叢書・ウニベルシタス 1085
メシア的時間
歴史の時間と生きられた時間

四六判 / 330ページ / 上製 / 価格 4,070円 (消費税 370円) 
ISBN978-4-588-01085-9 C1310 [2018年10月 刊行]

内容紹介

到来と期待、失望と忍耐のあいだで反復される人間の生。ユダヤ的伝統の記憶と、近現代の世俗化した歴史哲学との出会いから生まれた〈メシア的なもの〉の本質とはなにか? ヘーゲル、シェリングの観念論から、マルクスそしてモーゼス・ヘスをへてローゼンツヴァイク、ベンヤミンにいたる時間の経験を再考し、進歩主義やユートピアをめぐる宗教の手前にある、われわれの明日の現実を照らし出す。

著訳者プロフィール

ジェラール・ベンスーサン(ベンスーサン ジェラール)

(Gérard Bensussan)
1948年生。ストラスブール大学名誉教授。専門はドイツ観念論およびユダヤ思想。ヘス、マルクス、シェリング、ローゼンツヴァイク、レヴィナスらについての多数の著書・翻訳で知られる。おもな著作に『モーゼス・ヘス、哲学、社会主義──1836–1845』(PUF, 1985)、『ユダヤ人問題』(Éd. Osiris, 1988)、『フランツ・ローゼンツヴァイク──実存と哲学』(PUF, 2000)、『ユダヤ哲学とはなにか』(Desclée de Brouwer, 2004)、『出て行く者マルクス──過度の思想』(Hermann, 2007)、『倫理と経験──政治的レヴィナス』(Éd. de la Phocide, 2008)、『世界の形態のなかで──フランツ・ローゼンツヴァイクについて』(Hermann, 2009)、『シェリングの『世界年代』──絶対的なものの翻訳』(Vrin, 2015)がある。

渡名喜 庸哲(トナキ ヨウテツ)

1980年生。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。パリ第7大学社会科学部博士課程修了。博士(政治哲学)。慶應義塾大学商学部准教授。フランス哲学、社会思想史。共著にArrachement et évasion: Levinas et Arendt face à l'histoire(Vrin, 2013)、訳書にナンシー『フクシマの後で』(以文社)、ブーレッツ『20世紀ユダヤ思想家』1・2・3巻(共訳、みすず書房)、デリダ『最後のユダヤ人』(未來社)、『レヴィナス著作集1・2・3』(共訳、法政大学出版局)ほか。

藤岡 俊博(フジオカ トシヒロ)

1979年生。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。滋賀大学経済学部准教授。フランス哲学、ヨーロッパ思想史。著書に『レヴィナスと「場所」の倫理』(東京大学出版会)、訳書にブーレッツ『20世紀ユダヤ思想家』1・2巻(共訳、みすず書房)、カイエ『功利的理性批判』(以文社)、『レヴィナス著作集1・2・3』(共訳、法政大学出版局)ほか。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに 歴史の時間と主体の時間

第一章 フィールド──メシアニズムと近代
 世俗化
 近代哲学のメシア的構造
 歴史的知のメシア的脱呪術化

第二章 問い──メシアニズムと哲学
 形而上学と時間表象
 ヘブライズムとヘレニズム
 ユダヤ・メシアニズム
 預言的記憶と預言的忘却

第三章 時代のなかの歴史と政治
 ヘーゲル、シェリング──国家と政治
 理性の神話学と否定的ユートピア
 内的歴史と外的歴史

第四章 忍耐と希望
 待望と忍耐
 時間的な決断
 期待とノスタルジー
 善の思い出
 ツァラトゥストラは期待するか

第五章 《義なるもの》の隔たり
 律法、隔たり、残りのもの
 法と善意
 正義と恩寵
 無と同一性──律法と業

エピローグ メシア的言葉

原 注
訳 注
訳者あとがき
人名索引

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