感染症と戦争の危機、蔓延する暴力、宗教とジェンダーの抑圧構造、主権者無視の政治……。社会と文化のますますの貧困化のなかで誰もが疲弊し、傷つき、無力感を強いられる世界。この時代の根本問題を撃ち、私たちの明日を祝福できるための言葉はいま、どこにあるのか? 元首相銃撃事件論からハラスメント問題まで、第一線の書き手たちが批評と文学の対抗力を蘇らせる、充実の第3号!
杉田 俊介(スギタ シュンスケ)
杉田 俊介 1975年神奈川生。批評家。『宮崎駿論』(NHKブックス)、『ジョジョ論』『戦争と虚構』(作品社)、『無能力批評』『ジャパニメーションの成熟と喪失』(大月書店)、『橋川文三とその浪曼』(河出書房新社)、『神と革命の文芸批評』(法政大学出版局)ほか。
櫻井 信栄(サクライ ノブヒデ)
櫻井 信栄 1974年神奈川生。日本文学研究者、日本語教師、韓国語翻訳者。小説「吃音小説」(『三田文学』1999年冬季号)、共著『在日コリアン文学と祖国』(建国大学校アジア・ディアスポラ研究所)、論文「金鶴泳文学と民族差別について」(『日本文化学報』64)ほか。
川口 好美(カワグチ ヨシミ)
川口 好美 1987年大阪生。文芸批評。作品「不幸と共存──シモーヌ・ヴェイユ試論」(『群像』2016年12月号、第60回群像新人評論賞優秀作)、「〈内部の人間〉の革命──中野重治再考」(『てんでんこ』第10・11号)ほか。
藤原 侑貴(フジワラ ユウキ)
藤原 侑貴 1989年東京生。作家。法政大学大学院人文科学研究科日本文学専攻修士課程修了。小説「通りゃんせ」(第30回織田作之助青春賞)、「帰郷」(第32回日大文芸賞佳作受賞)、「ビザラン挽歌」(『対抗言論』2号)ほか。
※上記内容は本書刊行時のものです。〖連詩〗 キミが産れるのはつい明日だったか? 【奥間埜乃・川口好美・ 杉田俊介・田中さとみ】
特集1 文学/批評に何ができるか?
〖勉強会〗 川村湊の批評地図を描く──『架橋としての文学』刊行を機に 【康潤伊・櫻井信栄・杉田俊介】
〖インタビュー〗 東アジアと文学の未来のために──川村湊氏に聞く 【聞き手 康潤伊・櫻井信栄】
無力な目撃者──柳美里『8月の果て』における〈恨〉 【康潤伊】
差別への問い (二) 中野重治について 【川口好美】
〖勉強会〗 山城むつみを読む──文芸批評の革命的潜勢力のゆくえ 【川口好美・奥間埜乃・杉田俊介】
〖小説〗 相方になる 【櫻井信栄】
特集2 暴力・宗教・革命をめぐって
噴出する暴力 2019〜2022
感染・暴力・銃──安倍元首相暗殺事件についてのノート 【高原 到】
生き始めるために──隣人、信仰、映画のあいだで 【木村文洋】
まつろわぬ被差別民──『もののけ姫』は神殺しをいかに描いたか 【冨田涼介】
山上徹也の革命……だが…… 【杉田俊介】
〖エッセイ〗 竹中労と沖縄のふたりの唄者 【木村紅美】
特集3 男性支配の重力に抗う
〖インタビュー〗 言葉を取り戻すために──加害と被害、ハラスメント裁判、そして連帯をめぐって 【深沢レナ・安西彩乃・関優花 聞き手 川口好美】
渡部直己の「弟子」としての体験を書き記す 【韻踏み夫】
一元的差別批判への諦め、 あるいは批評のはしたなさについて 【矢野利裕】
渡部直己『子規的病牀批評序説』書評 【杉田俊介】
〖座談会〗 ジェンダー/男性性/文化をめぐって──『新しい声を聞くぼくたち』と新たな批評の可能性 【河野真太郎・ハーン小路恭子・杉田俊介】
〖小説〗 祭りの後 【藤原侑貴】
特集4 フェミニズムと社会批評のいま
トランスジェンダー/フェミニズム/メンズリブ──笙野頼子『発禁小説集』に寄せて 【杉田俊介】
それはフェミニズムのせいではない──バックラッシュに抗う韓国社会 【趙慶喜】
マジョリティーのために 【西村紗知】
ステレオタイプと新聞広告──第三回日経ウーマンエンパワーメント広告賞の一日も早い開催を求む 【蔓葉信博】
〖小説〗 『エセ物語』未発表の遺稿より 《丙申》苦手 【室井光広/解説 川口好美】
特集1 文学/批評に何ができるか?
