叢書・ウニベルシタス 954
クリスティアーネとゲーテ
詩人と生きた女性の記録

四六判 / 766ページ / 上製 / 価格 8,580円 (消費税 780円) 
ISBN978-4-588-00954-9 C1398 [2011年04月 刊行]

内容紹介

文豪ゲーテの日常を、二十八年にわたる同棲・婚姻生活を通じて支え続けた女性クリスティアーネ。その貧しい出自と、支配的な社会規範に立ち向かう生き方ゆえに、今日まで彼女に浴びせられ続けてきた否定的な評価ははたして正当なのか? 膨大な史料調査のもと、詩人の家庭生活と創作の舞台裏を見事に再構成し、一人の現代的女性の光と影を描いてドイツ本国で異例のベストセラーとなった話題の書。

著訳者プロフィール

ジークリット・ダム(ダム ジークリット)

1940年チューリンゲン州ゴータ市生まれ。イェーナ大学でドイツ文学と史学を専攻、学位を取り教壇に立つが、70年から評論家・編纂者、78年以降はベルリンに住んで作家活動を続けている。主な著書:『レンツの生涯』(85年)、『コルネリア・ゲーテ』(87年)、『クリスティアーネとゲーテ』(98年)、『シラーの生涯』(2004年)、『ゲーテの最後の旅』(07年)。敗戦4年後の旧東ドイツ(DDR)建国時わずか9歳、人生の多感な時期を社会主義建設期の理想と共に生きるが、「歴史」として提供される「イデオロギー」「幻想を促進する嘘」に対する不信は「歴史の再生によって個人を取り戻す」という欲求と化し、歴史の中で見捨てられてきた弱者の復権、強者の脱神話化への取り組みとなる。「アーカイヴズにおける探索」「資料に即した事実」により物語られる事実と虚構の渾然となった独特の作品は、『コルネリア』や『クリスティアーネ』が証明するように大好評を博している。メーリケ賞やフォンターネ賞(94年)など6文学賞を受賞、なかでも2005年、壁の崩壊後15年余の悲願として創設された「チューリンゲン文学賞」の第一回受賞は、氏にとっても記念すべき出来事となった。

西山 力也(ニシヤマ リキヤ)

1942年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程(ドイツ文学専攻)修了。ゲーテ時代の文学・文化を研究。現在、日本女子大学文学部教授。日本独文学会・日本ゲーテ協会・ヴァイマル=ゲーテ協会会員。主な著書:『ドイツ文学─歴史と鑑賞』(共編、朝日出版社)、『郁文堂独和辞典』『ドイツ文学回遊』(共著、郁文堂)。主な訳書:ジークリット・ダム『コルネリア・ゲーテ─奪われた才能』(郁文堂)、ジークフリート・ウンゼルト『ゲーテと出版者─一つの書籍出版文化史』(共訳、法政大学出版局)。主な論文:「ゲーテの『パンドーラ』における回想のモティーフについて」「『親和力』における湖沼の三つの情景」「ゲーテ『親和力』の成立史」「クリスティアーネ・ヴルピウス覚書」など。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

日本の読者の皆様へ
凡 例

第一章
一 クリスティアーネ受難史
二 クリスティアーネ・ヴルピウスの先祖をたずねて
三 父ヨハン・フリードリヒ・ヴルピウス
四 クリスティアーネ誕生
五 幼いクリスティアーネと青年ゲーテ

第二章
一 ゲーテのヴァイマル入り
二 兄クリスチャン・アウグスト・ヴルピウスの就学
三 父ヴルピウスの職務上の犯罪
四 枢密顧問官ゲーテと嘆願者クリスティアーネ
五 花工房のクリスティアーネ
六 子殺し犯アンナ・カタリーナ・ヘーン
七 兄クリスチャン・アウグストとゲーテ

第三章
一 ゲーテのイタリア旅行
二 ゲーテの帰還とクリスティアーネとの出会い
三 同棲の露見とシャルロッテ・フォン・シュタイン夫人
四 クリスティアーネの懐妊と宮廷の制裁
五 長男アウグスト・ヴァルター・ゲーテの誕生
六 第二次イタリア旅行と随行の日々の家族への慕情
七 イェーガーハウス─家庭生活と芸術生活
八 再びフラウエンプラーンの家へ

