高齢化・少子化、過疎化した地域、子どもの人権と教育、グローバル化の下での生活の安全、巨額の財政赤字や社会保障、メディアの多様化など、多くの社会問題・政策課題が突きつけられている。本書は、あらゆる人びとにとって「望ましい社会」を実現するための合意形成と、そのために必要な公開討議の場をいかに創出し、諸問題を克服していくのかを、理論と解決過程の両側面から考察する。
舩橋 晴俊(フナバシ ハルトシ)
1948年生まれ。現在、法政大学社会学部教授
主な著書に、『組織の存立構造論と両義性論』(単著、東信堂、2010年)、『環境総合年表』(共編、すいれん舎、2010年)、『社会学をいかに学ぶか』(単著、弘文堂、2012年近刊)。
壽福 眞美(ジュフク マサミ)
1947年生まれ。現在、法政大学社会学部教授
主な著訳書に、『批判的理性の社会哲学』(単著、法政大学出版局、1996年)、「3・11後の責任倫理を問う」『環境思想・教育研究』第5号(2011年)、N.ボルツ/A.ミュンケル編『人間とは何か』(単独訳、法政大学出版局、2010年)。
はじめに
第Ⅰ部 基礎理論的考察
第1章 社会制御過程における道理性と合理性の探究
(舩橋晴俊)
1 社会制御過程把握の社会学的枠組み
2 社会制御過程における規範理論的問題
3 勢力関係モデルとその理性化
4 課題としての公共圏の豊富化
5 おわりに2
第2章 リベラル・デモクラシーの危機と刷新
熟議は制度化できるか(クラウス・オッフェ/鈴木宗徳訳)
1 リベラル・デモクラシーの四つの長所
2 リベラル・デモクラシーの特徴
3 民主主義の失敗という診断と民主主義の刷新の必要性
4 二つの治療法
第3章 規範理論、討議民主主義的政治、アソシエーション(壽福眞美)
1 規範理論としての討議民主主義──参加・平等と普遍化可能性原理
2 討議民主主義的政治
3 自治体討議型国民投票(平等直接参加)
4 アソシエーションの挑戦──討議民主主義的社会・経済の可能性
第4章 公共性と熟議民主主義を分離・再接続する──「ミニ・パブリックス」の可能性(鈴木宗徳)
1 問題提起
2 参加の不足と熟議の不足
3 情念・理性・選好──熟議とは何か
4 代表制としての熟議
5 公共圏と熟議の再接続
6 おわりに
第5章 正義の作動と共同性──公共圏と「範囲」をめぐる理論的考察(斎藤友里子)
1 公共圏と関与の欲望
2 「他者の不快」と正義の範囲
3 「不正義」の同定・解消と共同性
4 理念・ルールと正義の実践
5 公共圏と正義の実践
第6章 経済学における個人の合理性と公共性(川俣雅弘)
1 社会的規範と制度設計
2 アダム・スミスのテーゼと市場メカニズムの限界
3 社会的選択ルール
4 メカニズム・デザイン理論の展開
5 公共性を共有する社会の形成に向けて
第Ⅱ部 社会問題解決過程の分析
第7章 不正義の感覚にもとづく問責‐答責関係の形成──規範概念としての「社会」の構想(大門信也)
1 「社会的なるもの」への批判と擁護
2 対立・葛藤・緊張を包含する複数的な「社会」の可能性
3 不正義と責任実践──「社会」の備えるべき規範的特性として
4 戦後日本における「社会」の醸成──公/私境界と「社会的なるもの」
5 おわりに
第8章 硬直化する規範とその再流動化──ジンメルとハーバーマスの思想を中心に(奥谷雄一)
1 なぜ「革命」は起こりづらいのか
2 近代社会における人々の行動原理──テンニースのゲゼルシャフト論
3 諸個人の価値判断および道徳的判断を規定する社会的規準
4 背景知そのものをテーマ化する「了解志向的行為者」
5 終わりなき「革命」
第9章 市民による公共的意見形成過程──まちづくりの会話分析をとおして(島田昭仁)
1 都市計画における市民の公共的意見形成過程への視座
2 まちづくりと会話分析
3 まちづくり会議の会話分析手法
4 分析事例
5 おわりに
第10章 自治体財政と公共圏形成の不十分性──夕張市財政破綻の財政社会学的分析(湯浅陽一)
1 問題の背景と本章の関心
2 本章の分析枠組みと先行研
3 旧産炭地自治体の財政を取り巻く環境
4 夕張市の財政破綻と公共圏
5 おわりに
人名・事項索引
執筆者紹介
第Ⅰ部 基礎理論的考察
