戦争と和解の日英関係史

A5判 / 326ページ / 上製 / 価格 5,720円 (消費税 520円) 
ISBN978-4-588-37709-9 C3020 [2011年07月 刊行]

内容紹介

第二次世界大戦期、アジアを舞台に戦火を交えた日本と英国。とりわけ、泰緬(たいめん)鉄道建設時の日本軍による英軍捕虜虐待をめぐっては、いまなお両国のあいだで燻り続けている大きな問題である。本書は、大戦期から今日にいたる日英和解のプロセスを国際的・国内的なさまざまなレヴェルで問い直し、「敵」から「友」への関係性の構築に向けて日英独の研究者が共同で探求する。

著訳者プロフィール

小菅 信子(コスゲ ノブコ)

1960 年東京生まれ。山梨学院大学法学部政治行政学科教授。近現代史、国際関係論、平和研究。主著に、『戦後和解──日本は〈過去〉から解き放たれるのか』(中央公論新社、2005 年、石橋湛山賞)、『ポピーと桜──日英和解を紡ぎなおす』(岩波書店、2008 年)、『歴史和解と泰緬鉄道──英国人捕虜が描いた収容所の真実』(共著、朝日新聞出版、2008 年)、『戦争の記憶と捕虜問題』(共編著、東京大学出版会、2003 年)など。

ヒューゴ・ドブソン(ドブソン ヒューゴ)

1971 年ゲイツヘッド生まれ。シェフィールド大学教授。日本をめぐる国際関係論。主著に、Japan’s International Relations: Politics, Economics and Security (3rd edition, Routledge, 2011), The
Group of 7/8 (Routledge, 2007), Japan and the G7/8, 1975 to 2002 (Routledge, 2004) など。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

 序章 「敵」から「友」へ
 (小菅信子/ヒューゴ・ドブソン)

第I部 戦争と対立

第1章 第二次世界大戦と独英・日英和解
(フィリップ・トウル)
はじめに  
一 第二次世界大戦中のイギリスの戦略と帝国主義体制
二 戦時下の日記
三 イギリスの戦略に対するアメリカの批判
四 イギリス本国とイギリス帝国
五 戦略的転換か、間接的アプローチか?
おわりに──和解と占領

第2章 対日戦におけるイギリスの興亡
(C・G・H・ダンロップ)
はじめに  
一 初期段階──準備万端な日本と無頓着なイギリス
二 イギリスの挽回と日本の過剰拡大
三 その後の戦闘──イギリスの勝利
おわりに  
 
第3章 日本軍による欧米人捕虜虐待の構図 (黒沢文貴)
はじめに   
一 捕虜虐待の諸相とその客観的・物理的環境  
二 西洋世界との距離感の違い
三 「国軍」から「皇軍」への転換
四 一九三○~四○年代における軍事的価値の優越
五 日本的な軍事的合理性にもとづく捕虜観の変化
おわりに
 
第4章 日本軍による〈白人〉捕虜虐待をめぐるイギリスの対応 (小菅信子)
はじめに──日本軍による残虐行為をめぐる情報公表問題  
一 「香港虐殺」とイーデン声明への反発
二 日英間交換と情報公表問題
三 審問委員会の発足と活動
四 中間報告書をめぐって  
五 日本軍による残虐行為についての連合国合同公表への道  
六 合同公表とその後  
おわりに

第5章 ビルマ・親英でも親日でもなく (根本 敬)
はじめに──英領植民地期と日本占領期をめぐるビルマ人政治エリートの軌跡
一 バモオの「対日協力」
二 アウンサン──「独立の英雄」が誕生するまで
おわりに──協力と抵抗のあいだ

第6章 東南アジアにおける日英のディレンマ、一九四五年以後 (イアン・ニッシュ)
はじめに
一 第一段階──最初の危機
二 イギリスの観点──新興の民族運動とアジアのナショナリズム
三 日本の観点 ──敗戦と日本兵・インドネシアをめぐって
四 第二段階──東南アジア軍司令部の動向
五 イギリスの観点──日本軍の武装解除をめぐって
六 日本の観点──日本降伏軍人(JSP)の処遇問題            
おわりに

第II 部 講和と和解

第7章 日本の国際社会復帰と日英関係 (木畑洋一)
はじめに
一 対日講和における日本再軍備問題とイギリス
二 サンフランシスコ講和会議へのアジア諸国参加問題とイギリスの態度    
三 コロンボ計画とGATTへの日本加入とイギリスの態度
四 バンドン会議と日英関係
おわりに──一九五○年代中葉のイギリスと日本

第8章 日英の経済・軍事関係 一九四五~一九六○年
(ジョン・ウェスティ)
はじめに
一 日英の経済関係
二 イギリスと日本の再軍備
おわりに

第9章 戦後日本知識人にとっての日英和解──竹山道雄の場合 (馬場公彦)
はじめに──竹山道雄と『ビルマの竪琴』
一 日英和解の論理  
二 日英和解の舞台背景としてのビルマ    
三 東京裁判批判  
四 悲劇の主役としての近代  
五 アングロ・サクソンとの同盟における同床異夢  
おわりに──行き場のない日本主義

第10章 日英和解とメディア (ヒューゴ・ドブソン)
はじめに
一 記念行事と論争
二 一九九五年のイギリスの対日報道  
三 二○○五年のイギリスの対日報道  
おわりに

第11章 日英和解と日中和解 (キャロライン・ローズ)
はじめに
一 和解の世界的な傾向と枠組み
二 元捕虜と補償請求
三 日中和解と中国人による補償請求運動
おわりに

第12章 グローバル化時代の日英関係
(ラインハルト・ドリフテ)
はじめに
一 EUのなかのイギリス  
二 多国間フォーラムと臨機応変な同盟
おわりに

終章 日英関係の過去・現在・未来
(小菅信子/ヒューゴ・ドブソン)

 あとがき
 索引

書評掲載

「朝日新聞」(2011年8月7日付/保阪正康氏・評)に紹介されました。

「出版ニュース」(2011年8月下旬号)に紹介されました。

「日本歴史」(2012年6月号/庄司潤一郎氏・評)に紹介されました。

「歴史評論」(2015年6月号/岡田泰平氏・評)に紹介されました。