叢書・ウニベルシタス 954
クリスティアーネとゲーテ
詩人と生きた女性の記録
ISBN978-4-588-00954-9 C1398 [2011年04月 刊行]
ジークリット・ダム(ダム ジークリット)
1940年チューリンゲン州ゴータ市生まれ。イェーナ大学でドイツ文学と史学を専攻、学位を取り教壇に立つが、70年から評論家・編纂者、78年以降はベルリンに住んで作家活動を続けている。主な著書:『レンツの生涯』(85年)、『コルネリア・ゲーテ』(87年)、『クリスティアーネとゲーテ』(98年)、『シラーの生涯』(2004年)、『ゲーテの最後の旅』(07年)。敗戦4年後の旧東ドイツ(DDR)建国時わずか9歳、人生の多感な時期を社会主義建設期の理想と共に生きるが、「歴史」として提供される「イデオロギー」「幻想を促進する嘘」に対する不信は「歴史の再生によって個人を取り戻す」という欲求と化し、歴史の中で見捨てられてきた弱者の復権、強者の脱神話化への取り組みとなる。「アーカイヴズにおける探索」「資料に即した事実」により物語られる事実と虚構の渾然となった独特の作品は、『コルネリア』や『クリスティアーネ』が証明するように大好評を博している。メーリケ賞やフォンターネ賞(94年)など6文学賞を受賞、なかでも2005年、壁の崩壊後15年余の悲願として創設された「チューリンゲン文学賞」の第一回受賞は、氏にとっても記念すべき出来事となった。
西山 力也(ニシヤマ リキヤ)
1942年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程(ドイツ文学専攻)修了。ゲーテ時代の文学・文化を研究。現在、日本女子大学文学部教授。日本独文学会・日本ゲーテ協会・ヴァイマル=ゲーテ協会会員。主な著書:『ドイツ文学─歴史と鑑賞』(共編、朝日出版社)、『郁文堂独和辞典』『ドイツ文学回遊』(共著、郁文堂)。主な訳書:ジークリット・ダム『コルネリア・ゲーテ─奪われた才能』(郁文堂)、ジークフリート・ウンゼルト『ゲーテと出版者─一つの書籍出版文化史』(共訳、法政大学出版局)。主な論文:「ゲーテの『パンドーラ』における回想のモティーフについて」「『親和力』における湖沼の三つの情景」「ゲーテ『親和力』の成立史」「クリスティアーネ・ヴルピウス覚書」など。
※上記内容は本書刊行時のものです。凡 例
第一章
一 クリスティアーネ受難史
二 クリスティアーネ・ヴルピウスの先祖をたずねて
三 父ヨハン・フリードリヒ・ヴルピウス
四 クリスティアーネ誕生
五 幼いクリスティアーネと青年ゲーテ
第二章
一 ゲーテのヴァイマル入り
二 兄クリスチャン・アウグスト・ヴルピウスの就学
三 父ヴルピウスの職務上の犯罪
四 枢密顧問官ゲーテと嘆願者クリスティアーネ
五 花工房のクリスティアーネ
六 子殺し犯アンナ・カタリーナ・ヘーン
七 兄クリスチャン・アウグストとゲーテ
第三章
一 ゲーテのイタリア旅行
二 ゲーテの帰還とクリスティアーネとの出会い
三 同棲の露見とシャルロッテ・フォン・シュタイン夫人
四 クリスティアーネの懐妊と宮廷の制裁
五 長男アウグスト・ヴァルター・ゲーテの誕生
六 第二次イタリア旅行と随行の日々の家族への慕情
七 イェーガーハウス─家庭生活と芸術生活
八 再びフラウエンプラーンの家へ
第四章
一 フランス出兵
二 留守をまもるクリスティアーネ
三 娘カロリーナのはかない命とゲーテ邸の完成
四 ゲーテとシラーの友情
