叢書・ウニベルシタス 1119
ダーウィン以後の美学
芸術の起源と機能の複合性

四六判 / 302ページ / 上製 / 価格 3,960円 (消費税 360円) 
ISBN978-4-588-01119-1 C1310 [2020年07月 刊行]

内容紹介

何のための芸術か?──メニングハウスの問いは、ダーウィンの進化論美学へと行き着いた。近代的制度としての芸術および芸術家が生まれるはるか以前、太古の昔に人間の技芸はいかなる機能を担っていたのか。ダーウィンが性淘汰を理論化した大著『人間の由来』の精読を通じて、美の感覚についての進化論的仮説とカントらが論じた哲学的美学を架橋する。著者による全面的な改訂がほどこされた決定版。

著訳者プロフィール

ヴィンフリート・メニングハウス(メニングハウス ヴィンフリート)

(Winfried Menninghaus)
1952年生まれ。マールブルク、フランクフルト、ハイデルベルクでドイツ文学、哲学、政治学を学ぶ。『無限の二重化』で大学教授資格を取得し、1989年冬学期よりベルリン自由大学一般文芸・比較文学科の正教授。1994年よりイェール大学ほかアメリカ、フランスの大学でも客員教授を務め、2012年には『美の約束』でイタリア美学会国際美学賞を受賞。2013年よりフランクフルトのマックス・プランク経験美学研究所所長。日本語訳に『無限の二重化──ロマン主義・ベンヤミン・デリダにおける絶対的自己反省理論』(法政大学出版局)、『敷居学──ベンヤミンの神話のパサージュ』(現代思潮新社)、『吐き気──ある強烈な感覚の理論と歴史』(法政大学出版局)、『美の約束』(現代思潮新社)、『生のなかば──ヘルダーリン詩学にまつわる試論』(月曜社)がある。

伊藤 秀一(イトウ シュウイチ)

1955年生まれ。東北大学大学院文学研究科(独語独文学専攻)博士後期課程満期退学。長崎大学講師・助教授を経て、2000年より中央大学経済学部教授。翻訳書にメニングハウス『無限の二重化』『敷居学』『美の約束』のほか、ホーン『ロマンを生きた女たち』(現代思潮新社)、ブルーメンベルク『世界の読解可能性』(共訳、法政大学出版局)がある。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 説
 人間の技芸の進化の転用説

第一章 競争的な求愛と美的判断/選り好み──ダーウィンの技芸モデル

 一 「美の感覚」──美的長所と美的判断についてのダーウィンの全般的な仮定

 二 ダーウィンの視覚美学──身体「装飾」の理論から人間の視覚芸術へ
  二・一 人間の外観の第一装飾としての裸出した肌
  二・二 人間の自己彩色、自己装飾、自己形成(変形)の技芸
  二・三 見えないものを見る──裸出した肌から美的想像へ

 三 ダーウィンの音楽と修辞の理論
  三・一 性的「歌手」としての鳥類、哺乳類、人間
  三・二 音楽に喚起された感情についてのダーウィンの理論
  三・三 言語、修辞、文学における性的原始音楽の遺産

 四 クジャク/鳴禽類と人間の芸術家──比較の功績と限界

第二章 社会的な協力と結束の推進者としての芸術

 一 高コストで競争的な信号としての芸術、そして「マザリーズ」仮説

 二 選好された同盟相手に「求愛する」高コストな実践としての芸術的な複合媒体パフォーマンス

 三 集団内の協力/結束を推進するものとしての共同音楽制作と複合媒体パフォーマンス

 四 技芸の競争的効果と協力的効果の複合的混合

第三章 個体系統的自己形成(自己変形)としての技芸との取り組み

第四章 人間の技芸の進化の転用モデル──「美の感覚」、遊戯行動、テクノロジー、そしてシンボル認知が力を合わせるとき

 一 美の感覚

 二 性的求愛、遊戯、そして技芸

 三 テクノロジーと技芸

 四 シンボル認知/言語と芸術
  四・一 ここと今を超越する──想像力と物語性
  四・二 曖昧性と不確定性への寛容と適性
  四・三 欺瞞と自己妄想のリスクとポテンシャル

 五 相互作用する四つの転用適用

  訳 注
  訳者あとがき
  書 誌

書評掲載

「アートコレクターズ」(2020年10月号)に紹介されました。

『図書新聞』(2021年1月16日号/田中均氏・評)で紹介されました。

関連書籍

『無限の二重化 〈新装版〉』
ヴィンフリート・メニングハウス:著
『吐き気』
ヴィンフリート・メニングハウス:著
『ダーウィンの珊瑚』
H.ブレーデカンプ:著
『カオス・領土・芸術』
エリザベス・グロス:著