J.ハーバーマス(ハーバーマス ユルゲン)
(Jürgen Habermas)
1929年ドイツのデュッセルドルフ生まれ。ゲッティンゲン、チューリヒ、ボンの各大学でドイツ文学、心理学,社会学、哲学を修め、56年フランクフルト社会研究所のアドルノの助手となり、フランクフルト学派第二世代としての歩みを始める。61年『公共性の構造転換』で教授資格を取得し、ハイデルベルク大学教授となる。64年フランクフルト大学教授、71年マックス・プランク研究所所長を歴任、82年以降はフランクフルト大学に戻り、ホルクハイマー記念講座教授を務め、94年退官。60年代末のガダマーらとの解釈学論争、ルーマンとの社会システム論争、さらに『コミュニケーション的行為の理論』(81)をはじめとする精力的な仕事、86年の歴史家論争以降の多方面にわたる社会的・政治的発言を通じて、ドイツ思想界をリードし、国際的にも大きな影響を与えてきた。著書はほかに、『理論と実践』(63)、『認識と関心』(68)、『イデオロギーとしての技術と科学』(69)、『社会科学の論理』(70)、『哲学的・政治的プロフィール』(71)、『晩期資本主義における正統性の問題』(73)、『史的唯物論の再構成*』(76)、『近代の哲学的ディスクルス』(85)、『遅ればせの革命』(90)、『討議倫理*』(91)、『事実性と妥当性』(92)、『人間の将来とバイオエシックス*』(01)、『引き裂かれた西洋*』(04)、『ああ、ヨーロッパ』(08)などがあり、その多くが邦訳されている(* は小局刊)。ハーバーマスは81年を皮切りに再三来日し、各地で講演やシンポジウムを行っており、2004年11月には「京都賞」を受賞している。
清水 多吉(シミズ タキチ)
1933年生まれ。東京大学大学院修了。東京大学、名古屋大学、静岡大学、早稲田大学、法政大学、立教大学、東洋大学、神奈川大学の講師、ニューヨーク・ホウフストラ大学の客員教授を務め、現在、立正大学名誉教授。訳書:ハーバーマス『史的唯物論の再構成』(監訳、法政大学出版局)。最近は日本思想にも盛んにアプローチし、近刊に『西周』(ミネルヴァ書房)、『岡倉天心』(中央公論新社)などがある。
朝倉 輝一(アサクラ コウイチ)
1959年生まれ。東洋大学大学院文学研究科博士後期課程哲学専攻単位取得退学。文学博士(東洋大学・博士乙)。東洋大学、立正大学、国立看護大学、山村学園短期大学の講師、沖縄大学人文学部准教授を務め、現在、東洋大学法学部准教授。訳書:ハーバーマス『史的唯物論の再構成』(共訳、法政大学出版局)。著書に、『討議倫理学の意義と可能性』(法政大学出版局)、『看護学生のための医療倫理』(共著、丸善出版)などがある。
※上記内容は本書刊行時のものです。第一部 道徳性と人倫
第一章 カントに対するヘーゲルの異議は討議倫理にも当てはまるか?
第二章 何が生活形態を「合理的」にするのか?
1 テーマの限定
2 道徳と人倫との歴史的媒介
3 人倫的なものの語用論的概念?
4 生活形態の病理学
第二部 道徳の発展
第三章 正義と連帯──「段階六」についての議論のために
1 ポスト慣習的段階における自然的道徳段階は存在するのか?
2 「道徳的観点」の手続き倫理的説明
3 正義の理論に善はどのように位置づけされるのか?
4 討議倫理的な選択肢
第四章 ローレンス・コールバーグとネオ・アリストテレス主義
第三部 実践理性
第五章 実践理性のプラグマティックな、倫理的な、道徳的な使用について
第六章 討議倫理の解明
1 理論理性と実践理性との関係
2 真理の妥当性と当為の妥当性についての類縁と差異
3 合理性と道徳性とのいくつかの関係
4 規範の根拠づけと規範の適用との関係
5 規範妥当性とサンクションと自尊心との関係
6 道徳的観点の討議倫理的解釈
7 道徳的観点の解明における理想化の役割
8 権利と義務との否定肯定の区別
9 ポスト形而上学的アプローチによる善〔財〕倫理の試み
10 道徳論における「究極的根拠づけ」の意味
11 善に対する正義の優位性
12 「ポスト慣習的な道徳意識」の概念にとっての伝統と近代との構成的な関係
13 人間中心的アプローチの考え方に対するエコロジー倫理の要請
訳語について
訳者解説
後記
原註
人名索引