〖勉強会〗 川村湊の批評地図を描く──『架橋としての文学』刊行を機に 【康潤伊・櫻井信栄・杉田俊介】
〖インタビュー〗 東アジアと文学の未来のために──川村湊氏に聞く 【聞き手 康潤伊・櫻井信栄】
無力な目撃者──柳美里『8月の果て』における〈恨〉 【康潤伊】
差別への問い (二) 中野重治について 【川口好美】
〖勉強会〗 山城むつみを読む──文芸批評の革命的潜勢力のゆくえ 【川口好美・奥間埜乃・杉田俊介】
〖小説〗 相方になる 【櫻井信栄】
特集2 暴力・宗教・革命をめぐって
噴出する暴力 2019〜2022
感染・暴力・銃──安倍元首相暗殺事件についてのノート 【高原 到】
生き始めるために──隣人、信仰、映画のあいだで 【木村文洋】
まつろわぬ被差別民──『もののけ姫』は神殺しをいかに描いたか 【冨田涼介】
山上徹也の革命……だが…… 【杉田俊介】
〖エッセイ〗 竹中労と沖縄のふたりの唄者 【木村紅美】
特集3 男性支配の重力に抗う
〖インタビュー〗 言葉を取り戻すために──加害と被害、ハラスメント裁判、そして連帯をめぐって 【深沢レナ・安西彩乃・関優花 聞き手 川口好美】
渡部直己の「弟子」としての体験を書き記す 【韻踏み夫】
一元的差別批判への諦め、 あるいは批評のはしたなさについて 【矢野利裕】
渡部直己『子規的病牀批評序説』書評 【杉田俊介】
〖座談会〗 ジェンダー/男性性/文化をめぐって──『新しい声を聞くぼくたち』と新たな批評の可能性 【河野真太郎・ハーン小路恭子・杉田俊介】
〖小説〗 祭りの後 【藤原侑貴】
特集4 フェミニズムと社会批評のいま
トランスジェンダー/フェミニズム/メンズリブ──笙野頼子『発禁小説集』に寄せて 【杉田俊介】
それはフェミニズムのせいではない──バックラッシュに抗う韓国社会 【趙慶喜】
マジョリティーのために 【西村紗知】
ステレオタイプと新聞広告──第三回日経ウーマンエンパワーメント広告賞の一日も早い開催を求む 【蔓葉信博】
〖小説〗 『エセ物語』未発表の遺稿より 《丙申》苦手 【室井光広/解説 川口好美】
■執筆者
奥間埜乃(おくま のの)
1975年東京生。詩集『さよなら、ほう、アウルわたしの水』『黯らかな静寂、すべて一滴の光』(書肆山田)、個人冊子「TOWERING CIRCUS NOTES」など。リーディング・パフォーマンス〈ヒガヨン・セラ〉Higgion Selahに参加。
田中さとみ(たなか さとみ)
鳥取生。詩集に『ひとりごとの翁』(2007年、思潮社)、『ノトーリアス グリン ピース』(2020年、思潮社)。2022年より個人誌『Hector』(小鳥書房)主宰。
川村 湊(かわむら みなと)
1950年、北海道生。文芸批評家。法政大学名誉教授。著書『川村湊自撰集』全5巻(作品社)、『異郷の昭和文学』(岩波新書)、『闇の摩多羅神』『狼疾正伝』(河出書房新社)、『ハポネス移民村物語』(インパクト出版会)ほか。
康潤伊(かん ゆに)
1988年東京生。専門は在日朝鮮人文学、日本近現代文学。共編著『わたしもじだいのいちぶです──川崎桜本・ハルモニたちがつづった生活史』(日本評論社)、論文「となりあう承認と排除」(『日本近代文学』101)ほか。
高原 到(たかはら いたる)
1968年生。批評家。2005年に「ケセルの想像力」で第59回群像新人評論賞優秀作。著書『暴力論』(講談社、2020年)。論文「ケダモノ、街を奔る」(『群像』2022年3月号)ほか。
木村文洋(きむら ぶんよう)
1979年青森県弘前市生。映画監督。青森県六ヶ所村再処理工場と、これからの家族の継承を描いた『へばの』(2008年)で初長編監督。その後の監督作に『愛のゆくえ(仮)』(2002年)、『息衝く』(2007年)。
冨田涼介(とみた りょうすけ)
1990年生。批評家。サブカルチャー研究雑誌『F』同人。「叫びと呻きの不協和音 『峰不二子という女』論」(『ユリイカ』2018年3月臨時増刊号)ほか。
木村紅美(きむら くみ)
1976年生。作品に『風化する女』『月食の日』『夜の隅のアトリエ』(文藝春秋)、『黒うさぎたちのソウル』(集英社)、『雪子さんの足音』(講談社)、『まっぷたつの先生』(中央公論新社)、『あなたに安全な人』(河出書房新社。第32回Bunkamuraドゥマゴ文学賞)ほか。
