内泰樹)
◎コラム1 社会哲学の研究動向(岡崎龍)
第2章 政治的リベラリズムにおける承認論の射程(後藤玲子)
第3章 承認と正義──「再分配/承認」論争とその後(加藤泰史)
第4章 労働・承認・闘争──アクセル・ホネットの「労働と承認」論(日暮雅夫)
第5章 社会正義と制度的権力 ティートゥス・シュタール(徳地真弥、訳+解題)

第Ⅱ部 政策編
第6章 学校教育と承認をめぐる問題(山田哲也)
第7章 教育学の承認論的転回?──あるいは、アナクロニズムの甘受について(神代健彦)
第8章 障害者政策における承認──当事者主義の台頭と障害肯定論の広がりを踏まえて(中澤篤史)
第9章 スポーツと承認──その社会政策への利用をめぐって(鈴木直文)
第10章 福祉政策における承認──フランスの最低所得保障改革を事例として(田中拓道)
◎コラム2 福祉政策の研究動向(井上睦)
第11章 承認がうみだす新たな排除とは何か──フランスにおけるマイノリティ承認と「セクシュアル・デモクラシー」(森千香子)
◎コラム3 多文化主義の研究動向──民族・人種マイノリティの承認 (村上一基)
第12章 承認の臨界を考える──あるぺドファイル(小児性愛者)男性の語りから(湯川やよい)

事項索引
人名索引
執筆者紹介

■執筆者紹介

田中拓道(タナカ タクジ)*編者

大河内泰樹(オオコウチ タイジュ)
1973年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(哲学、ルール大学)。一橋大学大学院社会学研究科教授。哲学専攻。Ontologie und Reflexionsbestimmungen(Königshausen und Neumann、2008年)、『人文学と制度』(分担執筆、未來社、2013年)、『労働と思想』(分担執筆、堀之内出版、2015年)、ほか。

岡崎龍(オカザキ リュウ)
1987年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。修士(社会学)。日本学術振興会特別研究員(DC2)。「ヘーゲル『精神現象学』における行為の二重性」(『唯物論』第87号、2013年)、「ヘーゲル『精神現象学』における否定性の問題」(『クァドランテ』第16号、2014年)、「ヘーゲル『精神現象学』における批判の問題」(『クァドランテ』第17号、2015年)、ほか。

後藤玲子(ゴトウ レイコ)
1958年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(経済学)。経済哲学専攻。一橋大学経済研究所教授。『正義の経済哲学』(東洋経済新報社、2002年)、Against Injustice: The New Economics of Amartya Sen(共編著、Cambridge University Press、2009年)、『福祉の経済哲学』(ミネルヴァ書房、2015年)、ほか。

加藤泰史(カトウ ヤスシ)
1956年生まれ。名古屋大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。修士(文学)。一橋大学大学院社会学研究科教授。哲学、倫理学専攻。『思想間の対話』(分担執筆、法政大学出版局、2015年)、『フィヒテ知識学の全容』(分担執筆、晃洋書房、2015年)、ほか。

日暮雅夫(ヒグラシ マサオ)
1958年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。立命館大学産業社会学部教授。社会思想専攻。『批判的社会理論の現在』(共編著、晃洋書房、2003年)、『討議と承認の社会理論』(勁草書房、2008年)、『現代社会理論の変貌』(共編著、ミネルヴァ書房、2016年)、ほか。

ティートゥス・シュタール(Titus Sthal)
1979年生まれ。ゲーテ大学博士課程修了。博士(哲学)。リユスク大学助教。社会哲学、政治哲学専攻。Immanente Kritik (Campus, 2013), Einführung in die Metaethik (Reclam, 2013), “Habermas and the Project of Immanent Critique” (Constellations, 20 (4), 2013)、ほか。

徳地真弥(トクチ シンヤ)
1980年生まれ。一橋大学院社会学研究科博士後期課程在籍。社会哲学専攻。A・ホネット『自由であることの苦しみ』(共訳、未来社、2009年)、M・クヴァンテ『人間の尊厳と人格の自律』(共訳、法政大出版局、2015年)。