第1章 社会制御過程における道理性と合理性の探究
(舩橋晴俊)
1 社会制御過程把握の社会学的枠組み
2 社会制御過程における規範理論的問題
3 勢力関係モデルとその理性化
4 課題としての公共圏の豊富化
5 おわりに2
第2章 リベラル・デモクラシーの危機と刷新
熟議は制度化できるか(クラウス・オッフェ/鈴木宗徳訳)
1 リベラル・デモクラシーの四つの長所
2 リベラル・デモクラシーの特徴
3 民主主義の失敗という診断と民主主義の刷新の必要性
4 二つの治療法
第3章 規範理論、討議民主主義的政治、アソシエーション(壽福眞美)
1 規範理論としての討議民主主義──参加・平等と普遍化可能性原理
2 討議民主主義的政治
3 自治体討議型国民投票(平等直接参加)
4 アソシエーションの挑戦──討議民主主義的社会・経済の可能性
第4章 公共性と熟議民主主義を分離・再接続する──「ミニ・パブリックス」の可能性(鈴木宗徳)
1 問題提起
2 参加の不足と熟議の不足
3 情念・理性・選好──熟議とは何か
4 代表制としての熟議
5 公共圏と熟議の再接続
6 おわりに
第5章 正義の作動と共同性──公共圏と「範囲」をめぐる理論的考察(斎藤友里子)
1 公共圏と関与の欲望
2 「他者の不快」と正義の範囲
3 「不正義」の同定・解消と共同性
4 理念・ルールと正義の実践
5 公共圏と正義の実践
第6章 経済学における個人の合理性と公共性(川俣雅弘)
1 社会的規範と制度設計
2 アダム・スミスのテーゼと市場メカニズムの限界
3 社会的選択ルール
4 メカニズム・デザイン理論の展開
5 公共性を共有する社会の形成に向けて
第Ⅱ部 社会問題解決過程の分析
第7章 不正義の感覚にもとづく問責‐答責関係の形成──規範概念としての「社会」の構想(大門信也)
1 「社会的なるもの」への批判と擁護
2 対立・葛藤・緊張を包含する複数的な「社会」の可能性
3 不正義と責任実践──「社会」の備えるべき規範的特性として
4 戦後日本における「社会」の醸成──公/私境界と「社会的なるもの」
5 おわりに
第8章 硬直化する規範とその再流動化──ジンメルとハーバーマスの思想を中心に(奥谷雄一)
1 なぜ「革命」は起こりづらいのか
2 近代社会における人々の行動原理──テンニースのゲゼルシャフト論
3 諸個人の価値判断および道徳的判断を規定する社会的規準
4 背景知そのものをテーマ化する「了解志向的行為者」
5 終わりなき「革命」
第9章 市民による公共的意見形成過程──まちづくりの会話分析をとおして(島田昭仁)
1 都市計画における市民の公共的意見形成過程への視座
2 まちづくりと会話分析
3 まちづくり会議の会話分析手法
4 分析事例
5 おわりに
第10章 自治体財政と公共圏形成の不十分性──夕張市財政破綻の財政社会学的分析(湯浅陽一)
1 問題の背景と本章の関心
2 本章の分析枠組みと先行研
3 旧産炭地自治体の財政を取り巻く環境
4 夕張市の財政破綻と公共圏
5 おわりに
人名・事項索引
執筆者紹介
[執筆者紹介]
舩橋 晴俊(フナバシ ハルトシ)[はじめに、第1章]*編者
壽福 眞美(ジュフク マサミ)[はじめに、第3章]*編者
クラウス・オッフェ(Claus Offe)[第2章]
1940年ベルリン生まれ。現在、ヘルティ・スクール・オブ・ガヴァナンス(Hertie School of Governance)教授、フンボルト大学名誉教授
デモクラシーに関する代表的な著書に、Herausforderungen der Demokratie. Zur Integrations‐ und Leistungsfahigkeit politischer Institutionen(Frankfurt am Main: Campus Verlag, 2003)、邦訳に『後期資本制社会システム』(壽福眞美編訳、法政大学出版局、1988年)、『アメリカの省察』(野口雅弘訳、法政大学出版局、2009年)。
鈴木 宗徳(スズキ ムネノリ)[第4章]
1968年生まれ。現在、法政大学社会学部准教授
