近代日本語は、語彙や文法の全く異なる西洋語の翻訳を通じて創られた。しかし、翻訳者たちの理論と実践は、開国当初の自由訳から言文一致期の逐語訳をへて「翻訳不可能論」に至るまで、きわめて多様な振幅をもっている。本書は、近代日本の翻訳論の歴史を、明治から昭和期にかけての代表的テクスト31編と、現代の翻訳研究者によるそれらの解題を通じて総合的に批評する、画期的で初の試みである。〔思想・言語〕
柳父 章(ヤナブ アキラ)
1928年東京市生.東京大学教養学部教養学科卒.元桃山学院大学教授.著書に『近代日本語の思想──翻訳文体成立事情』『秘の思想──日本文化のオモテとウラ』(法政大学出版局),『翻訳語成立事情』(岩波新書),論文に「漢字文化圏──中国・日本・韓国・ベトナムにおける近代西洋語の翻訳」(『独協国際交流』1991年)ほか.
水野 的(ミズノ アキラ)
1949年福島県生.東京外国語大学ポルトガル・ブラジル語学科卒業.日本通訳翻訳学会副会長・事務局長.元立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科特任教授.共著に『リスニングクリニック』(研究社),論文に「近代日本の文学的多元システムと翻訳の位相──直訳の系譜」(『翻訳研究への招待』1号)ほか.
長沼 美香子(ナガヌマ ミカコ)
愛知県生.広島大学卒業.同大学院修士課程修了.マッコーリ大学大学院修士課程修了.立教大学異文化コミュニケーション研究科特任准教授.日本通訳翻訳学会理事.論文に「日本における「飜譯」の誕生」(『翻訳研究への招待』4号),共訳書に『通訳学入門』『翻訳学入門』(みすず書房)ほか.
※上記内容は本書刊行時のものです。第Ⅰ部 日本における翻訳──歴史的前提
第Ⅱ部 近代日本の翻訳論──原典と解題
本アンソロジーを読むために
1 渡部 温『通俗 伊蘇普物語』例言[1873年]
2 宮島春松『欧洲小説 哲烈禍福譚』緒言[1879年]
伊澤信三郎訳『経世指針 鐵烈奇談』緒言[1883年]
3 坪内逍遙『該撒奇談 自由太刀餘波鋭鋒』附言[1884年]
4 藤田茂吉・尾崎庸夫『諷世嘲俗 繋思談』例言[1885年]
5 森田思軒「翻譯の心得」[1887年]
6 森田思軒『夜と朝』叙[1889年]
7 高橋正次郎『自由之権利』凡例[1895年]
8 福澤諭吉『福澤全集緒言』[1897年]
9 内村鑑三『外國語之研究』[1899年]
10 山縣五十雄『該撒殺害』「トウエーン論 餘論」[1903年]
11 上田 敏『海潮音』序[1905年]
12 二葉亭四迷「余が飜譯の標準」[1906年]
13 末松謙澄「飜譯上より見たる日本文と歐文」[1906年]
14 高橋五郎『英文譯解法』[1908年]
15 森 鴎外「『即興詩人』時代と現時の翻譯」[1909年]
16 内田魯庵「原文の印象と譯文の趣致」[1909年]
17 昇 曙夢『露西亜現代代表的作家六人集』自序[1910年]
18 森 鴎外「譯本フアウストに就いて」[1913年]
19 生田長江『サラムボオ』譯者の序[1913年]
20 岩野泡鳴『表象派の文学運動』譯者の序/例言[1913年]
21 竹内謙二『國富論』書後[1925年]
気賀勘重『國富論』上巻 訳者序[1927年]
22 坪内逍遙「自分の飜譯に就いて」[1928年]
23 小宮豊隆「發句飜譯の可能性」[1933年]
24 萩原朔太郎「詩の飜譯について」[1933年]
25 谷崎潤一郎『文章讀本』「西洋の文章と日本の文章」[1934年]
26 中村白葉「飜譯文の表現と指導」[1934年]
27 野上豊一郎『飜譯論──飜譯の理論と實際』[1938
28 太田龍男「スーパー・イムポーズにおける日本語の貧困」[1939年]
29 吉川幸次郎・大山定一『洛中書問』[1944年]
底本・親本・初出
文献案内
「あとがき」にかえて
第Ⅱ部 近代日本の翻訳論──原典と解題
本アンソロジーを読むために
1 渡部 温『通俗 伊蘇普物語』例言[1873年]
2 宮島春松『欧洲小説 哲烈禍福譚』緒言[1879年]
伊澤信三郎訳『経世指針 鐵烈奇談』緒言[1883年]
3 坪内逍遙『該撒奇談 自由太刀餘波鋭鋒』附言[1884年]
4 藤田茂吉・尾崎庸夫『諷世嘲俗 繋思談』例言[1885年]
5 森田思軒「翻譯の心得」[1887年]
6 森田思軒『夜と朝』叙[1889年]
7 高橋正次郎『自由之権利』凡例[1895年]
8 福澤諭吉『福澤全集緒言』[1897年]
9 内村鑑三『外國語之研究』[1899年]
10 山縣五十雄『該撒殺害』「トウエーン論 餘論」[1903年]
11 上田 敏『海潮音』序[1905年]
12 二葉亭四迷「余が飜譯の標準」[1906年]
13 末松謙澄「飜譯上より見たる日本文と歐文」[1906年]
14 高橋五郎『英文譯解法』[1908年]
15 森 鴎外「『即興詩人』時代と現時の翻譯」[1909年]
