P.リクール(リクール ポール)
(Paul Ricœur)
現代フランスを代表する哲学者。1913年フランス南東部ヴァランスに生まれる。35年教授資格試験に合格。マルセル、ヤスパースの実存哲学とフッサールの現象学の影響を同時に受ける。39年第二次世界大戦に動員され、捕虜となって45年まで収容所生活を送るが、その間にフッサールの『イデーンⅠ』を仏訳。48年ストラスブール大学の哲学史講座を担当。50年国家博士号を取得。56年よりパリ・ソルボンヌ大学で教え始め、66年からナンテール校に移る。70年からはシカゴ大学で教えるようになり、英語圏の哲学、神学界でも活躍。意志の問題を現象学的方法で考究しようとして「意志の哲学」の体系を構想し、『意志的なものと非意志的なもの』(50)、『人間 この過ちやすきもの』(60)、『悪のシンボリズム』(60)を発表するが、次第に解釈の問題への関心を深め、『フロイトを読む』(65)を含む数多くの論文を発表。現象学を解釈学として展開する解釈学的現象学の方法によって言語の創造性を探究し、『生きた隠喩』(75)、『時間と物語』(全三巻、83-85)を著す。さらに、「自己の解釈学」を目指した『他者のような自己自身』(90)と、壮大な「歴史的存在の解釈学」の試みとしての『記憶・歴史・忘却』(2000)という、自らの哲学の集大成的な著作を発表。2005年5月死去。
久米 博(クメ ヒロシ)
1932年生まれ。57年、東京大学文学部卒業。62年、東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程満期退学。67年、ストラスブール大学プロテスタント神学部大学院修了。同大学宗教学博士。95年より立正大学教授。著書に『象徴の解釈学』『キリスト教 その思想と歴史』『現代フランス哲学』『テクスト世界の解釈学』(新曜社)、『夢の解釈学』(北斗出版)、『隠喩論』(思潮社)ほか、訳書にリクール『他者のような自己自身』(法政大学出版局)、『フロイトを読む』『時間と物語ⅠⅡⅢ』『記憶・歴史・忘却』(新曜社)、『生きた隠喩』(岩波書店)、『リクール聖書解釈学』(ヨルダン社)、『解釈の革新』(共訳、白水社)、エリアーデ『宗教学概論1-3』(せりか書房)ほか。
越門 勝彦(コエモン カツヒコ)
1973年奈良県生まれ。2006年、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)学位取得。現在、宮城学院女子大学学芸学部准教授。著書に『省みることの哲学──ジャン・ナベール研究』(東信堂)、共著に『哲学の歴史 第12巻 実存・構造・他者』(中央公論新社)、『哲学への誘い 哲学の立ち位置』(東信堂)ほか。
※上記内容は本書刊行時のものです。第一部 研究
道徳から倫理的なものへ、そして諸倫理へ
正義と真理
自律と傷つきやすさ
権威の逆説
翻訳という範型
第二部 読解
オットフリート・ヘッフェ『法の諸原理』
マックス・ウェーバー社会学の基本的カテゴリー
ピエール・ブーレツの『世界の約束──マックス・ウェーバーの哲学』
アントワーヌ・ガラポンの『約束の番人』
根源的なものと歴史的なもの
──チャールズ・テイラーの『自我の源泉』についてのノート
第三部 実践
正常なものと病理的なものとの違い──敬意の源泉としての
医療判断の三つのレベル
医療行為と裁判行為における決定
正義と復讐
普遍的なものと歴史的なもの
エピローグ
証人喚問 統治不全
訳注
訳者あとがき
人名索引
P.リクール著/久米博訳『他者のような自己自身』
P.リクール著/川崎惣一訳『承認の行程』