大正知識人の思想風景
「自我」と「社会」の発見とそのゆくえ
飯田 泰三:著
A5判 / 470ページ / 上製 / 価格 5,830円 (消費税 530円)
ISBN978-4-588-62534-3 C3031 [2017年04月 刊行]
ISBN978-4-588-62534-3 C3031 [2017年04月 刊行]
明治ナショナリズムの解体、すなわちナショナルなエートスの否定と脱政治化の潮流のなか登場した大正知識人の思想とはいかなるものであったか。理想主義・人格主義・文化主義に基づく自我の内面的主体化と、社会主義・進化論に基づく社会の実証的対象化を軸とするかれらの知的営為を、阿部次郎・左右田喜一郎・土田杏村・野村隈畔・中沢臨川・生田長江・長谷川如是閑ら文明批評家の著作をもとに論じる。
飯田 泰三(イイダ タイゾウ)
1943年生。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。法政大学名誉教授、島根県立大学名誉教授。日本政治思想史専攻。著書に『批判精神の航跡──近代日本精神史の一稜線』(筑摩書房、1997年)『戦後精神の光芒──丸山眞男と藤田省三を読むために』(みすず書房、2006年)、編書に『北東アジアの地域交流──古代から現代、そして未来へ』(国際書院、2015年)、共編書に『長谷川如是閑集』(1989-90年)『吉野作造選集』(1995-96年)『丸山眞男集』(1995-2015年)『福澤諭吉書簡集』(2001-03年、以上、岩波書店)『藤田省三著作集』(みすず書房、1997-98年)『丸山眞男講義録』(東京大学出版会、1998-2000年)『転形期における中国と日本──その苦悩と展望』(国際書院、2012年)、監修書に朴忠錫『韓国政治思想史』(法政大学出版局、2016年)ほか。
※上記内容は本書刊行時のものです。まえがき
第一篇 問題の起点と対象の限定
第一章 明治ナショナリズムの解体と大正知識人の成立──問題の起点
一 「大正知識人」のイメージ──「無力なインテリゲンチャ」?
二 同時代者から見た“大正知識人の成立”
三 カテゴリーとしての大正知識人
四 「大正知識人の成立」を政治思想史の問題として取り上げる意義
第二章 文明批評家の成立とその背景
一 「文明批評家」範疇の三つの淵源
二 社会的存在形態としての「文明批評」範疇の成立条件
第二篇 基本動向における分化とその特質
第一章 “レーベン問題”の興起とその対自化における方向分化
一 野村隈畔による三分類(「生命派」「価値派」「体験派」)と「生」の諸相(「人生」「生命」「生活」「生存」)
二 環境からの主体の乖離における“レーベン”の対自化と分化──“実証的対象化”と“内面的主体化”
第二章 基本動向・その一──「生存」の対自化から「社会」の“実証的対象化”へ
一 生物進化論の流布現象と環境イメージ──「生存競争」の社会
二 「社会」の“実証的対象化”志向の成立と進化論的「生存」把握
三 「闘争説」と社会主義
四 「改造論の一年」における「生存競争説」と「相互扶助論」
補説 「社会」の対象化の“前史”(タームの変遷を中心に)
第三章 基本動向・その二──「人生」「生命」の対自化から「自我」の“内面的主体化”へ
一 “内面的”「自我」の成立と「時代閉塞」
二 “解体”と「教養派」知識人
