企業と美術
近代日本の美術振興と芸術支援

A5判 / 238ページ / 上製 / 価格 4,070円 (消費税 370円) 
ISBN978-4-588-42021-4 C1070 [2021年03月 刊行]

内容紹介

日本近代の発展過程で、整備が遅れた公立美術館の代替機能を果たしてきたのは民間企業であった。本書は企業と美術の関係性を、とりわけ先駆的であった三越を中心に明らかにする。三井・三越の高橋義雄・日比翁助・三井高棟、三菱岩崎家の人々、大倉喜八郎、根津嘉一郎、石橋正二郎、さらには西武の辻井喬(堤清二)に至る経営者の系譜を辿り、彼らの経歴や美術観を通して、企業経営に美術が導入されてゆく背景を論じる。

著訳者プロフィール

田中 裕二(タナカ ユウジ)

1975年札幌市に生まれる。慶應義塾大学大学院文学研究科美学美術史学専攻アート・マネジメント分野修了。江戸東京たてもの園学芸員、東京都江戸東京博物館学芸員・資料係長などを経て現在、法政大学兼任講師、静岡文化芸術大学文化政策学部芸術文化学科准教授。
主要著書など
・『図説 東京流行生活』(共著、河出書房新社、2003年)、『維新の洋画家 川村清雄』(共著、東京都江戸東京博物館、2012年)、『明治、このフシギな時代』(共著、新典社、2016年)、『明治、このフシギな時代2』(共著、新典社、2017年)
・「三井呉服店における高橋義雄(箒庵)の美術館構想と美術鑑賞教育―欧米留学と日本美術の発見」(三田芸術学会編『芸術学』15号、2012年)

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 章 百貨店と美術
 1 問題提起と執筆の動機
 2 研究史及び本書の構成

第一章 近世の見世物から近代の展示へ
 1 はじめに
 2 寺社境内から公園制度への転換
 3 街路をめぐる規制──車社会の到来
 4 盛り場を巡る香具師(やし)の取締り
 5 盛り場における収税強化
 6 見世物興行からの脱却──博覧会場としての上野公園
 7 博覧会から勧工場、そして百貨店へ
 8 おわりに

第二章 米国百貨店のアート・ギャラリー
 1 はじめに
 2 問題提起
 3 三井呉服店の改革モデル
 4 横河民輔の『呉服及雑貨店建築取調報告』
 5 ワナメーカーと三井呉服店の高橋義雄
 6 書画展覧所「アート・ギャラリー」の導入
 7 ワナメーカーにおける教育的な展示
 8 ワナメーカーで開催された展覧会
 9 おわりに

第三章 日本美術の発見と美術振興
 1 はじめに
 2 欧米留学と日本美術の発見
 3 都市における美術館の位置と機能
 4 日本美術工芸振興策
 5 おわりに

第四章 三越呉服店の経営と美術
 1 はじめに
 2 実業家日比翁助の誕生
 3 日露戦争と日比翁助の美術観
 4 新美術部設立の動機と目的
 5 士魂商才と美術
 6 おわりに

第五章 財閥当主のパトロネージ
 1 はじめに
 2 江戸では後発の伊勢松坂商人
 3 本邸の暮らし──京都から東京へ
 4 麻布今井町邸での生活
 5 別荘と集会所の建設
 6 おわりに

第六章 江戸の名所から東京の新名所へ
 1 はじめに
 2 江戸の三井越後屋から東京の三越呉服店へ
 3 三越家の三越呉服店から三井家の三井呉服店へ
 4 東京名所絵の中の三越
 5 関東大震災前後の三越
 6 おわりに

終 章 実業家の美術蒐集と公開
 1 はじめに
 2 三菱岩崎家と美術の継承──岩崎彌太郎・彌之助・久彌・小彌太
 3 大倉喜八郎の東洋美術保護
 4 根津嘉一郎──書画骨董趣味から数寄者へ
 5 石橋正二郎──世の人々の楽しみと幸福のために
 6 辻井喬/堤清二──セゾン文化と西武美術館
 7 おわりに

『企業と美術』正誤表PDF
本書の刊行後、いくつかの誤表記または事実誤認の箇所を確認いたしました。いずれも編集部の不注意の結果であり、ご迷惑をおかけしました関係各位、読者の皆さまに心よりお詫びを申し上げます(2021年6月30日)。

書評掲載

「アートコレクターズ」(2021年5月号、2021年4月25日発行)に紹介されました。

「美術手帖」(2021年6月号、2021年05月07日発行)に紹介されました。

「中日新聞」(2021年05月13日付)に紹介されました。

「図書新聞」(2021年09月18日号/山本真沙子氏・評)に紹介されました。

「経営史学」(第57巻1号、2022年06月発行/鈴木邦夫氏・評)に紹介されました。

関連書籍

『博物館の歴史』
高橋 雄造:著
『音楽を展示する』
井上 さつき:著