叢書・ウニベルシタス 991
ヘーゲルの実践哲学
人倫としての理性的行為者性
ISBN978-4-588-00991-4 C1310 [2013年03月 刊行]
ロバート・B.ピピン(ピピン,R.B.)
(Robert B. Pippin)
1948年,アメリカのバージニア州ポーツマス生まれ.現在,シカゴ大学の大学院社会思想研究科,哲学研究科,カレッジの特別教授.主要な研究領域は,近現代のドイツ哲学であり,カント,ヘーゲルのドイツ観念論から,ニーチェ,19世紀および20世紀ヨーロッパ哲学,フランクフルト学派の批判理論に及ぶ.特にそのヘーゲル論は,現在のアメリカのヘーゲル哲学研究の隆盛をもたらすきかっけとなった.また文学研究,美学芸術研究,映画理論でも旺盛な研究活動を行っている.主な研究業績として,Kant’s Theory of Form: An Essay on the ‘Critique of Pure Reason’ (Yale University Press, 1982), Hegel’s Idealism: The Satisfactions of Self-Consciousness (Cambridge University Press, 1989), The Persistence of Subjectivity: On the Kantian Aftermath (Cambridge University Press, 2005), Hollywood Westerns and American Myth: The Importance of Howard Hawks and John Ford for Political Philosophy (Yale University Press, 2010), Nietzsche, Psychology, First Philosophy (University of Chicago Press, 2010), Hegel on Self-Consciousness. Desire and Death in the Phenomenology of Spirit (Princeton University Press, 2011), Fatalism in American Film Noir: Some Cinematic Philosophy (University of Virginia Press, 2012) など.
星野 勉(ホシノ ツトム)
1948年生まれ.法政大学文学部教授.哲学・倫理学.主な研究業績に,『外から見た〈日本文化〉』(編著,法政大学出版局, 2008年),『国際日本学とは何か―内と外からのまなざし』(編著,三和書籍,2008年),『現代哲学への招待』(共著,有斐閣,1995年),「ヘーゲルと現代英語圏の哲学―理性と歴史をめぐって」(大橋良介編『ドイツ観念論を学ぶ人のために』世界思想社,2006年),G. E.ムア『倫理学原理』(共訳,三和書籍,2010年)など.
大橋 基(オオハシ モトイ)
1965年生まれ.法政大学社会学部兼任講師.倫理学.主な研究業績に,『自然と人間―哲学からのアプローチ』(共著,梓出版社,2006年),『ヘーゲル 現代思想の起点』(共著,社会評論社,2008年),K. オット/M.ゴルケ『越境する環境倫理学』(共訳,現代書館,2010年)など.
大藪 敏宏(オオヤブ トシヒロ)
1959年生まれ.富山国際大学子ども育成学部准教授.哲学・倫理学.主な研究業績に,「無限性と時間―ヘーゲルにおける時間論の形成」(日本哲学会編『哲学』,第47号,法政大学出版局,1996年),R. ブラント『哲学 ひとつの入門』(共訳, 理想社, 2006年),「現代政治をめぐる『雑居的寛容』と『雑種文化』―『相互理解としての日本研究』と国際理解教育のために」(王敏編『東アジアの日本観―文学・信仰・神話などの文化比較を中心に』所収,三和書籍,2010年)など.
小井沼 広嗣(コイヌマ ヒロツグ)
1979年生まれ.法政大学文学部兼任講師.哲学・倫理学.主な研究業績に,「公共性としての『事そのもの』」―ヘーゲル行為論の社会哲学的意義」(『アジア太平洋レビュー』第7号,大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター,2010年),「『精神現象学』における『道徳性の生成』のモチーフの展開」(『法政大学大学院紀要』第68号,2012年)など.
※上記内容は本書刊行時のものです。第一部 精神
第一章 前置き──自由な生活を送る
I 「行為者性」とその条件──自由と理性
II 自由と規範性
III 各章の概要
IV ヘーゲル実践哲学の解釈について
第二章 自然と精神(心)──ヘーゲルの両立論
I 自由をめぐる三つの問い──自由と精神
II 自由と両立論
III 自然と精神の両立論
IV 精神は「それ自身の産物」である
第三章 自分自身に法則を与えることについて
I 「自己立法」原理──カントからヘーゲルへ
II カントの「自己立法」の逆説性
III 「自己立法」と理性による拘束
IV 社会によって媒介された実践的アイデンティティ
V 社会的・歴史的な「自己立法」原理
第四章 自由の現実化
I 二つのヘーゲル批判
II 概念と現実性
III 概念がその現実性を「それ自身に与える」
IV 概念の現実性と自由
V 規範的拘束力の起源
VI 自由と精神の現実性
VII 規範性と歴史性
VIII 規範的拘束力の現実化と人倫共同体
第二部 自由
第五章 意志の自由──心理的次元
I 自由と共同性──ルソーの受容
II 自己否定と倫理的存在者
III 思惟と意志──理論と実践
IV 自由と主知主義
V 自由の心理的要素
VI 自然的・社会的依存と自立
VII 「行為者性」と「理性の形式」──相互承認と遡及的正当化
第六章 意志の自由──社会的次元
I 行為と意図
II 社会と時間に埋め込まれた主体
III 「行為者性」の内と外──「事そのもの」
IV 意図をめぐる自己欺瞞の暴露
V 実行されなかった「真の意図」と意志の弱さ
VI 主体性の権利
VII 意図せざる結果と意図の暫定性──偶然性の介入と後悔
VIII 主体性の持続
IX 「本当の自分」とは
第三部 社会性
第七章 ヘーゲルにおける社会性──承認された地位
I ヘーゲル承認論をめぐって
II ヘーゲルの「自由」概念──その四つの特質
III 達成された様態としての自由
IV 自由と相互承認
V 承認の成功形態としての人倫的制度
第八章 承認と政治
承認という依存性──政治的主張
I 近代の二つの伝統──個人主義と相互主体性論
II 承認への依存
III 承認された地位としての「行為者性」
承認という依存性──「発展史的な」論証
IV 精神の「発展史的な」物語
V 精神の発展の動力源としての自己否定
VI 『精神現象学』における可能的な経験モデルと現実的経験
VII 経験による概念内容の実現
VIII 行為における自己喪失
IX 行為と規範性
X 小括
第九章 制度の理性性
I 自由と実践的理性性──社会性の優位
II 制度の理性性──方法論的個人主義と社会有機体論の批判
III 自由の社会的条件について
IV 社会秩序の客観的理性性
V 社会秩序の主観的理性性
第十章 結論
I プラグマティックな実践的理性性とその「発展史的な」正当化
II ヘーゲルへの回帰
監訳者あとがき
参考文献
索引
A.ホネット著/加藤泰史・他訳『正義の他者』