山田哲也(ヤマダ テツヤ)
1973年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程博単位取得退学。修士(社会学)。一橋大学社会学研究科准教授。教育社会学専攻。『ペダゴジーの社会学』(共編著、学文社、2013年)、『学力と学校を問い直す』(共編著、かもがわ出版、2014年)、『学力格差是正策の国際比較』(共編著、岩波書店、2015年)、ほか。

神代健彦(クマシロ タケヒコ)
1981年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。京都教育大学教育学部専任講師。教育学専攻。『日本の学校受容』(分担執筆、勁草書房、2012年)、『統治・自律・民主主義』(分担執筆、NTT出版、2012年)、『教育システムと社会』(分担執筆、世織書房、2014年)、ほか。

中澤篤史(ナカザワ アツシ)
1979年生まれ。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。一橋大学大学院社会学研究科准教授。身体教育学、スポーツ科学、社会福祉学専攻。『運動部活動の戦後と現在』(青弓社、2014年)、Safeguarding, Child Protection and Abuse in Sport(分担執筆、Routledge、2014年)、『教育学』(分担執筆、医学書院、2015)、ほか。

鈴木直文(スズキ ナオフミ)
1975年生まれ。グラスゴー大学大学院法・ビジネス・社会科学研究科都市学専攻博士課程修了。博士(Urban Studies)。一橋大学大学院社会学研究科准教授。都市・地域政策、スポーツ社会学専攻。『21世紀のスポーツ社会学』(分担執筆、創文企画、2012年)、『スポーツで地域を拓く』(分担執筆、 東京大学出版会、2013年)、『スポーツと国際協力──スポーツに秘められた豊かな可能性』(分担執筆、大修館書店、2015年)、ほか。

井上睦(イノウエ マコト)
1984年生まれ。一橋大学大学院法学研究科博士後期課程修了。博士(法学)。早稲田大学韓国学研究所招聘研究員。政治学、国際関係論専攻。「金大中政権期における福祉国家形成」(『一橋法学』第11巻3 号、2012年)、「社会保障制度の金融化──韓国公的年金制度改革の分析」(『一橋法学』第14巻1号、2015年)、『国際関係学』(分担執筆、有信堂高文社、2015 年)、ほか。

森千香子(モリ チカコ)
1972年生まれ。フランス社会科学高等研究院博士課程修了。博士(社会学)。一橋大学大学院法学研究科准教授、プリンストン大学社会学部客員研究員。国際社会学、都市社会学、レイシズム研究専攻。『国境政策のパラドクス』(共編著、勁草書房、2014年)、『排外主義を問いなおす』(共編著、勁草書房、2015年)、『排除と抵抗の郊外』(東京大学出版会、2016年)、ほか。

村上一基(ムラカミ カズキ)
1984年生まれ。パリ・ソルボンヌ大学社会学専攻修士課程修了。同大学博士課程。国際社会学、都市社会学専攻。「フランス・パリ郊外の大衆地区におけるムスリム移民の家庭教育」(『年報社会学論集』第27号、2014年)、『国際社会学』(分担執筆、有斐閣、2015年)、『排外主義を問いなおす』(分担執筆、勁草書房、2015年)、ほか。

湯川やよい(ユカワ ヤヨイ)
一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科特別研究員。教育社会学、ジェンダー・セクシュアリティ研究専攻。「アカデミック・ハラスメントの形成過程」(『教育社会学研究』第88集、2011年)、『アカデミック・ハラスメントの社会学』(ハーベスト社、2014年)、“Authorship Practices in Multi-Authored Papers in the Natural Sciences at Japanese Universities” (共著、International Journal of Japanese Sociology, 23 (1), 2014)、ほか。

書評掲載

「図書新聞」(2016年9月3日号/神山英紀氏・評)に紹介されました。

関連書籍

『承認をめぐる闘争』
アクセル・ホネット:著
『正義の他者 〈新装版〉』
アクセル・ホネット:著
『再配分か承認か?』
ナンシー・フレイザー:著
『物象化』
アクセル・ホネット:著
『権力の批判』
アクセル・ホネット:著