16 内田魯庵「原文の印象と譯文の趣致」[1909年]
17 昇 曙夢『露西亜現代代表的作家六人集』自序[1910年]
18 森 鴎外「譯本フアウストに就いて」[1913年]
19 生田長江『サラムボオ』譯者の序[1913年]
20 岩野泡鳴『表象派の文学運動』譯者の序/例言[1913年]
21 竹内謙二『國富論』書後[1925年]
気賀勘重『國富論』上巻 訳者序[1927年]
22 坪内逍遙「自分の飜譯に就いて」[1928年]
23 小宮豊隆「發句飜譯の可能性」[1933年]
24 萩原朔太郎「詩の飜譯について」[1933年]
25 谷崎潤一郎『文章讀本』「西洋の文章と日本の文章」[1934年]
26 中村白葉「飜譯文の表現と指導」[1934年]
27 野上豊一郎『飜譯論──飜譯の理論と實際』[1938
28 太田龍男「スーパー・イムポーズにおける日本語の貧困」[1939年]
29 吉川幸次郎・大山定一『洛中書問』[1944年]
底本・親本・初出
文献案内
「あとがき」にかえて
[執筆者(五十音順)]
コックリル浩子 (こっくりる・ひろこ)
岐阜県生.愛知県立大学文学部卒業.プーシキン名称ロシア語研究所にて語学研修後,クィーンズランド大学にて博士号取得.シドニー大学レクチャラー.著書にStyle and Narrative in Translations: The Contribution of Futabatei Shimei(St. Jerome)ほか.
齊藤美野 (さいとう・みの)
1980年東京都生.立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科博士前期課程修了.同研究科博士後期課程在籍.論文に「森田思軒と文学翻訳──起点テクストの「姿」を再現すること」(『通訳翻訳研究』8号)ほか.
佐藤美希 (さとう・みき)
1971年北海道生.北海道大学国際広報メディア研究科博士後期課程単位取得退学.博士(国際広報メディア).札幌大学准教授.論文に「昭和前半の英文学翻訳規範と英文学研究」(『翻訳研究への招待』2号)ほか.
田辺希久子 (たなべ・きくこ)
東京都生.青山学院大学国際政治経済研究科卒業.ノンフィクション出版翻訳者(英日),神戸女学院大学准教授.共著に『英日日英プロが教える基礎からの翻訳スキル』(三修社),訳書に『ザ・ビジョン』(ダイヤモンド社)ほか.
藤濤文子 (ふじなみ・ふみこ)
1959年兵庫県生.大阪外国語大学大学院外国語学研究科ドイツ語学修了.博士.神戸大学教授.著書に『翻訳行為と異文化間コミュニケーション──機能主義的翻訳理論の諸相』(松籟社),論文多数.
山岡洋一 (やまおか・よういち)
1949年神奈川県生.東京大学経済学部中退.翻訳家.著書に『翻訳とは何か─職業としての翻訳』(日外アソシエーツ),訳書に『国富論』『ケインズ説得論集』(日本経済新聞出版社),『ビジョナリー・カンパニー』(日経BP社)ほか.
コックリル浩子 (こっくりる・ひろこ)
岐阜県生.愛知県立大学文学部卒業.プーシキン名称ロシア語研究所にて語学研修後,クィーンズランド大学にて博士号取得.シドニー大学レクチャラー.著書にStyle and Narrative in Translations: The Contribution of Futabatei Shimei(St. Jerome)ほか.
齊藤美野 (さいとう・みの)
1980年東京都生.立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科博士前期課程修了.同研究科博士後期課程在籍.論文に「森田思軒と文学翻訳──起点テクストの「姿」を再現すること」(『通訳翻訳研究』8号)ほか.
佐藤美希 (さとう・みき)
1971年北海道生.北海道大学国際広報メディア研究科博士後期課程単位取得退学.博士(国際広報メディア).札幌大学准教授.論文に「昭和前半の英文学翻訳規範と英文学研究」(『翻訳研究への招待』2号)ほか.
田辺希久子 (たなべ・きくこ)
東京都生.青山学院大学国際政治経済研究科卒業.ノンフィクション出版翻訳者(英日),神戸女学院大学准教授.共著に『英日日英プロが教える基礎からの翻訳スキル』(三修社),訳書に『ザ・ビジョン』(ダイヤモンド社)ほか.
藤濤文子 (ふじなみ・ふみこ)
1959年兵庫県生.大阪外国語大学大学院外国語学研究科ドイツ語学修了.博士.神戸大学教授.著書に『翻訳行為と異文化間コミュニケーション──機能主義的翻訳理論の諸相』(松籟社),論文多数.
山岡洋一 (やまおか・よういち)
1949年神奈川県生.東京大学経済学部中退.翻訳家.著書に『翻訳とは何か─職業としての翻訳』(日外アソシエーツ),訳書に『国富論』『ケインズ説得論集』(日本経済新聞出版社),『ビジョナリー・カンパニー』(日経BP社)ほか.