三 「解放」と“主体化”の可能性
第三篇 人格主義・文化主義による文明批評
第一章 認識論的個人主義および人格主義・文化主義
一 認識論的個人主義と「超個人的主観主義」
二 「人格主義者」「文化主義者」たち
第二章 阿部次郎における人格主義と社会
一 「彷徨」から「人格主義」へ
二 「人格」概念と「社会」の三類型
三 「人格的結合」の「教会」と「愛」の原理の問題性
四 「社会改造論」と人格主義──「制度」観の欠如
五 「国家」観と「国家主義」論
六 「民族」の問題
第三章 左右田喜一郎の文化主義と「協同体社会」論
一 論文「文化哲学より観たる社会主義の協同体倫理」における四つの理念型
二 「ゲマインシャフト」と「ゲゼルシャフト」
三 社会主義とカント倫理学
四 「協同体社会」と「人間そのもの」
第四章 土田杏村の文化主義と「共同社会的理念」
一 「共同社会的理念への復帰」と「共利社会」
二 「連合体」と「パアソナル、アナアキイの社会」
三 「マアルブルグ学派の国家観」と「コオルの社会論」
四 「社会主義的理想」と「アナキズム的理想」の「人格自律」論による結合
第四篇 ロマン的自我と文明批評
第一章 “ロマン的融合化”志向の成立と野村隈畔の文化主義批判
一 “ロマン的合一化”志向──基本動向・その三
二 「理知」と「分割」の文化主義から「自由」の「直観」と「愛の生命」の「体験」へ
第二章 中沢臨川の文明批評とロマン的生命共同体
一 「世紀末」的「現代文明」への批判と「生命の本能要求」
二 「新文明の道程」と「新民族主義」──ロマン的な“生命共同体”志向
三 「有機的ソリダリテ」から「精神的ソリダリテ」へ
四 諸「社会主義」批評と「ソリダリテの社会主義」の「神秘」化
補説 生田長江の「超近代派宣言」と室伏高信の「文明の没落」論
第三章 中間小括──大正知識人における“人間主体”観と“社会結合”理念の分極の意義
第五篇 長谷川如是閑の「現代国家批判」──生物進化論的社会観による文明批評
第一章 生物進化論と「現代国家批判」
一 「批判的態度」と「発生論的」な「国家」批判
二 「闘争本能と国家の発生」
第二章 「制度」とその「進化」の哲学
一 「集団」理論と「制度」の哲学
二 制度の既成性と「有機的進化」およびイローニッシュな人間観
第三章 諸「社会改造論」への批評と「労働」論
一 諸「社会主義」批評
二 「労働の芸術化」論および「快楽論的労働観」批判と「労働」の本質論
第四章 如是閑文明批評の特質
一 原「生活」への「還元」と「堯舜の国家」
二 「ヴィコーの歴史回帰説」
三 生物進化論的「生存」把握における問題性と「市民社会」
四 原点としての日常的な「凡愚」の「生活」とその非ロマン主義的性格
五 “アイロニカルなテオリア”と“主体性”
第五章 大正知識人における「文明批評」と政治思想
参考付図
参照した文献
附録1 論文「大正知識人の成立と政治思想──文明批評家の場合を中心に」の要旨
附録2 明治ナショナリズムの解体と「文明批評家」像──長谷川如是閑における「文明批評家」の成立
附録3 大正期文明批評家著作一覧(一九八〇年七月現在で作成)
あとがき
事項索引
人名索引
第一篇 問題の起点と対象の限定
第一章 明治ナショナリズムの解体と大正知識人の成立──問題の起点
一 「大正知識人」のイメージ──「無力なインテリゲンチャ」?
