北里柴三郎と感染症の時代
ハンセン病、ペスト、インフルエンザを中心に

四六判 / 282ページ / 上製 / 価格 3,520円 (消費税 320円) 
ISBN978-4-588-31216-8 C1021 [2024年05月 刊行]

内容紹介

細菌学や衛生学の分野で偉大な功績を残し、近代日本医学の父として知られる北里柴三郎。慢性伝染病であるハンセン病と結核、急性伝染病であるペストとインフルエンザ、そしてコレラやジフテリアなどに対し、北里および研究所員らはいかに向き合い、新たな知を発見しようと努めたか。現代の公衆衛生、コロナ・ワクチン、ハンセン病訴訟等と絡めつつ、そのプロセスを追いかけた日本医療社会史の到達点。

著訳者プロフィール

新村 拓(シンムラ タク)

新村 拓(シンムラ タク)
1946年静岡県生。早稲田大学大学院文学研究科博士課程に学ぶ。文学博士(早大)。高校教諭、京都府立医科大学教授、北里大学教授を経て北里大学名誉教授。著書に、『古代医療官人制の研究』(1983年)、『日本医療社会史の研究』(85年)、『死と病と看護の社会史』(89年)、『老いと看取りの社会史』(91年)──以上の4書にてサントリー学芸賞を受賞。『ホスピスと老人介護の歴史』(92年)、『出産と生殖観の歴史』(96年)、『医療化社会の文化誌』(98年)、『在宅死の時代』(2001年)、『痴呆老人の歴史』(02年)、『健康の社会史』(06年)、『国民皆保険の時代』(11年)、『日本仏教の医療史』(13年、矢数医史学賞を受賞)、『近代日本の医療と患者』(16年)、『売薬と受診の社会史』(18年、以上いずれも法政大学出版局)。編著に、『日本医療史』(06年,吉川弘文館)ほか。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに

第一章 北里柴三郎に訓導された田尻寅雄の癩病治療
 一 伝染病研究所および養生園の設立
 二 伝研員外助手を務めた田尻寅雄の癩病治療
 三 第一次大戦が医薬品および留学生に与えた影響
 四 医師会長北里の国家衛生理念にもとづく行動
 五 田尻寅雄が筆記した「癩結核治療法」
 六 効果の不確かな癩治療薬の続出が導いた癩患者隔離策
 第一章のまとめ

第二章 慰廃園と回春病院を支援した北里柴三郎
 一 浮浪癩病人を収容する慰廃園の創設
 二 病院化した慰廃園に派遣された医師たち
 三 リデルの救癩活動を後援する大隈重信と渋沢栄一
 四 法律第一一号と宣教師による救癩事業
 五 北研理事宮島幹之助が書いた「回春病院募金趣意書」
 六 回春病院癩菌研究所の医師たち
 第二章のまとめ

第三章 癩対策の世界的潮流から離れる日本
 一 北里の癩病研究と治療実績
 二 万国癩会議で語った北里の疫学調査と細菌学的研究
 三 法律第一一号公布により設置された公立癩療養所
 四 保健衛生調査会が聴取した公私立癩療養所長の意見
 五 癩根絶をめざした「癩予防法」と無癩県運動
 六 万国癩会議決議から距離を置いた日本
 七 第四回万国癩会議以降の動向
 第三章のまとめ

第四章 急性伝染病ペストと衛生
 一 相馬事件と検疫事業における高木友枝の働き
 二 評判の高い血清療法を担った北里柴三郎
 三 香港で発見されたペスト菌
 四 ペスト菌騒動の終結
 五 台湾に渡った後藤新平を支えた面々
 六 ペスト防疫および啓蒙活動に走り回る北里柴三郎
 七 台湾の衛生・医育・台湾電力に尽力する高木友枝
 第四章のまとめ

第五章 インフルエンザをめぐる北研と伝研の確執
 一 伝研の文部省移管にみせた独立自尊の精神
 二 内務省衛生局が記すインフルエンザの病原体
 三 伝研長与又郎と北研志賀潔の間に起きたワクチン論争
 第五章のまとめ

第六章 学用患者と済生会
 一 大逆事件が生んだ済生会の救療事業
 二 済生会にみる学用患者の扱いと北里院長の対応
 第六章のまとめ

付 論 温泉養生の経済効果と衛生
 一 患者が集中する熱海で訴えた北里の肺病対策
 二 新たに認識された温泉の効用
 三 伊東温泉に構えた北里別荘
 四 田健治郎も望んだ伊東温泉の別荘

あとがき
索引

書評掲載

「週刊読書人」(2024年07月26日号/住田朋久氏・評)に紹介されました

「西日本新聞」(2024年07月27日付)に紹介されました

「日本経済新聞」(2024年08月10日付/鈴木晃仁氏・評)に紹介されました