第四章
一 フランス出兵
二 留守をまもるクリスティアーネ
三 娘カロリーナのはかない命とゲーテ邸の完成
四 ゲーテとシラーの友情
五 二つの所帯─ヴァイマルとイェーナ
六 シャルロッテ・フォン・シュタイン夫人への再接近
七 異なる世界─ゲーテ、クリスティアーネと兄クリスチャン
八 ゲーテ家の財政状態

第五章
一 イェーナとヴァイマル
二 ゲーテのイタリア旅行の計画と遺言状の作成
三 ゲーテとフランクフルト・アム・マインへ
四 ゲーテのスイス旅行
五 再びヴァイマルとイェーナ
六 別居生活にひそむもの
七 ふたりの肖像画
八 息子アウグスト・ヴァルターの認知
九 クリスティアーネの孤独
十 イェーナのロマン派
十一 二人のマイヤー

第六章
一 娘カティンカの誕生と死
二 ゲーテの引きこもりとコツェブー派の攻撃
三 クリスティアーネのバート・ラウホシュテット湯治滞在
四 オーバーロスラの農園の売却とフラウエンプラーンの家政、スタール夫人の来訪
五 ニコラウス・マイヤーとの文通とクリスティアーネ、息子の就学と家庭教師リーマー
六 ゲーテの病とシラーの死、そして忍び寄る戦争の足音
七 カールスバートとバート・ラウホシュテット─別々の湯治滞在
八 イェーナ、アウエルシュテットの会戦とふたりの正式結婚
九 ゲーテにとってのナポレオンとフラウエンプラーンの家の所有権の獲得

第七章
一 枢密顧問官夫人クリスティアーネ・フォン・ゲーテ
二 クリスティアーネのフランクフルト再訪とベッティーナ・ブレンターノ
三 姑カタリーナ・エリーザベタの死─遺産相続問題とクリスティアーネ
四 劇場監督ゲーテとカロリーネ・ヤーゲマンの不和
五 ゲーテの若い女性への恋情
六 貴族社会と家庭生活─クリスティアーネの三枚の肖像画
七 ゲーテの女性観における理想と現実
八 ニコラウス・マイヤーの再訪、兄クリスチャン・アウグストの昇進
九 長編小説『親和力』と最初の読者クリスティアーネとカロリーネ
十 ヴァイマルに背を向けるゲーテと残されたクリスティアーネ
十一 自伝『詩と真実』の構想とふたりのカールスバート湯治旅行
十二 クリスティアーネとベッティーナの衝突
十三 ゲーテの名代アウグストとふたりのボヘミア湯治旅行

第八章
一 一八一三年─戦争・悪夢・ゲーテのボヘミアへの避難
二 宿営に奮闘するクリスティアーネとテプリッツのゲーテ
三 クリスティアーネとゲーテの結婚二十五周年記念日
四 ライプツィヒ近郊の諸国民の戦い
五 反ナポレオンと愛国心の高揚のもとで
六 義勇軍編成の呼びかけとアウグスト・フォン・ゲーテ
七 一八一四年─ゲーテと初女性秘書カロリーネ・ウルリヒ
八 バート・ベルカ湯治滞在─『コッタ版全集』の編集と『西東詩集』の萌芽
九 アウグスト・フォン・ゲーテの決闘の危機
十 ゲーテのライン・マイン旅行とマリアンネ・ヴィレマー
十一 ご婦人方、クリスティアーネとカロリーネ・ウルリヒ
十二 若返るゲーテとクリスティアーネの病

第九章
一 一八一五年─再度のライン・マイン旅行と『西東詩集』
二 マリアンネ・フォン・ヴィレマーとクリスティアーネ
三 クリスティアーネのカールスバート湯治滞在
四 ゲーテの沈黙と和解を求める手紙
五 一八一六年─運命の年のクリスティアーネとゲーテ
六 ザクセン=ヴァイマル=アイゼナハ大公国の国務大臣フォン・ゲーテ夫妻
七 クリスティアーネの死とアウグスト・フォン・ゲーテの結婚
八 ヤーコプ教会墓地とヴァイマルの永遠の墓所
あとがき

解説にかえて──ジークリット・ダム、チューリンゲン文学賞を受賞する
訳者あとがき
年譜/系図一覧/地図一覧
注/二次文献/出典/参考文献目録/人名索引