叢書・ウニベルシタス 455
理性・真理・歴史 〈新装版〉
内在的実在論の展開

四六判 / 360ページ / 上製 / 価格 4,400円 (消費税 400円) 
ISBN978-4-588-09963-2 C1310 [2012年11月 刊行]

内容紹介

事実と価値、合理主義と非合理主義、客観主義的実在論と主観主義的相対主義、心身二元論等々のあらゆる二分法的思考の桎梏を絶つべく、真理と合理性の関連を精緻に分析する。形而上学的実在論とクーン、ファイヤアーベントらの相対主義を排して、分析哲学の新地平を拓く。

著訳者プロフィール

H.パトナム(パトナム ヒラリー)

(Hilary Putnam)
1926年シカゴに生まれる。48年ペンシルベニア大学哲学部卒業。51年カリフォルニア大学(UCLA)で哲学博士号(Ph.D.)を取得。その後、ノースウェスタン、プリンストン、MITなどの大学で教鞭をとり、65年以降はハーバード大学哲学部教授を務め、同大学名誉教授。現代アメリカを代表する哲学者で、論理実証主義の批判的検討をはじめ、数理論理学・科学哲学・言語哲学・心身問題、さらには倫理や歴史の哲学など多方面のテーマについて、斬新なアイデアを提起し、世界の哲学界をリードしてきた。今日「科学について最も良い全体的見通しをもつ哲学者」(シュテークミュラー)と評されている。本書のほかに、『論理学の哲学』『心・身体・世界』『事実/価値二分法の崩壊』『存在論抜きの倫理』(以上、法政大学出版局)、『実在論と理性』(勁草書房)などが邦訳されている。

野本 和幸(ノモト カズユキ)

1939年生。東京都立大学名誉教授。現代哲学専攻。

中川 大(ナカガワ ハジメ)

1961年生。北海道教育大学教育学部教授。現代哲学専攻。

三上 勝生(ミカミ マサオ)

1957年生。札幌大学経営学部教授。現代哲学専攻。

金子 洋之(カネコ ヒロシ)

1956年生。専修大学文学部教授。現代哲学・論理学専攻。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

 序言
 凡例

第一章 水槽の中の脳
指示の魔術説
水槽の中の脳の場合
テューリングのテスト
水槽の中の脳(再論)
この議論の諸前提
表現とその指示対象との必然的な結びつきを否定する理由

第二章 指示に関する一問題
内包・外延・「思念的世界」
解釈についての標準的見解
標準的見解がうまくいかないわけ
「本来的」と「非本来的」
「生存」と進化
意図──純粋なそれと不純なそれ
パズルの起源
付録

第三章 二つの哲学的な見方
内在主義と相対主義
「類似」説
バークリーの離れ業
知識と真理についてのカントの説明
経験主義的な代案
ウィトゲンシュタインの「規則に従うこと」
「形相」の把握と経験的連合
過去の感覚の質についてつねに誤っているということがありうるか
真理の対応説に戻って

第四章 心と身体
並行説・相互作用説・同一説
同一説とア・プリオリ
分離脳
「質的特徴」はどの程度明確であるのか
質qualiaに関する実在論

第五章 二つの合理性概念
論理実証主義
アナーキズムは自己論駁的である
なぜ相対主義は整合的でないか
これをどう理解すべきか

第六章 事実と価値
少なくともいくつかの価値は客観的でなければならない
他の領域での合理性
超ベンサム主義者
善についての主観主義
権威主義と多元主義

第七章 理性と歴史

第八章 近代の合理性概念に科学が与えたインパクト
「方法」崇拝

第九章 価値、事実、認識
二因子説
ムーアと「自然主義的誤謬」
「合理的なナチ党員」再論

 訳者解説
 訳者あとがき
 索引