ハンス・ヨーナス(ヨーナス ハンス)
ハンス・ヨーナス
(Hans Jonas)
1903年にデュッセルドルフ近郊で裕福なユダヤ人の家庭に生まれる。ハイデガー、ブルトマンのもとで哲学と神学を学ぶが、ナチス政権の成立とともにイギリスに亡命し、イギリス軍のユダヤ人部隊の一員として戦争に参加。のちにパレスチナに渡り、さらにカナダを経て、最終的にはアメリカ合衆国に定住。1979年に刊行された『責任という原理』によって、現代の技術文明のもたらしている危機を鋭く問いかける哲学者としてにわかに注目を集めるようになり、ドイツ出版平和賞も授与される。初期の宗教研究をまとめた代表作に『グノーシスの宗教』があるが、ヨーナスは脳死や臓器移植をめぐる生命倫理学の論客として、また「アウシュヴィッツ以降の神学」を問いかけた哲学者としても重視されている。マールブルク大学時代からのハンナ・アーレントの生涯にわたる友人でもあった。1993年にニューヨークで死去。
細見 和之(ホソミ カズユキ)
細見 和之 1962年生。大阪大学大学院人間科学研究科修了、人間科学博士。現在、大阪府立大学人間社会学部准教授。主な著書に『アドルノ』(講談社)、『アイデンティティ/他者性』『言葉と記憶』(以上、岩波書店)、『アドルノの場所』『ポップミュージックで社会科』(以上、みすず書房)、『「戦後」の思想』(白水社)、『永山則夫』(河出書房新社)など。主な翻訳にアドルノ『認識論のメタクリティーク』(共訳、法政大学出版局)、ベンヤミン『パサージュ論Ⅰ〜Ⅴ』(共訳、岩波現代文庫)、ローゼンツヴァイク『救済の星』(共訳、みすず書房)など。
吉本 陵(ヨシモト シノグ)
吉本 陵 1978年生。大阪府立大学人間文化学研究科修了、学術博士。現在、大阪府立大学人間社会学研究科客員研究員、大阪府立大学工学域非常勤講師。主な論文に「ハンス・ヨーナス『責任という原理』への二つの視角──「現今の戦争に対する我々の関わり」をめぐって」(『現代生命哲学研究』第二号)、「ハンス・ヨーナスの生命の哲学──「像Bild」概念を巡って」(『倫理学論究』vol.1, no.2)など。
※上記内容は本書刊行時のものです。緒 論 生命の哲学の主題について
第一章 存在についての理論における生命と身体
の問題
第二章 知覚、因果性、目的論
第三章 ダーウィニズムの哲学的側面
補遺 生命の理論に対するデカルト主義の意義
第四章 調和、均衡、生成──体系概念およびそ
れを生命存在へ適用することについて
第五章 神は数学者か?──物質交代の意味につ
いて
補遺1 自然を解釈する際、数学はギリシアで
どう用いられたか
補遺2 ホワイトヘッドの有機体の哲学に対す
る注釈
第六章 運動と感情──動物の魂について
第七章 サイバネティクスと目的──一つの批判
補遺 唯物論、決定論、精神
第八章 視覚の高貴さ──感覚の現象学の試み
補遺 視覚と運動
第九章 ホモ・ピクトル、あるいは像を描く自由
について
補遺 真理経験の起源について
移行部 有機体の哲学から人間の哲学へ
第十章 理論の実践的使用について
第十一章 グノーシス主義、実存主義、ニヒリズ
ム
第十二章 不死性とこんにちの実存
エピローグ 自然と倫理
原 注
初出一覧
解説 『生命の哲学──有機体と自由』について(吉本陵)
訳者あとがき(細見和之)
人名索引