主な著書に、『哲学から未来をひらく① 21世紀への透視図』(共編、青木書店、2009年)、『リスク化する日本社会』(共編、岩波書店、2011年)、Munenori Suzuki et al., “Individualizing Japan: Searching for its Origin in First Modernity," British Journal of Sociology, Vol. 61, No. 3(2010), pp. 513-538。
斎藤 友里子(サイトウ ユリコ)[第5章]
1961年生まれ。現在、法政大学社会学部教授
主な著書に、『現代の階層社会第3巻 流動化の中の社会意識』(共編著、東京大学出版会、2011年)、「〈公平〉の論理」土場学・盛山和夫編著『正義の論理』(勁草書房、2006年)、101-126頁、「『より良い社会』をめぐる問い」盛山和夫ほか編著『日本の社会階層とそのメカニズム』(白桃書房、2011年)、225-254頁。
川俣 雅弘(カワマタ マサヒロ)[第6章]
1958年生まれ。現在、慶應義塾大学経済学部教授
主な論文に、「20世紀の経済学における序数主義の興隆と衰退」『経済学史研究』第47巻(2005年12月)、108-124頁、“The Negishi Method in the History of General Equilibrium Theory," in A. Ikeo and H. D. Kurz, eds., A History of Economic Theory: Essays in Honour of Takashi Negishi(Routledge 2009), Chap 7, pp. 120-136, “The Authorship of the Marginal Productivity Theory in `the Old Quarrel'," Keio Economic Studies, Vol. 46(2010), pp. 43-59。
大門 信也(ダイモン シンヤ)[第7章]
1976年生まれ。現在、関西大学社会学部助教
主な著訳書に、「震災復興のための再生可能エネルギー事業のあり方を考える」『政經研究』97号(2011年12月)、「責任実践としての近隣騒音問題」『環境社会学研究』第14号(2008年11月)、ダニエル・アルドリッチ著『誰が負を引きうけるのか』(共訳、世界思想社、2012年)
奥谷 雄一(オクタニ ユウイチ)[第8章]
1979年生まれ。現在、法政大学大学院社会学研究科社会学専攻博士後期課程
主な論文に、「カント〈永遠平和論〉とその再構築をめぐる問題について」『法政大学大学院紀要』第59号(2007年)。
島田 昭仁(シマダ アキヒト)[第9章]
1965年生まれ。現在、東京大学大学院工学系研究科後期博士課程
主な論文に、「まちづくり運動の連帯における共同態の発見とその応用可能性」日本都市計画学会『都市計画論文集』No. 42-3(2007年)、「会話分析を用いた参加プロセスのモニタリング手法」日本建築学会『建築学会学術講演会梗概集:都市計画』(2011年)、「汎用テキストマイニングソフトを使った会話分析手法」電子情報通信学会『東京支部学生会研究発表会第17回講演論文集』(2012年3月)。
湯浅 陽一(ユアサ ヨウイチ)[第10章]
1972年生まれ。現在、関東学院大学文学部現代社会学科准教授
主な著訳書に、『政策公共圏と負担の社会学』(単著、新評論、2005年)、「循環型社会の形成と環境社会学」『環境社会学研究』第17号(2011年11月)、5-18頁、ダニエル・アルドリッチ著『誰が負を引きうけるのか』(監訳、世界思想社、2012年)。
舩橋 晴俊(フナバシ ハルトシ)[はじめに、第1章]*編者
壽福 眞美(ジュフク マサミ)[はじめに、第3章]*編者
クラウス・オッフェ(Claus Offe)[第2章]
1940年ベルリン生まれ。現在、ヘルティ・スクール・オブ・ガヴァナンス(Hertie School of Governance)教授、フンボルト大学名誉教授
