サピエンティア 28
土着語の政治
ナショナリズム・多文化主義・シティズンシップ

A5判 / 554ページ / 上製 / 価格 5,720円 (消費税 520円) 
ISBN978-4-588-60328-0 C3331 [2012年11月 刊行]

内容紹介

国家によるネイション形成にはマイノリティの同化や排除、周縁化がつきものである。その際マイノリティの権利をいかに擁護し、リベラリズム理論の枠内に位置づけるのか。キムリッカは、個人の自律的選択の基盤としてネイションの言語や文化をとらえ、「土着語の政治」を支持する。独自の教育を行う権利や広範な自治権、既存の国家から分離独立する権利まで認められるべきと主張する。

著訳者プロフィール

ウィル・キムリッカ(キムリッカ,W.)

(Will Kymlicka)
カナダ・クイーンズ大学卒業後、オックスフォード大学で哲学の博士号取得、プリンストン大学・トロント大学を経て、現在、クイーンズ大学哲学部教授。リベラリズムの立場から、多文化社会におけるマイノリティの権利などの問題を理論化している。既訳書に『多文化時代の市民権』、『新版 現代政治理論』がある。

岡﨑 晴輝(オカザキ セイキ)

[序章、第13章、第14章、第15章]
1968年生まれ。国際基督教大学大学院行政学研究科博士後期課程修了。博士(学術)。九州大学大学院法学研究院・教授(政治理論・比較政治学)
主な業績:『与えあいのデモクラシー──ホネットからフロムへ』勁草書房、2004年、『はじめて学ぶ政治学──古典・名著への誘い』(共編)ミネルヴァ書房、2008年ほか。

施 光恒(セ テルヒサ)

[第1章、第2章、第3章]
1971年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(法学)。九州大学大学院比較社会文化研究院・准教授(政治理論・政治哲学・人権論)
主な業績:『リベラリズムの再生──可謬主義による政治理論』慶應義塾大学出版会、2003年、『ナショナリズムの政治学──規範理論への誘い』(共編)ナカニシヤ出版、2009年ほか。

竹島 博之(タケシマ ヒロユキ)

[第16章、第17章、第18章]
1972年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(政治学)。東洋大学法学部・准教授(政治理論・政治思想史・シティズンシップ教育)
主な業績:『カール・シュミットの政治──「近代」への反逆』風行社、2002年、『シティズンシップ教育論──政治哲学と市民』(B. クリック著、共訳)法政大学出版局、2011年ほか。

栗田 佳泰(クリタ ヨシヤス)

[第4章、第5章、第6章]
1978生まれ。九州大学大学院法学府公法・社会法学専攻(憲法)博士後期課程単位取得退学。修士(法学)。富山大学経済学部・准教授(憲法)。
主な業績:「多文化社会における『国籍』の憲法学的考察──リベラル・ナショナリズム論における国籍とは」『憲法理論研究会叢書16 憲法変動と改憲論の諸相』(憲法理論研究会編)敬文堂,2008年,「憲法とナショナリズム」『ナショナリズムの政治学──規範理論への誘い』(施光恒・黒宮一太編)ナカニシヤ出版,2009年ほか。

森 敦嗣(モリ アツシ)

[第7章、第8章、第9章]
1980生まれ。九州大学大学院比較社会文化学府博士後期課程。
主な業績:「非欧米圏の人権をめぐる議論──キムリッカの理論についての検討」『比較思想論輯』(第15号、2008年)、43-53頁。

白川 俊介(シラカワ シュンスケ)

[第10章、第11章、第12章]
1983年生まれ。九州大学大学院比較社会文化学府博士後期課程修了。博士(比較社会文化)。日本学術振興会特別研究員PD(政治哲学・国際政治思想)。
主な業績:「規範的国際政治理論におけるグローバル秩序構想──『コスモポリタン-コミュニタリアン論争』を手がかりに」『グローバル秩序という視点──規範・歴史・地域』(松井康浩編)法律文化社、2010年、『ナショナリズムの力──多文化共生世界の構想』勁草書房、2012年ほか。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

 序 章

 第 I 部 マイノリティの権利に関する論争の展開
第1章 マイノリティの権利をめぐる新たな論争
第2章 リベラルな文化主義
第3章 マイノリティの権利のリベラリズム理論は必要か

 第 II 部 民族文化的正義
第4章 人権と民族文化的正義
第5章 マイノリティ・ナショナリズムと複数ネイション連邦制
第6章 先住民の権利を理論化する
第7章 先住民の権利と環境的正義
第8章 移民多文化主義の理論と実践
第9章 人種間関係の岐路

 第 III 部 ナショナリズムに関する誤解
第10章 啓蒙的コスモポリタニズムからリベラル・ナショナリズムへ
第11章 コスモポリタニズム、国民国家、マイノリティ・ナショナリズム
第12章 ナショナリズムに関する誤解
第13章 リベラル・ナショナリズムのパラドックス
第14章 国際舞台におけるアメリカ多文化主義
第15章 マイノリティ・ナショナリズムと移民の統合

 第 IV 部 複数エスニック国家における民主的シティズンシップ
第16章 シティズンシップ教育
第17章 グローバル化時代のシティズンシップ
第18章 リベラルな平等主義と公民的共和主義