深沢レナ(ふかざわ れな)
詩人。活動家。著書に『痛くないかもしれません。』(七月堂、2017年)、『失われたものたちの国で』(書肆侃侃房、2018年)などがある。2020年「大学のハラスメントを看過しない会」設立。
安西彩乃(あんざい あやの)
自身の作品制作と並行し、2016年よりさまざまな美術作家のアシスタントを務める。現在は映画に傾倒中。
関 優花(せき ゆか)
美術作家。Be with Ayano Anzai代表。横浜国立大学大学院都市イノベーション学府建築都市文化専攻Y-GSC修了。主な展覧会に個展「私をばらばらに説明する」(2020年、ナオナカムラ)。
韻踏み夫(いんふみお)
1994年生。ライター/批評家(ヒップホップ、日本語ラップ)。著書『日本語ラップ名盤100』(イースト・プレス)。連載「耳ヲ貸スベキ──日本語ラップ批評の論点」(文学+WEB版)ほか。
矢野利裕(やの としひろ)
批評家、DJ。文芸批評・音楽批評など。著書『学校するからだ』(晶文社)、『今日よりもマシな明日──文学芸能論』(講談社)、『コミックソングがJ─POPを作った』(P-VINE)、『ジャニーズと日本』(講談社現代新書)ほか。
河野真太郎(こうの しんたろう)
専修大学国際コミュニケーション学部教授。イギリス文学・文化論。著書『戦う姫、働く少女』 (堀之内出版)、 共編著 『終わらないフェミニズム』(研究社)、翻訳にジャット/スナイダー 『20世紀を考える』 (みすず書房) など。
ハーン小路恭子(はーん しょうじ きょうこ)
専修大学国際コミュニケーション学部准教授(アメリカ文学・文化研究。著書『アメリカン・クライシス──危機の時代の物語のかたち』(松柏社、近刊予定)、共訳ソルニット『オーウェルの薔薇』(岩波書店)ほか。
趙慶喜(ちょう きょんひ)
1973年生。聖公会大学東アジア研究所教員。歴史社会学、マイノリティ研究。共著『主権の野蛮──密航・収容所・在日朝鮮人』(ハンウル)、『残余の声を聴く──沖縄・韓国・パレスチナ』(明石書店)ほか。
西村紗知(にしむら さち)
1990年生。批評家 (対象は主に音楽)。「椎名林檎における母性の問題」(『すばる』2021年2月号/第4回すばるクリティーク賞)、「7月のフモレスケ・ノート 「内なる声」に向かって」(『文學界』2022年9月号)ほか。
蔓葉信博(つるば のぶひろ)
1975年生。批評家 (ミステリと広告)。兼業で広告・IT業界勤務。共著 限界研編 『ビジュアル・コミュニケーション』『プレイヤーはどこへ行くのか』 (南雲堂)、 論文 「橋本治と『広告批評』」 (『ユリイカ』 2010年6月号) ほか。
室井光広(むろい みつひろ)
1955〜2019年。福島県南会津生。作家。著書『おどるでく』(芥川賞)、『零の力』『キルケゴールとアンデルセン』(講談社)、『わらしべ集』(深夜叢書社)ほか。2012年からは文芸雑誌『てんでんこ』主宰。
奥間埜乃(おくま のの)
1975年東京生。詩集『さよなら、ほう、アウルわたしの水』『黯らかな静寂、すべて一滴の光』(書肆山田)、個人冊子「TOWERING CIRCUS NOTES」など。リーディング・パフォーマンス〈ヒガヨン・セラ〉Higgion Selahに参加。
田中さとみ(たなか さとみ)
鳥取生。詩集に『ひとりごとの翁』(2007年、思潮社)、『ノトーリアス グリン ピース』(2020年、思潮社)。2022年より個人誌『Hector』(小鳥書房)主宰。
川村 湊(かわむら みなと)
1950年、北海道生。文芸批評家。法政大学名誉教授。著書『川村湊自撰集』全5巻(作品社)、『異郷の昭和文学』(岩波新書)、『闇の摩多羅神』『狼疾正伝』(河出書房新社)、『ハポネス移民村物語』(インパクト出版会)ほか。
康潤伊(かん ゆに)
1988年東京生。専門は在日朝鮮人文学、日本近現代文学。共編著『わたしもじだいのいちぶです──川崎桜本・ハルモニたちがつづった生活史』(日本評論社)、論文「となりあう承認と排除」(『日本近代文学』101)ほか。
