古代ギリシア・ローマにおいて、皇帝をはじめ支配者・有力者が市民に無償でパンを配給し、競技会や演劇を提供し、都市に建造物を寄贈したという「恵与」の事実を中心に、その時代の政治体制の特色、政治家の条件と精神構造、市民生活の変貌等々を人文科学的方法論から明らかにする、厖大な古代歴史絵図。アナール学派第三世代を代表するヴェーヌの主著。
P.ヴェーヌ(ヴェーヌ ポール)
(Paul Veyne)
1930年南仏のエクス-アン-プロヴァンス生まれの現代フランスの歴史家。フランス・ローマ学院の会員となり古代ローマ史を研究、多数の考古学・文献考証学の論文を発表。パリ大学文学部助手(1957-60)を経てプロヴァンス大学で古典語の教鞭をとる。69-70年歴史認識論への試論『歴史をどう書くか』を執筆、アカデミー・フランセーズのエッセイ賞を受賞。76年には「年誌(アナール)」学派の第三世代として歴史ジャンルのしきたりを打破する本書『パンと競技場』を発表し、コレージュ・ド・フランスの教授に抜擢。現在、同名誉教授。邦訳書に、『歴史をどう書くか』『ギリシア人は神話を信じたか』『差異の目録──歴史を変えるフーコー』『古代ローマの恋愛詩』『個人について』『詩におけるルネ・シャール』『歴史と日常』(いずれも法政大学出版局刊)などがある。
鎌田 博夫(カマタ ヒロオ)
1924年東京に生まれる。大阪外国語大学フランス語部・京都大学文学部文学科(フランス文学専攻)卒業。1988年東北大学文学部教授退官。同大学名誉教授。フランス共和国パルム・アカデミック勲章(シュヴァリエおよびオフィシェ)受章。2013年死去。著書:『スタンダール──夢想と現実』。訳書:ヴェーヌ『古代ローマの恋愛詩』『歴史と日常』、ジェルネ『中国とキリスト教』、マラン『語りは罠』、ル・ゴフ『中世の人間』『ル・ゴフ自伝』、ズムトール『世界の尺度』、デル・リット『スタンダールの生涯』(以上、法政大学出版局)、ほか。
※上記内容は本書刊行時のものです。緒言
第一章 主体と行為
一 ローマ社会における寄付──小史
二 恵与指向とは何か
三 寄付する鷹揚さ
四 不変要素と変化
五 恵与指向とキリスト教的慈善
六 「再配分」
七 寄付の社会学
八 「パンと競技場」
九 「誇示的消費」
一〇 ヘレニズム時代およびローマ時代の都市
一一 有力者体制
一二 仕事、暇
一三 恵与指向と資本主義精神
一四 豪勢な出費の経済的分析
第二章 ギリシア人の恵与指向
一 恵与指向以前──古典期アテナイ
二 有力者の寡頭制
三 恵与の起源
四 ヘレニズム時代における恵与指向──概観
五 事実の詳細
六 妬み、正当化、社会的格差
第三章 ローマにおける共和主義的寡頭政治
一 寡頭政治の政府
二 なぜ高官は競技会を提供するのか
三 象徴的な贈り物
四 選挙の「買収」
五 政治的にして非社会的な恵与指向
六 国費パンと道徳的秩序
七 国家的庇護
第四章 皇帝とその首都
一 自律と他律
二 服従または世論
三 主観的権利による君主
四 皇帝の神格化とカリスマの概念
補遺 神々──博物学か現象学か
五 皇帝は所有者で保護者か
六 君主の恩恵
七 イデオロギーは何の役に立つか、どのように信じられるか
八 威光の表現
九 「競技場」と政治化
訳者あとがき
原注
索引
第一章 主体と行為
一 ローマ社会における寄付──小史
二 恵与指向とは何か
三 寄付する鷹揚さ
四 不変要素と変化
五 恵与指向とキリスト教的慈善
六 「再配分」
七 寄付の社会学
八 「パンと競技場」
九 「誇示的消費」
一〇 ヘレニズム時代およびローマ時代の都市
一一 有力者体制
一二 仕事、暇
一三 恵与指向と資本主義精神
一四 豪勢な出費の経済的分析
第二章 ギリシア人の恵与指向
一 恵与指向以前──古典期アテナイ
二 有力者の寡頭制
三 恵与の起源
四 ヘレニズム時代における恵与指向──概観
五 事実の詳細
六 妬み、正当化、社会的格差
第三章 ローマにおける共和主義的寡頭政治
一 寡頭政治の政府
二 なぜ高官は競技会を提供するのか
三 象徴的な贈り物
四 選挙の「買収」
五 政治的にして非社会的な恵与指向
六 国費パンと道徳的秩序
七 国家的庇護
第四章 皇帝とその首都
一 自律と他律
二 服従または世論
三 主観的権利による君主
四 皇帝の神格化とカリスマの概念
補遺 神々──博物学か現象学か
五 皇帝は所有者で保護者か
六 君主の恩恵
七 イデオロギーは何の役に立つか、どのように信じられるか
八 威光の表現
九 「競技場」と政治化
訳者あとがき
原注
索引