生命倫理と公共政策

A5判 / 334ページ / 並製 / 価格 3,300円 (消費税 300円) 
ISBN978-4-588-67523-2 C1036 [2019年07月 刊行]

内容紹介

生命倫理が問われる生殖補助医療、人工妊娠中絶、遺伝医療と再生医療、臓器移植、終末期医療の各テーマをめぐって、これまで国内外で積み重ねられてきた重要な論点を総ざらいし、公共政策の視点から問題の所在を明らかにする。「個人の自由」「共生」「自然性」を理念とする著者独自の政策原則のもと、膨大な先行文献をふまえ、将来への展望を示す斬新な研究・概説書。

著訳者プロフィール

成澤 光(ナルサワ アキラ)

法政大学名誉教授、元国際基督教大学客員教授。日本政治意識史、生命政治論、公共政策論専攻。単著『政治のことば──意味の歴史をめぐって』(講談社学術文庫)、『現代日本の社会秩序──歴史的起源を求めて』(岩波人文書セレクション)。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

用語解説

序 章 生命倫理と政治

【序論】

第1節 倫理的・法的・社会的問題
1 さまざまな倫理観と公共政策
2 医療の不確実性
3 法規制の特徴
4 社会的問題

第2節 生命倫理の関わる政策の理念と原則
1 生命倫理の原則
   アメリカ型/ヨーロッパ型/キリスト教型
2 医(医師/医療)の倫理の原則
3 自律尊重と自己決定権
4 自律尊重とパターナリズム
   「人体実験」批判/家父長制批判/国家からの自由
5 政策の理念と原則
   個人の自由/共生/自然性

第3節 生命倫理関連法案

第4節 生命倫理行政

第5節 臨床研究審査委員会
1 三類型
   臨床研究審査委員会/個別事例審査委員会/治験審査委員会
2 実 態
3 改革案

【第1章 生殖補助医療】

第1節 医療技術の現状
1 自然生殖と人工生殖
2 不妊症について
3 体内授精(人工授精)
4 体外受精
5 ARTのリスク
6 代理懐胎・出産あるいは契約妊娠

第2節 倫理的問題
1 倫理的問題(総論)
2 倫理的問題(各論)
   体内授精(人工授精)/体外受精/代理懐胎
3 施術の対象について

第3節 法的・社会的問題
1 現状概観
   外国の立法/日本の指針
2 現行法による親子関係
   母子関係/父子関係
3 子が遺伝上の親を知る権利
4 出産への社会的圧力
5 社会保険の適用

第4節 政策論
1 日本弁護士連合会の提言
2 総合研究開発機構の試案
3 日本医師会「生殖補助医療の実施に関する法律案 要綱骨子(案)」
4 自民党「特定生殖補助医療に関する法律要綱(案)」
5 政策提言の論点

【第2章 人工妊娠中絶】

第1節 倫理と権利
1 胎児の生命を重視する見解
2 女性の選択権を重視する見解
3 胎児の倫理的地位
4 胎児の法的地位
5 アメリカの中絶規制
6 ヨーロッパ各国の中絶規制
7 社会的問題
   性教育/妊婦への情報提供

第2節 選別的中絶
1 倫理的論点
2 出生前診断
3 受精卵(着床前)診断
4 Wrongful Birth訴訟 Wrongful Life訴訟
5 障害新生児の治療停止

付論 優生思想の問題
1 優生政策史概観
2 個人の優生選択

【第3章 遺伝医療と再生医療】

第1節 遺伝医療
1 遺伝子診断、遺伝子治療
2 遺伝医療、ヒトゲノム研究に対する規制
3 遺伝情報による差別に対する規制
4 クローン胚研究と倫理的・法的問題

第2節 再生医療
1 人体組織の利用
2 倫理的・法的問題
3 幹細胞研究
   現状/倫理的問題と規制

付論 エンハンスメントについて
1 エンハンスメントとは
2 エンハンスメント規制政策

【第4章 臓器移植】

第1節 移植医療の特殊性

第2節 生体臓器移植
1 生体臓器移植の現状
   実施症例数/安全性と評価
2 規制論

第3節 心停止死体からの臓器移植
1 移植の現状
2 規制論

第4節 脳死臓器移植
1 歴史と現状
   移植医療の創設期/和田心臓移植などの移植医療関連事件
   臓器移植法成立(1997)まで/脳死臨調/臓器移植法施行以後
2 死亡判定基準
   三徴候による判定/脳死による判定
3 旧「臓器移植法」の問題点
   臓器移植に関わる規制範囲の限定/脳死は「人」の死か
   本人の意思と家族の意思/子どもからの臓器提供
   家族・知人への提供/売買の禁止
   事故や犯罪による死体からの移植/その他
4 「臓器移植法」改正
   法改正の動き/改正案の要点/
   「家族の承諾」「家族への優生提供」論/
   虐待を受けた子どもへの対応

第5節 臓器移植の政策課題
1 精神的ケア
2 救急医療体制の整備
3 再生医療への期待
4 渡航移植
5 移植医療の医学的効果
6 虐待された子ども対策
7 日本で臓器提供数はなぜ増えないか
8 残る政策課題

【第5章 終末期医療】

第1節 「安楽死」と「尊厳死」

第2節 苦痛緩和
1 身体的苦痛緩和
2 精神的苦痛緩和
3 社会的苦痛緩和
4 スピリチュアルな苦痛緩和

第3節 死への自己決定
1 自殺幇助(PAS)
2 「延命措置」の不開始あるいは中止
   不開始と中止の区別について/本人の意思確認について
   本人の意思が確認できない場合/立法論

第4節 終末期政策論
1 政策の原則論
2 医療費抑制論
3 嘱託死の選択
4 外国の政策例
   オランダ/イギリス、フランス/ドイツ/オーストラリア

第5節 緩和ケア(ホスピス)医療
1 ホスピスの創設
2 日本の緩和ケア
3 緩和ケア拡充論
4 持続的鎮静
   苦痛緩和に関連して
5 権利としての緩和ケア

参考文献
あとがき
人名索引

関連書籍

『生命倫理学』
ディーター・ビルンバッハー:著