高原 到(たかはら いたる)
1968年生。批評家。2005年に「ケセルの想像力」で第59回群像新人評論賞優秀作。著書『暴力論』(講談社、2020年)。論文「ケダモノ、街を奔る」(『群像』2022年3月号)ほか。
木村文洋(きむら ぶんよう)
1979年青森県弘前市生。映画監督。青森県六ヶ所村再処理工場と、これからの家族の継承を描いた『へばの』(2008年)で初長編監督。その後の監督作に『愛のゆくえ(仮)』(2002年)、『息衝く』(2007年)。
冨田涼介(とみた りょうすけ)
1990年生。批評家。サブカルチャー研究雑誌『F』同人。「叫びと呻きの不協和音 『峰不二子という女』論」(『ユリイカ』2018年3月臨時増刊号)ほか。
木村紅美(きむら くみ)
1976年生。作品に『風化する女』『月食の日』『夜の隅のアトリエ』(文藝春秋)、『黒うさぎたちのソウル』(集英社)、『雪子さんの足音』(講談社)、『まっぷたつの先生』(中央公論新社)、『あなたに安全な人』(河出書房新社。第32回Bunkamuraドゥマゴ文学賞)ほか。
深沢レナ(ふかざわ れな)
詩人。活動家。著書に『痛くないかもしれません。』(七月堂、2017年)、『失われたものたちの国で』(書肆侃侃房、2018年)などがある。2020年「大学のハラスメントを看過しない会」設立。
安西彩乃(あんざい あやの)
自身の作品制作と並行し、2016年よりさまざまな美術作家のアシスタントを務める。現在は映画に傾倒中。
関 優花(せき ゆか)
美術作家。Be with Ayano Anzai代表。横浜国立大学大学院都市イノベーション学府建築都市文化専攻Y-GSC修了。主な展覧会に個展「私をばらばらに説明する」(2020年、ナオナカムラ)。
韻踏み夫(いんふみお)
1994年生。ライター/批評家(ヒップホップ、日本語ラップ)。著書『日本語ラップ名盤100』(イースト・プレス)。連載「耳ヲ貸スベキ──日本語ラップ批評の論点」(文学+WEB版)ほか。
矢野利裕(やの としひろ)
批評家、DJ。文芸批評・音楽批評など。著書『学校するからだ』(晶文社)、『今日よりもマシな明日──文学芸能論』(講談社)、『コミックソングがJ─POPを作った』(P-VINE)、『ジャニーズと日本』(講談社現代新書)ほか。
河野真太郎(こうの しんたろう)
専修大学国際コミュニケーション学部教授。イギリス文学・文化論。著書『戦う姫、働く少女』 (堀之内出版)、 共編著 『終わらないフェミニズム』(研究社)、翻訳にジャット/スナイダー 『20世紀を考える』 (みすず書房) など。
ハーン小路恭子(はーん しょうじ きょうこ)
専修大学国際コミュニケーション学部准教授(アメリカ文学・文化研究。著書『アメリカン・クライシス──危機の時代の物語のかたち』(松柏社、近刊予定)、共訳ソルニット『オーウェルの薔薇』(岩波書店)ほか。
趙慶喜(ちょう きょんひ)
1973年生。聖公会大学東アジア研究所教員。歴史社会学、マイノリティ研究。共著『主権の野蛮──密航・収容所・在日朝鮮人』(ハンウル)、『残余の声を聴く──沖縄・韓国・パレスチナ』(明石書店)ほか。
西村紗知(にしむら さち)
1990年生。批評家 (対象は主に音楽)。「椎名林檎における母性の問題」(『すばる』2021年2月号/第4回すばるクリティーク賞)、「7月のフモレスケ・ノート 「内なる声」に向かって」(『文學界』2022年9月号)ほか。
蔓葉信博(つるば のぶひろ)
1975年生。批評家 (ミステリと広告)。兼業で広告・IT業界勤務。共著 限界研編 『ビジュアル・コミュニケーション』『プレイヤーはどこへ行くのか』 (南雲堂)、 論文 「橋本治と『広告批評』」 (『ユリイカ』 2010年6月号) ほか。
室井光広(むろい みつひろ)
1955〜2019年。福島県南会津生。作家。著書『おどるでく』(芥川賞)、『零の力』『キルケゴールとアンデルセン』(講談社)、『わらしべ集』(深夜叢書社)ほか。2012年からは文芸雑誌『てんでんこ』主宰。
書評掲載
「北海道新聞」(2023年02月05日付)に紹介されました。