二 同時代者から見た“大正知識人の成立”
三 カテゴリーとしての大正知識人
四 「大正知識人の成立」を政治思想史の問題として取り上げる意義
第二章 文明批評家の成立とその背景
一 「文明批評家」範疇の三つの淵源
二 社会的存在形態としての「文明批評」範疇の成立条件
第二篇 基本動向における分化とその特質
第一章 “レーベン問題”の興起とその対自化における方向分化
一 野村隈畔による三分類(「生命派」「価値派」「体験派」)と「生」の諸相(「人生」「生命」「生活」「生存」)
二 環境からの主体の乖離における“レーベン”の対自化と分化──“実証的対象化”と“内面的主体化”
第二章 基本動向・その一──「生存」の対自化から「社会」の“実証的対象化”へ
一 生物進化論の流布現象と環境イメージ──「生存競争」の社会
二 「社会」の“実証的対象化”志向の成立と進化論的「生存」把握
三 「闘争説」と社会主義
四 「改造論の一年」における「生存競争説」と「相互扶助論」
補説 「社会」の対象化の“前史”(タームの変遷を中心に)
第三章 基本動向・その二──「人生」「生命」の対自化から「自我」の“内面的主体化”へ
一 “内面的”「自我」の成立と「時代閉塞」
二 “解体”と「教養派」知識人
三 「解放」と“主体化”の可能性
第三篇 人格主義・文化主義による文明批評
第一章 認識論的個人主義および人格主義・文化主義
一 認識論的個人主義と「超個人的主観主義」
二 「人格主義者」「文化主義者」たち
第二章 阿部次郎における人格主義と社会
一 「彷徨」から「人格主義」へ
二 「人格」概念と「社会」の三類型
三 「人格的結合」の「教会」と「愛」の原理の問題性
四 「社会改造論」と人格主義──「制度」観の欠如
五 「国家」観と「国家主義」論
六 「民族」の問題
第三章 左右田喜一郎の文化主義と「協同体社会」論
一 論文「文化哲学より観たる社会主義の協同体倫理」における四つの理念型
二 「ゲマインシャフト」と「ゲゼルシャフト」
三 社会主義とカント倫理学
四 「協同体社会」と「人間そのもの」
第四章 土田杏村の文化主義と「共同社会的理念」
一 「共同社会的理念への復帰」と「共利社会」
二 「連合体」と「パアソナル、アナアキイの社会」
三 「マアルブルグ学派の国家観」と「コオルの社会論」
四 「社会主義的理想」と「アナキズム的理想」の「人格自律」論による結合
第四篇 ロマン的自我と文明批評
第一章 “ロマン的融合化”志向の成立と野村隈畔の文化主義批判
一 “ロマン的合一化”志向──基本動向・その三
二 「理知」と「分割」の文化主義から「自由」の「直観」と「愛の生命」の「体験」へ
第二章 中沢臨川の文明批評とロマン的生命共同体
一 「世紀末」的「現代文明」への批判と「生命の本能要求」
二 「新文明の道程」と「新民族主義」──ロマン的な“生命共同体”志向
三 「有機的ソリダリテ」から「精神的ソリダリテ」へ
四 諸「社会主義」批評と「ソリダリテの社会主義」の「神秘」化
補説 生田長江の「超近代派宣言」と室伏高信の「文明の没落」論
第三章 中間小括──大正知識人における“人間主体”観と“社会結合”理念の分極の意義
第五篇 長谷川如是閑の「現代国家批判」──生物進化論的社会観による文明批評
第一章 生物進化論と「現代国家批判」
一 「批判的態度」と「発生論的」な「国家」批判
二 「闘争本能と国家の発生」
第二章 「制度」とその「進化」の哲学
一 「集団」理論と「制度」の哲学
二 制度の既成性と「有機的進化」およびイローニッシュな人間観
第三章 諸「社会改造論」への批評と「労働」論
一 諸「社会主義」批評
二 「労働の芸術化」論および「快楽論的労働観」批判と「労働」の本質論
第四章 如是閑文明批評の特質
一 原「生活」への「還元」と「堯舜の国家」
二 「ヴィコーの歴史回帰説」
三 生物進化論的「生存」把握における問題性と「市民社会」
四 原点としての日常的な「凡愚」の「生活」とその非ロマン主義的性格
五 “アイロニカルなテオリア”と“主体性”
第五章 大正知識人における「文明批評」と政治思想
参考付図
参照した文献
附録1 論文「大正知識人の成立と政治思想──文明批評家の場合を中心に」の要旨
附録2 明治ナショナリズムの解体と「文明批評家」像──長谷川如是閑における「文明批評家」の成立
附録3 大正期文明批評家著作一覧(一九八〇年七月現在で作成)
あとがき
事項索引
人名索引
書評掲載
「出版ニュース」(2017年6月下旬号)にて紹介されました。