村松剛
保守派の昭和精神史

四六判 / 556ページ / 上製 / 価格 4,950円 (消費税 450円) 
ISBN978-4-588-46020-3 C0095 [2023年04月 刊行]

内容紹介

東西冷戦期、福田恆存や江藤淳と似た「保守」の立場から活動したフランス文学者・文芸評論家、村松剛。小林秀雄との出会い、ヴァレリー研究、アイヒマン裁判の傍聴、アルジェリア戦争の取材、中東戦争への眼差し、内閣調査室への協力、三島由紀夫や遠藤周作らとの人的交流。その生涯を丹念に追い、いかにして議会制民主主義を尊ぶ保守派のリベラル知識人となったのかを記す、初の評伝的一冊。

著訳者プロフィール

神谷 光信(カミヤ ミツノブ)

神谷光信 1960年横浜市生まれ。関東学院大学キリスト教と文化研究所客員研究員。昭和文学会会員。博士(学術)。著書:『評伝鷲巢繁男』(小沢書店、1998年)、『須賀敦子と9人のレリギオ』(日外アソシエーツ、2007年)、『ポストコロニアル的視座より見た遠藤周作文学の研究』(関西学院大学出版会、2017年)ほか。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章 聖別リストにない名前

第1章 占領下の青春
若き日の原点──大学入学まで/東京大学仏蘭西文学科への進学

第2章 小林秀雄
「韜晦の劇──小林秀雄論」/「父殺し」の挫折

第3章 銃後の世代
「一二会」/奥野健男と『現代評論』/遠藤周作との出会い

第4章 ポール・ヴァレリー
鈴木信太郎教授の指導/小林秀雄と『ヴァリエテ』──批評の武器庫/加藤周一の感動──保田與重郎の対極にある散文/村松剛──研究対象としての知識人/『評伝ポール・ヴァレリー』/自分をヴァレリーと同一視する学者たち──遠藤周作の批判/保田與重郎との距離

第5章 メタフィジック批評とシュルレアリスム研究会
メタフィジック批評/新日本文学会との関わり(その一)/シュルレアリスム研究会との関わり

第6章 ソヴィエト連邦への疑心──ハンガリー事件
ハンガリー事件の衝撃/新日本文学会との関わり(その二)/『新日本文学』の村松論文/反共産主義への転回

第7章 同人誌『批評』と六〇年安保闘争
『現代評論』終刊と『批評』創刊/開高健との交遊/六〇年安保と「若い日本の会」/三島由紀夫と村松兄妹/『昭和批評大系』全五巻の刊行

第8章 アイヒマン裁判の傍聴
ナチズムに対する問題意識/丸山眞男を囲む座談会/アイヒマン裁判の傍聴/『大量殺人の思想』の問題意識/ニヒリズムという主題/竹山道雄・福田恆存との相違

第9章 抵抗者への共感──アルジェリア戦争
アルジェリア戦争の取材/独立闘争への共感/フランス植民地主義批判/独立後のアルジェリア再訪/開催されぬアジア・アフリカ会議/後発有色人種国家に共通する諸問題/新生アルジェリアへの期待と失望

第10章 アメリカ合衆国からの招待
江藤淳の批判/村松剛のアメリカ体験/人種主義/ユダヤ人の世界/ヴェトナム戦争/中南米の国々/ドミニカ共和国/ハイチ共和国、ホンデュラス、グアテマラ/村松剛の海外経験

第11章 中公サロン、内閣調査室、かすみ会
粕谷一希と中公サロン/内閣調査室とかすみ会/東京オリンピックへの醒めたまなざし/日本文化会議設立と『諸君!』創刊

第12章 政治の芸術家と愛国の背信者
ジャンヌ・ダルク/シャルル・ド・ゴール/対独協力文学者への関心/先駆的なコラボラトゥール研究/レジスタンス神話の解体/政治的選択の誤りと人間性

第13章 三島由紀夫
『論争ジャーナル』/三島由紀夫の祖国防衛隊構想と楯の会/文学と政治/『三島由紀夫の世界』/一九七〇年/最後の面会/三島事件当日/日本浪曼派体験の有無/桶谷秀昭と日本浪曼派

第14章 日本浪曼派の亡霊──文化とは死である
トロント大学講義と『死の日本文學史』/加藤周一『日本人の死生観』との相違/日本人に向けた「死を想え」

第15章 占領者イスラエル
村松剛とシオニズム/藤村信のパレスチナ戦争論/第三次中東戦争以後/地下運動家かテロリストか/板垣雄三の分析/アラブ世界の認識/対照的視点/サブラ・シャティーラ事件/藤村信と村松剛

第16章 アンドレ・マルローとレイモン・アロン
マルローと三島由紀夫/ヴァレリーとマルロー/文学と政治、認識と行動/レイモン・アロン

第17章 和服を着た肖像
日本史三部作/『帝王後醍醐──「中世」の光と影』/『醒めた炎 木戸孝允』/『世界の中の日本──危機の指導者群像』/チベット独立運動支援、奥野発言直後の北京訪問/明治・大正・昭和の宰相論

第18章 対米従属外交批判
アメリカ占領軍の功罪/「核の時代」における日本の在り方/占領下沖縄の訪問/「占領のもたらしたもの」/朝鮮半島の日本統治/崔書勉と朴正熙大統領/統一教会と国際勝共連合/天皇制と日本国憲法/三島由紀夫の死とナショナリズムへの傾斜/「祭祀王」としての天皇/立憲君主体制下の天皇/三島由紀夫『文化防衛論』/村松剛の『文化防衛論』理解

第19章 右派リベラリストたち
日本まほろばの会/作曲家黛敏郎/石原慎太郎と青嵐会/山崎正和とサントリー文化財団/元号法制化実現国民会議と日本を守る国民会議/議会制民主主義社会における憲法改正/国際日本文化研究センター/『新編日本史』の刊行/戸塚ヨットスクールの支援/筑波大学教員住宅放火事件

第20章 湾岸戦争
文学者の反戦声明/中東地域研究者の見解/村松剛の主張/村松剛の認識枠組と人権に関する考え方

第21章 ポスト冷戦時代
ソ連崩壊直前の南アフリカ共和国/アフリカ情勢に対する基本認識/「テロリスト」としてのマンデラ/反植民地主義か反共産主義か/東西冷戦構造という認識枠組/ポスト冷戦時代の世界/杏林大学への移籍と発病/保守論壇の世代交代と歴史論争/早すぎる死/日本会議の発足

終章 極東ロシアへの人道支援
大国の軍事介入に関する考え方/晩年のシベリア訪問


あとがき
主要参考文献
年譜
人名索引

書評掲載

「日本経済新聞」(2023年05月27日付)に紹介されました。

「週刊金曜日」(1426号、2023年06月02日発行/四方田犬彦氏・評)に紹介されました。

「週刊読書人」(2023年06月23日号/先崎彰容氏・評)に紹介されました。

「産経新聞」(2023年07月09日付/竹内洋氏・評)に紹介されました。

「みすず書房 読書アンケート 2023: 識者が選んだ、この一年の本」(2024年02月16日発行/酒井哲哉氏・評)に紹介されました。