五 二つの所帯─ヴァイマルとイェーナ
六 シャルロッテ・フォン・シュタイン夫人への再接近
七 異なる世界─ゲーテ、クリスティアーネと兄クリスチャン
八 ゲーテ家の財政状態
第五章
一 イェーナとヴァイマル
二 ゲーテのイタリア旅行の計画と遺言状の作成
三 ゲーテとフランクフルト・アム・マインへ
四 ゲーテのスイス旅行
五 再びヴァイマルとイェーナ
六 別居生活にひそむもの
七 ふたりの肖像画
八 息子アウグスト・ヴァルターの認知
九 クリスティアーネの孤独
十 イェーナのロマン派
十一 二人のマイヤー
第六章
一 娘カティンカの誕生と死
二 ゲーテの引きこもりとコツェブー派の攻撃
三 クリスティアーネのバート・ラウホシュテット湯治滞在
四 オーバーロスラの農園の売却とフラウエンプラーンの家政、スタール夫人の来訪
五 ニコラウス・マイヤーとの文通とクリスティアーネ、息子の就学と家庭教師リーマー
六 ゲーテの病とシラーの死、そして忍び寄る戦争の足音
七 カールスバートとバート・ラウホシュテット─別々の湯治滞在
八 イェーナ、アウエルシュテットの会戦とふたりの正式結婚
九 ゲーテにとってのナポレオンとフラウエンプラーンの家の所有権の獲得
第七章
一 枢密顧問官夫人クリスティアーネ・フォン・ゲーテ
二 クリスティアーネのフランクフルト再訪とベッティーナ・ブレンターノ
三 姑カタリーナ・エリーザベタの死─遺産相続問題とクリスティアーネ
四 劇場監督ゲーテとカロリーネ・ヤーゲマンの不和
五 ゲーテの若い女性への恋情
六 貴族社会と家庭生活─クリスティアーネの三枚の肖像画
七 ゲーテの女性観における理想と現実
八 ニコラウス・マイヤーの再訪、兄クリスチャン・アウグストの昇進
九 長編小説『親和力』と最初の読者クリスティアーネとカロリーネ
十 ヴァイマルに背を向けるゲーテと残されたクリスティアーネ
十一 自伝『詩と真実』の構想とふたりのカールスバート湯治旅行
十二 クリスティアーネとベッティーナの衝突
十三 ゲーテの名代アウグストとふたりのボヘミア湯治旅行
第八章
一 一八一三年─戦争・悪夢・ゲーテのボヘミアへの避難
二 宿営に奮闘するクリスティアーネとテプリッツのゲーテ
三 クリスティアーネとゲーテの結婚二十五周年記念日
四 ライプツィヒ近郊の諸国民の戦い
五 反ナポレオンと愛国心の高揚のもとで
六 義勇軍編成の呼びかけとアウグスト・フォン・ゲーテ
七 一八一四年─ゲーテと初女性秘書カロリーネ・ウルリヒ
八 バート・ベルカ湯治滞在─『コッタ版全集』の編集と『西東詩集』の萌芽
九 アウグスト・フォン・ゲーテの決闘の危機
十 ゲーテのライン・マイン旅行とマリアンネ・ヴィレマー
十一 ご婦人方、クリスティアーネとカロリーネ・ウルリヒ
十二 若返るゲーテとクリスティアーネの病
第九章
一 一八一五年─再度のライン・マイン旅行と『西東詩集』
二 マリアンネ・フォン・ヴィレマーとクリスティアーネ
三 クリスティアーネのカールスバート湯治滞在
四 ゲーテの沈黙と和解を求める手紙
五 一八一六年─運命の年のクリスティアーネとゲーテ
六 ザクセン=ヴァイマル=アイゼナハ大公国の国務大臣フォン・ゲーテ夫妻
七 クリスティアーネの死とアウグスト・フォン・ゲーテの結婚
八 ヤーコプ教会墓地とヴァイマルの永遠の墓所
あとがき
解説にかえて──ジークリット・ダム、チューリンゲン文学賞を受賞する
訳者あとがき
年譜/系図一覧/地図一覧
注/二次文献/出典/参考文献目録/人名索引