韓国政治思想史

朴忠錫:著, 飯田 泰三:監修, 井上 厚史:訳, 石田 徹:訳
A5判 / 712ページ / 上製 / 価格 10,780円 (消費税 980円) 
ISBN978-4-588-62532-9 C3031 [2016年09月 刊行]

内容紹介

古朝鮮における「巫」の思想、すなわち古代人が宇宙、自然、社会、人間に対して持っていた原イメージは、韓国人の政治的実践を今日にいたるまで如何に規定してきたのか。丸山眞男の薫陶を受けた韓国を代表する政治学者の主著にして、韓国の基層文化を神話世界より説き起こす思想史の金字塔。

著訳者プロフィール

朴忠錫(パク チュンソク)

1936年生。延世大学校政治外交学科卒業。東京大学大学院法学政治学研究科にて丸山眞男に師事、博士学位取得。梨花女子大学校名誉教授。韓国政治思想史、東洋政治思想専攻。共編著に『韓国思想大系』III(成均館大学大東文化研究院、2005年)、『国家理念と対外認識』(慶應義塾大学出版会、2001年/韓国語版、亜研出版部、2002年)、『韓国・日本・「西洋」』(同、2005年/同、2008年)、『「文明」「開化」「平和」』(同、2006年/同、2008年)ほか。2014年、大韓民国学術院賞受賞。

飯田 泰三(イイダ タイゾウ)

1943年生。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士論文は「大正知識人の成立と政治思想」。法政大学名誉教授、島根県立大学名誉教授。日本政治思想史専攻。著書に『批判精神の航跡』(筑摩書房、1997年)、『戦後精神の光芒』(みすず書房、2006年)、共編書に『長谷川如是閑集』(岩波書店、1989-90年)、『吉野作造選集』(同、1995-97年)、『丸山眞男集』(同、1995-97年)、『福澤諭吉書簡集』(同、2001-03年)、『藤田省三著作集』(みすず書房、1997-98年)、『丸山眞男講義録』(東京大学出版会、1998-2000年)ほか。

井上 厚史(イノウエ アツシ)

1958年生。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。現在、島根県立大学総合政策学部教授。日本思想史、韓国思想史、日韓関係史専攻。共著に『高橋亨與韓國儒學研究』(台湾大学出版中心、2015年)ほか。

石田 徹(イシダ トオル)

1973年生。早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程満期退学。現在、島根県立大学総合政策学部准教授。日朝関係史、日本政治史専攻。著書に『近代移行期の日朝関係』(溪水社、2013年)ほか、共訳書に金日宇・文素然『韓国・済州島と遊牧騎馬文化』(明石書店、2015年)。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

   第二版まえがき
   初版まえがき
序論 「韓国政治思想史」をどう考えるのか
   I 「韓国政治思想史」研究の学問的含意
   II 空間的所与
 第一章 古代韓国人の思考様式──文化・思想的発想
 第一節 文化・思想の発展様式
 第二節 予備的考察──記録された史料の検討
   I 史料の制約性
   II 発想様式の特性(一)──『三国史記』
   III 発想様式の特性(二)──『三国遺事』
   IV 発想様式の特性(三)──「東明王篇」
   V 発想様式の特性(四)──『帝王韻紀』
 第三節 古層の構造
   I 「生じる」─「生む」の論理と「つくる(作、造)」の論理
   II 文化的・思想的発想としての古層
   III 古層──韓国巫の概念的検討
   IV 韓国巫の原型──創世神話を中心に
 第四節 政治社会の起源
   I 予備的考察──政治社会の存在様式
   II 韓国文化・思想の基調──「天」・「生」・「化」
   III 政治社会の出現
第二章 内生と外来の接合──儒教的政治理念の成長
 第一節 接合様式(一)──三国時代の様相
   I 祭政一致の分離──分化過程
   II 儒・仏・道──発想の存在様式
   III 儒・仏・道──比較考察
   IV 儒教思想の受容道程
 第二節 接合様式(二)──体制イデオロギーとしての儒教
   I 儒教的観念化の進展
   II 太祖王建の儒教的発想
   III 光宗の政治・制度改革
   IV 崔承老の統治論
   V 成宗の儒教的統治イデオロギー
第三章 朝鮮朝初期の政治社会と朱子学思想
 第一節 朝鮮朝初期の政治・社会思想
   I 政治・思想的推移──高麗朝から朝鮮朝へ
   II 政治的思考の特質と朱子学の受容様式
   III 儒教政治体制の諸般の基礎
 第二節 朝鮮朝正統朱子学の理論的特質──李退溪と李栗谷を中心に
   I 視角の問題
   II 退溪朱子学の基本的視座──内面的道徳性の強調
   III 状況主義的な政治的指向の台頭──栗谷
 第三節 国際秩序観念──「事大」と「中華」思想
   I 歴史的考察
   II 「事大」観念の特質と変容
   III 「中華」的世界秩序観念の形成
第四章 近世実学派の政治思想
 第一節 「実学」概念の検討
   I 実学概念の多様性
   II 近世「実学」概念に関する考察
   III 近世「実学」の思想的性格
 第二節 功利主義的な政治的思考の追求──経世致用学派
   I 客観主義的規範論──柳馨遠
   II (★1)溪的思考の継承と統治主体の問題──李(★2)
 第三節 朱子学的自然観の変容と社会・経済的功利性の追求──利用厚生学派
   I 朱子学的自然観の変容
   II 朱子学的諸観念の批判──湛軒
   III 現実批判と学問観の変容──燕巖
   IV 商業政策論──楚亭
 第四節 茶山学における政治的思惟の特質
   I 思想的背景
   II 学問論
   III 朱子学的人間観の変容
   IV 規範観念の特質と政治社会論
 第五節 経験論と政治的リアリズム──崔漢綺
   I 経験論的人間観の登場
   II 状況主義的指向の特質
   III 倫理的価値観の問題──自然性と規範性
   IV 政治的リアリズム
 第六節 同時代における国際秩序観の変容
   I 天文学的側面からの批判
   II 現実的功利性からの批判
   III 「中華」観念の超越化
   IV 文化的価値の多元性
第五章 「開国」期以後の社会運動とその特徴
 第一節 初期の政治・思想状況
   I 開放社会への転換
   II 政治思想運動の基本方向
 第二節 「尊華攘夷」思想の台頭
   I 哲学的基礎
   II 政治主体の特質
   III 西洋観
 第三節 開化派の思想的特質
   I 思想内在的境界の打破
   II 朴泳孝の富国強兵論──伝統と近代の内的連関を中心に
   III 開化思想の理論的構造──兪吉濬
 第四節 韓国近代史における国際関係観念──伝統的な存在様式の変容過程を中心に
   I 問題の所在
   II 概念の多義性
   III 転換期の存在様式──理念と実際
   IV 結論──その後の推移
補論一
 一 韓国政治思想史研究における問題点──特に朝鮮朝朱子学思想の特質に関して
 二 「思想史学」と思想史研究
補論二
 一 儒教の政治学──原理的考察
 二 儒教の生財論──その原型と変容

   解題──丸山眞男の「日本政治思想史」との関係を中心に(飯田泰三)
   訳者あとがき
   参考文献
   索 引

(★1)石偏に番
(★2)さんずいに翼

書評掲載

「統一日報」(2017年2月22日号/崔昌学氏・評)にて紹介されました。

「朝日新聞」(2016年11月6日付)にて紹介されました。

「中国新聞」(2017年2月26日付/澤井啓一氏・評)にて紹介されました。