A.コジェーヴ(コジェーヴ アレクサンドル)
(Alexandre Kojève)
1902-1968。ロシア(モスクワ)生まれの著名なヘーゲル研究家・哲学者。ロシア革命の際にロシアを離れ、ドイツに亡命する。K.ヤスパースの指導の下で、ロシアの神学者ソロヴィヨフに関する学位論文を書く。1926年にフランスに移住。同じロシア出身の思想家A.コイレと交流し、彼のヘーゲル研究に大いに影響される。1933年から39年まで、コイレの後継者として、パリの高等研究院でヘーゲル『精神現象学』講義を行う。この講義には、M.メルロ=ポンティ、J.ラカン、R.アロン、G.バタイユ、P.クロソウスキー、R.クノーなど、第二次大戦後のフランスを代表する大知識人が多数出席し、彼らの思想形成に絶大な影響を与えた。この講義はR.クノーにより整理され、1947年に『ヘーゲル読解入門』のタイトルで公刊される(邦訳、国文社)。戦後はフランス政府の高級官吏として、フランスの対外経済政策に影響を与え、ヨーロッパ統合のために外交的手腕を発揮する。1968年ブリュッセルで死去。彼は生前著作を公刊しなかったが、その死後、残された原稿のいくつかが編集・出版された。『法の現象学』『概念・時間・言説』『権威の概念』(邦訳、法政大学出版局)と同様、本書もその一つである。その他に、『異教哲学史試論(三巻)』『カント』などがある。
今村 真介(イマムラ シンスケ)
1971年生。上智大学法学部法律学科卒業。一橋大学大学院言語社会研究科博士課程満期退学。現在、早稲田大学法学部非常勤講師。専攻は社会思想史、フランス史。著書に『王権の修辞学』(講談社)、共著に『儀礼のオントロギー』(同)、訳書にコジェーヴ『権威の概念』、共訳書にフュレ『マルクスとフランス革命』(以上、法政大学出版局)がある。
※上記内容は本書刊行時のものです。序
無神論
草稿の形状
草稿の内容
『無神論』の人間学
無神論以降
「知の体系」
〈承認をめぐる闘争〉
「〈知の体系〉 の 〈改訂〉」
〈歴史の終わり〉と〈客観的実在〉
「〈知の体系〉」の人間学
結論 アレクサンドル・コジェーヴの作品における『無神論』
* * *
『無神論』(アレクサンドル・コジェーヴ)
[問題設定]
[無神論的宗教の観念。有神論と無神論]
[存在神学の問題──有神論、無神論、神の属性]
[世界外人間へ──三つの困難]
[世界内人間と世界外人間]
[「世界内人間」に固有の同質的な相互作用]
[有神論と無神論の諸事例]
[人間と神、または二重化された人間]
[「世界内人間」への「世界外人間」の与えられ]
[有神論、無神論、死のパラドックス]
[無神論者と有神論者の可死性について──自己意識へ]
[揺るぎない確信のトーヌスと不安を与える未知のもののトーヌス]
[なじみ深い親密性への揺るぎない確信と、不安を与える疎遠なものへの絶望からくる恐怖──内部と外部]
[不安の与えられについて……]
[恐怖の与えられに対して……]
[与えられの外部性について……]
[……人間の自由としての自殺の可能性について]
[境界線としての死と差異としての意識──無神論者と自殺]
[潜在的自殺者としての無神論者──個体性、自由、そして有限性]
[有神論あるいは境界線としての死──神への道へ]
[非──無神論者の魂と死、無神論者の自由と有限性]
[有神論的直観についての有神論的解釈──神の問い]
[有神論、無神論、そして神への道]
[神への道の観念]
[有神論と無神論──定義]
[有神論]
[無神論]
[無神論の問いへの回帰]
[無神論、有神論、哲学──導入部]
[有神論と無神論との論争]
[無神論的直観に関する有神論的解釈]
[有神論的直観に関する無神論的解釈について]
[有神論と無神論との論争の存在論的意味──有限と無限、哲学の場所・意味・役割]
[有神論と無神論──無と向き合う神]
[無神論者の無と有限]
[無限としての有神論の神]
[有限と無限]
[無神論的宗教の観念への回帰──哲学の場所、意味、役割。哲学と知の体系]
訳者あとがき
注(『無神論』)
注(解題)
書評掲載
「図書新聞」(2015年12月12日号/堅田研一氏・評)に紹介されました。