バタイユとアナーキズム
アナーキーな、あまりにアナーキーな

四六判 / 382ページ / 上製 / 価格 4,180円 (消費税 380円) 
ISBN978-4-588-13045-8 C0010 [2025年10月 刊行]

内容紹介

バタイユ、三島由紀夫、ボードレール、カフカ、キルケゴール、バクーニン……。絶対的なものの支配に従わない人間の生き方を模索した思想家たち。アナーキーな情念に憑かれた彼らの核なる部分に潜り込み、近代の支配原理や現代社会の閉塞を突き破る根源的な自由への渇望、無益な生の輝き、すなわち「生きる理由」を剔出する。大好評を博したnote連載を加筆・増補して、待望の書籍化! 

著訳者プロフィール

酒井 健(サカイ タケシ)

酒井 健(サカイ タケシ)
1954年生まれ。法政大学名誉教授。著書に『増補 シュルレアリスム──その思想と時代』(ちくま学芸文庫)、『モーツァルトの至高性──音楽に架かるバタイユの思想』(青土社)、『バタイユ入門』(ちくま新書)ほか多数。訳書にバタイユ『純然たる幸福』『ランスの大聖堂』『エロティシズム』『ニーチェ覚書』『呪われた部分──全般経済学試論*蕩尽』(以上、ちくま学芸文庫)、『ヒロシマの人々の物語』『魔法使いの弟子』『太陽肛門』(以上、景文館書店)ほか。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

まえがき

第1章 バタイユとはどういう人だったのか
1 生きることを不可能にするアナーキズム
2 アナーキズムの根源へ
3 意味の覇権に屈する若きバタイユ
4 情熱のゆくえ

第2章 現代のアナーキズムからアナーキーな中世へ
1 絶滅政策は狂気か
2 全部否定あるいはアナーキズムの知的側面
3 ベルナルドゥスの教え
4 聖母マリア信仰を脱構築する
5 二人の建築工匠
6 森の中で愛する人を切り砕く騎士

第3章 ヨーロッパの二つのトポス
1 「すべては許されている」
2 ヨーロッパ的・キリスト教的自由精神とアナーキズム
3 キュニコス派の演劇性
4 アナーキズムの根源へ
5 「不可能なもの」への欲求

第4章 内的体験のアナーキーな次元
1 アナーキーをどう捉えるか
2 マラテスタの定義
3 アナーキーなフランス現代思想
4 ナンシーの見方
5 存在論のほうへ
6 バタイユの蹉跌
7 再びシェストフへ
8 内的体験をどの次元に見るか
9 彷徨う自分をさらけだす

第5章 頭部への否定
1 三島事件
2 無のはずが別の有を、有のはずが別の無を……
3 最後の対談から
4 バタイユと斬首
5 神の不在
6 斬首の根源へ

第6章 法廷での笑い
1 アナーキーな諸力のゆくえ
2 行動派アナーキストの時代
3 時代背景とフェネオンの思想
4 法廷を沸かすフェネオン
5 潜在的な炎
6 近代人は働くミイラ
7 アナーキズムも花火のように散っていく
8 笑いの悪魔性

第7章 海を見つめる
1 アナーキーな海
2 海だけは勘弁してくれ
3 基盤への欲求
4 自然界のなかへ消えていくサドの墓
5 ボードレールへ
6 セイレーンの笑い

第8章 ボードレールの「白鳥」と共同体喪失者の共同体
1 アナーキーな共同体論
2 空間のエグザイルと時間のエグザイル
3 記憶の森の豊饒
4 ボードレールの「現代性」と近代の未来志向
5 はかなき現在時の詩人
6 ユゴーとの交信
7 意識の体験
8 詩人と事物の間に介在する半透明な何か
9 都市改造と川の流れ
10 三千年前の寡婦
11 共同体喪失者への開かれた呼びかけ

第9章 シュルレアリスムへの問いかけ
1 シュルレアリスムと戦後のバタイユ
2 群衆に向けて発砲する
3 ハイデガーともサルトルとも違う「決断」
4 アンドレ・ブルトンの実存は人間の運命に達する弾道弾だった
5 「語る」ことの危険性
6 現代の二つの展望
7 アナーキーな生命力と「物の力」

第10章 焚書への意志──カフカの曖昧さ
1 バタイユのカフカ論
2 共産主義からの批判
3 カフカをどう捉えるか
4 カフカと「黒い文学」
5 凍結した海を砕く斧
6 行動とはなにか
7 欲求か欲望か
8 二つの焚書への意志

第11章 フライパンをかぶるカフカ──そのアナーキーな微笑
1 あるアナーキストの追想から
2 敵は私のなかの彼
3 言語のより大きな枠組みへ
4 法の言葉の矛盾
5 死の支配に抗して
6 大人の時間のなかで遊ぶ子供の宇宙時間

第12章 憎悪の支配──ファシストを化け物として排除したがる我々
1 あいつさえいなければ
2 メディアによる束縛
3 目覚め
4 強制収容所の報告から
5 腐植土の唯物論
6 過剰さを化け物としてしりぞける近代
7 ニーチェの笑いのほうへ
8 ハイデガーとファシズム
9 ある編集者の介入
10 ファシズムは悪なのか
11 初期ハイデガーの矛盾

第13章 キルケゴールあるいは生成する関係性
1 キルケゴール像の転換へ向けて
2 フランスのキルケゴール受容
3 キリスト教と官能の相互関係性
4 生成する自我
5 断罪から観照へ、そして郷愁から再体験へ
6 豪奢なる神と人の演技

第14章 宇宙的豊饒と宗教秘密結社アセファル
1 失敗から学べないもの
2 宇宙的豊饒
3 古代人とイエス
4 宗教とはなにか
5 「秘密」の危険性
6 教えることのできないものを教えようとしたニーチェ
7 ニーチェの遺稿断章
8 エトナ山登頂の恍惚

第15章 内奥からの体制転覆──バクーニンへの秘められた友愛
1 ある研究者の贈り物
2 バクーニンからヴェネヴィーチノフへ
3 国家から追放されるのではなく、国家に役に立つ詩人になりたい
4 ヘーゲルのほうへ
5 内奥性とは何か
6 内在化の道
7 アナーキーのゆくえ
8 「使い道のない否定性」
9 ある詩人からの贈与


あとがき
人名索引