デモクラシーに関する代表的な著書に、Herausforderungen der Demokratie. Zur Integrations‐ und Leistungsfahigkeit politischer Institutionen(Frankfurt am Main: Campus Verlag, 2003)、邦訳に『後期資本制社会システム』(壽福眞美編訳、法政大学出版局、1988年)、『アメリカの省察』(野口雅弘訳、法政大学出版局、2009年)。
鈴木 宗徳(スズキ ムネノリ)[第4章]
1968年生まれ。現在、法政大学社会学部准教授
主な著書に、『哲学から未来をひらく① 21世紀への透視図』(共編、青木書店、2009年)、『リスク化する日本社会』(共編、岩波書店、2011年)、Munenori Suzuki et al., “Individualizing Japan: Searching for its Origin in First Modernity," British Journal of Sociology, Vol. 61, No. 3(2010), pp. 513-538。
斎藤 友里子(サイトウ ユリコ)[第5章]
1961年生まれ。現在、法政大学社会学部教授
主な著書に、『現代の階層社会第3巻 流動化の中の社会意識』(共編著、東京大学出版会、2011年)、「〈公平〉の論理」土場学・盛山和夫編著『正義の論理』(勁草書房、2006年)、101-126頁、「『より良い社会』をめぐる問い」盛山和夫ほか編著『日本の社会階層とそのメカニズム』(白桃書房、2011年)、225-254頁。
川俣 雅弘(カワマタ マサヒロ)[第6章]
1958年生まれ。現在、慶應義塾大学経済学部教授
主な論文に、「20世紀の経済学における序数主義の興隆と衰退」『経済学史研究』第47巻(2005年12月)、108-124頁、“The Negishi Method in the History of General Equilibrium Theory," in A. Ikeo and H. D. Kurz, eds., A History of Economic Theory: Essays in Honour of Takashi Negishi(Routledge 2009), Chap 7, pp. 120-136, “The Authorship of the Marginal Productivity Theory in `the Old Quarrel'," Keio Economic Studies, Vol. 46(2010), pp. 43-59。
大門 信也(ダイモン シンヤ)[第7章]
1976年生まれ。現在、関西大学社会学部助教
主な著訳書に、「震災復興のための再生可能エネルギー事業のあり方を考える」『政經研究』97号(2011年12月)、「責任実践としての近隣騒音問題」『環境社会学研究』第14号(2008年11月)、ダニエル・アルドリッチ著『誰が負を引きうけるのか』(共訳、世界思想社、2012年)
奥谷 雄一(オクタニ ユウイチ)[第8章]
1979年生まれ。現在、法政大学大学院社会学研究科社会学専攻博士後期課程
主な論文に、「カント〈永遠平和論〉とその再構築をめぐる問題について」『法政大学大学院紀要』第59号(2007年)。
島田 昭仁(シマダ アキヒト)[第9章]
1965年生まれ。現在、東京大学大学院工学系研究科後期博士課程
主な論文に、「まちづくり運動の連帯における共同態の発見とその応用可能性」日本都市計画学会『都市計画論文集』No. 42-3(2007年)、「会話分析を用いた参加プロセスのモニタリング手法」日本建築学会『建築学会学術講演会梗概集:都市計画』(2011年)、「汎用テキストマイニングソフトを使った会話分析手法」電子情報通信学会『東京支部学生会研究発表会第17回講演論文集』(2012年3月)。
湯浅 陽一(ユアサ ヨウイチ)[第10章]
1972年生まれ。現在、関東学院大学文学部現代社会学科准教授
主な著訳書に、『政策公共圏と負担の社会学』(単著、新評論、2005年)、「循環型社会の形成と環境社会学」『環境社会学研究』第17号(2011年11月)、5-18頁、ダニエル・アルドリッチ著『誰が負を引きうけるのか』(監訳、世界思想社、2012年)。
樋口明彦他編『若者問題と教育・雇用・社会保障』、三井さよ他編『ケアとサポートの社会学』(いずれも小局刊)。