叢書・ウニベルシタス 1120
アウグストゥス
虚像と実像

四六判 / 596ページ / 上製 / 価格 6,930円 (消費税 630円) 
ISBN978-4-588-01120-7 C1022 [2020年08月 刊行]

内容紹介

ローマ史に燦然と名を残す皇帝アウグストゥス。カエサルの跡を継ぎ、対立する有力政治家や元老院の貴族勢力を抑え、やがて神的な至上権を握るまでにいたった毀誉褒貶の独裁者は、実のところいかなる人物であったのか? その政治手法やPR術に注目しつつ、青年オクタウィアヌスが自らを神話化していった行程をつぶさにあとづけ、帝政時代の礎がいかに築かれたのかを分析する歴史学の労作。英国の碩学レヴィックの初の邦訳。

著訳者プロフィール

バーバラ・レヴィック(レヴィック バーバラ)

(Barbara Levick)
古代ローマ共和政末期と帝政初期を専門とする歴史学者。オックスフォード大学セント・ヒルダズ・カレッジ名誉フェロー。同大セント・ヒューズ・カレッジ出身。R.サイムを指導教官に博士号を取得後,セント・ヒルダズ・カレッジにて長年教鞭をとる(1959–1998)。数々の歴史学者を育成すると同時に,第一線の研究者として論文・著書も多数ある。『政治家ティベリウス』(1976)と『クラウディウス』(1990)は特に有名で,またローマ帝政期に政治の中枢にいた女性についての研究では『ユリア・ドムナ』(2007)と『ファウスティナ I & II』(2014)を著す(いずれも未邦訳)。最近の著書には『カティリーナ』(2015)がある。2度の来日経験があり,日本人研究者との親交も深い親日家である。

マクリン富佐(フサ マクリン)

フリーランス翻訳者。著者に師事した夫の影響で古代ローマ史に関心を持つ。オックスフォード在住。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

日本語版への謝辞
地図・図版一覧
謝 辞
出版社謝辞
略年表
アウグストゥスの家系図
地 図

序論 謎

 共和政ローマ
 家柄と青年時代──オクタウィウスからオクタウィアヌスへ
 アウグストゥスをどう見るか
 歴史のなかの個人
 謎
 現代人から見た評価
 プロパガンダとイデオロギー
 近年のアウグストゥス研究の展開
 現存する史料

第一章 オクタウィアヌス──独裁者の跡継ぎ

 政界デビュー
 第二回三頭政治
 マルクス・アントニウスの失脚
 問題多き戦後
 補遺 三頭政治の更新と終結

第二章 政治家アウグストゥスの進化

 平時の回復?
 前二八〜二七年の政治合意
 政治合意の失敗
 前二四〜二三年のアウグストゥスの危機
 暫定的な政治合意──前二三〜一九年
 前一九年の政治合意
 最後の一〇年──独裁政
 補遺 カエピオとムレナの「陰謀」事件の経緯と首謀者

第三章 元首の統治術と人々の幸福度

 カエサル信仰
 約束と実行──財政、政治家としての出世、政治上の友人たち
 司法制度
 社会立法と人々の幸福度
 アウグストゥスの声
 階級操作──元老院
 親族・友人ネットワークの拡大
 元首に扶養された元老院議員
 騎士階級の登用
 平民、街区長、元首
 人々の幸福度
 道徳と宗教

第四章 反対派と不満分子

 「反アウグストゥス派」はいたか?
 十人十色の主観
 国制における方策
 政治ボイコット
 口は災いのもと
 反 逆
 倦怠期──「二期目」
 アウグストゥスの同僚、アグリッパ
 世継ぎ問題
 後継者争いの中での中傷と侮辱
 平民
 軍隊の脅し
 結 論

第五章 君主の自己PR

 人間と神
 芝居と政治
 アウグストゥスの言語パフォーマンス
 硬 貨
 建物の修復と新築
 アポロン神殿、ニコポリス、アウグストゥス霊廟、平和の祭壇、子午線
 マルス・ウルトル神殿
 時の支配者
 自 伝
 業績録
 葬 儀

第六章 芸術と文学の中のアウグストゥス

 黄金時代?
 洗練された教養人だった元首
 芸術と建築
 彫像──プリマ・ポルタのアウグストゥス
 芸術と文学の関連
 プロパガンダ、イデオロギー、パトロネジ
 ウェルギリウスと文芸後援の限界
 抒情詩、哀歌、自由の限界
 陰謀詩人?
 パワフルな預言者詩人
 文学の影響力の減退
 言論の自由──歴史と政治
 検 閲

第七章 神という仮面

 現人神アウグストゥス
 アウグストゥス礼拝の存続
 模範としてのアウグストゥス
 欠陥モデル
 歴史のなかでのアウグストゥス評価
 水面下の動き
 仮面の下
 器用さと曖昧さ
 アウグストゥスの信条

訳者あとがき
原 注
文献一覧
略語一覧
古代用語集
事項索引
人名・神名索引
民族名・地名・建物名索引

書評掲載

「毎日新聞」(2020年10月10日付/本村凌二氏・評)に紹介されました。

「毎日新聞」<2020 この3冊 下>(2020年12月19日付/本村凌二氏・評)に紹介されました。