存在の解釈学
ハイデガー『存在と時間』の構造・転回・反復

A5判 / 522ページ / 上製 / 価格 6,600円 (消費税 600円) 
ISBN978-4-588-15064-7 C3010 [2012年04月 刊行]

内容紹介

西洋哲学史を代表する思想家たちとの対決から切り開かれたハイデガーの思索の道には、テキストの解釈をめぐって数々の変化・起伏・反復が内在する。初期から中期にわたる重層的な思考の展開を、従来必ずしも正面から問われてこなかった「解釈学」の観点から包括的かつ批判的に跡づけ、主著『存在と時間』の方法を支えるハイデガー独自の哲学史観や歴史解釈の根本的意義を究明する画期的研究。

著訳者プロフィール

齋藤 元紀(サイトウ モトキ)

1968年生。2002年法政大学大学院人文科学研究科哲学専攻博士課程単位取得退学。現在、法政大学サステイナビリティ研究教育機構リサーチ・アドミニストレータ(PD)、法政大学・大学院兼任講師、国士舘大学、明星大学、首都大学東京、立教大学非常勤講師。博士(哲学)。共編著に、『科学と技術への問い──ハイデッガー研究会第三論集』(理想社、2012年)、『始まりのハイデガー』(晃洋書房、2012年)、『ヨーロッパ現代哲学への招待』(梓出版社、2009年)。共訳書に、ロックモア『カントの航跡のなかで──二十世紀の哲学』(法政大学出版局、2008)。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 論
  一 本書の目的
  二 『存在と時間』研究の現状と本書の立場
  三 本書の方法
  四 本書の構成

第Ⅰ部 『存在と時間』の解釈学的構造
 第一章 形式的告示的解釈学
  第1節 現存在の解釈学の構造
  第2節 理念
  第3節 遂行
  第4節 遂行の着手点
  第5節 形式的告示の構造
  第6節 形式的告示的解釈学としての『存在と時間』
  第7節 非本来性の反復

 第二章 日常性の解釈学
  第1節 弁論術の方法的立場と日常性の地盤性格
  第2節 弁証術から弁論術へ
  第3節 実践哲学としての弁論術
  第4節 『存在と時間』における日常性の解釈学
  第5節 日常性の解釈学の《論理》と《倫理》

 第三章 超越論的解釈学
  第1節 ファンタジアの解釈学的・現象学的解釈
  第2節 時間性の形式的告示と超越論的構想力
  第3節 超越論的構想力から根源的時間性へ
  第4節 構想力の《解体》

第Ⅱ部 『存在と時間』の解釈学的転回
 第四章 脱自的瞬間の時間性
  第1節 パウロにおけるカイロス
  第2節 アウグスティヌスにおけるカイロス
  第3節 ルターにおけるカイロス
  第4節 アリストテレスにおけるカイロス
  第5節 アリストテレス時間論解釈の構図
  第6節 アリストテレス時間論の解釈
  第7節 脱自的瞬間の時間性

 第五章 解釈学と超越論の相克
  第1節 弁証術・直観・エロス
  第2節 フロネーシスに対するソフィアの優位
  第3節 プラトン解釈の変容
  第4節 善のイデアと『存在と時間』のプログラム
  第5節 解釈学と超越論の相克

 第六章 永遠回帰と転回
  第1節 哲学的衝動
  第2節 共感と反感のあいだ
  第3節 ニーチェ的衝動の実存論的拡張
  第4節 現存在の時間性と永遠回帰
  第5節 『存在と時間』の挫折
  第6節 永遠回帰と転回

第Ⅲ部 『存在と時間』の解釈学的反復
 第七章 共同存在の解釈学
  第1節 共同存在としての現存在の複数性
  第2節 現存在の複数性と分散
  第3節 現─存在と新たな共同存在
  第4節 脱自的共同存在

 第八章 歴史の解釈学
  第1節 『存在と時間』における実在性をめぐるディルタイ批判
  第2節 ディルタイ評価の両義性と生の歴史的実在性
  第3節 実在性の超越論的基礎
  第4節 歴史の解釈学における共鳴と闘争

 第九章 自然の解釈学
  第1節 『存在と時間』における自然概念
  第2節 自然の解釈学の視点
  第3節 自然の解釈学の原理
  第4節 自然の解釈学の方法
  第5節 自然の解釈学における循環
  第6節 自然の解釈学からピュシスの解釈学へ

結 論
あとがき/参考文献/人名・事項索引