叢書・ウニベルシタス 1137
パスカルと聖アウグスティヌス 上・下
ISBN978-4-588-01137-5 C1310 [2021年11月 刊行]
フィリップ・セリエ(セリエ フィリップ)
(Philippe Sellier)
1931年生まれ。著名な研究者が輩出したティエール財団の給費生、CNRS(国立科学研究センター)研究員を経て、パリ第四大学(ソルボンヌ)教授。現在同大学名誉教授。
主要著作としては、本書の他に以下の書がある。Pascal et la liturgie(『パスカルと典礼』)、Le mythe du héros ou le désir d’être Dieu(『英雄神話あるいは神たらんとの欲望』)、Histoire de la littérature française(『フランス文学史』)、Jésus-Christ dans la littérature française(『フランス文学におけるイエス・キリスト』)、La Bible de Port-Royal(『ポール・ロワイヤルの聖書』)、Les Moralistes français du XVIIe siècle(『十七世紀フランスのモラリスト』)、Port-Royal et la littérature(『ポール・ロワイヤルと文学』)、La Bible expliquée à ceux qui ne l’ont pas encore lue(邦訳『聖書入門』講談社、2016年)、La Bible. Aux sources de la culture occidentale (『聖書──西洋文明の源泉へ』)。
道躰 滋穂子(ドウタイ シホコ)
1945年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程哲学専攻単位取得退学。早稲田大学、清泉女子大学講師を経て桜美林大学教授。現在、桜美林大学名誉教授。著書:『パスカルの宗教哲学』(知泉書館)。『哲学のエチュード』(水声社)。『真理への旅─新・基礎の哲学』(共著、北樹出版)。訳書:ジャン・ミール『パスカルと神学』(晃洋書房)。リチャード・ロウル『愛の火』(上智大学中世思想研究所編「中世思想原典集成 17」平凡社)。ロバート・ウィルケン『ローマ人が見たキリスト教』(共訳、ヨルダン社)。
※上記内容は本書刊行時のものです。緒 言
序 章
第一章 世界の「薄明(明─暗)」
Ⅰ 世界の暗夜的流動性
1 宇宙的流動
2 死の思想
3 眩暈と失墜
4 無常性
5 愚、夢、錯乱
6 安息への強い思い
Ⅱ 我々の認識の不確実性
1 懐疑論の価値
2 アウグスティヌスと懐疑主義
3 パスカルの《相反》
Ⅲ 神は現存するか
1 神に関する混乱した意識
2 まずは信じること
3 アウグスティヌスの証明
4 パスカルにおける証明の諸断章
5 プラトン主義者たちの歴史的事例
6 諸証明の心理学的無効性
7 諸証明の宗教上の無価値
Ⅳ 霊魂の神秘
1 魂と身体
2 霊魂の起源
3 霊魂の不死
Ⅴ 最高善福と真の道徳についての無知
1 真理と幸福
2 《万人が幸福になることを追い求めている》
3 プラトンとエピクテトス
4 哲学者たちの見解の相違
5 理性にとっての道徳確立の不可能性
6 聖アウグスティヌスにおける自然法と道徳的曇化
7 パスカルにおける自然法と道徳的曇化
⒜ 『プロヴァンシアル』
⒝ 『パンセ』
結 論
第二章 悪しき心の支配
Ⅰ 魂の機能
1 認 識
2 上位の感情性
3 心
⒜ 聖書における「心」
⒝ 聖アウグスティヌスにおける「心」
⒞ パスカルにおける「心」
Ⅱ 強欲の絶対的な力
1 二つの愛
⒜ 神か、或いは被造物か
⒝ 己自身を愛すべきか
⒞ 他者への愛 ⒟ 他の被造物への愛
2 罪
⒜ 《uti(受用する)》と《frui(享受する)》
⒝ 愛 着
⒞ 離反、転向、気晴らし
3 邪欲の普遍性
4 三つの邪欲
⒜ 肉的逸楽
⒝ 好奇心
⒞ 高 慢
⒟ 邪欲の体系
Ⅲ 政治、若しくは「邪欲の秩序」
1 アウグスティヌスの悲観主義
2 パスカルによる悪しき国
3 パスカルによるキリスト者と国家
結 論
第三章 至高の恩寵
Ⅰ キリストの恩寵の必要性──原罪
1 聖アウグスティヌスにおける経験と原罪
2 パスカルと人間の二つの状態
3 無辜の状態
⒜ 無辜の自然本性の美しさ
⒝ アダムの恩寵
⒞ 功徳予見による救霊予定
4 失 墜
⒜ 過 失
⒝ 最初の自然本性の破壊
⒞ 神秘的遺伝
5 《滅びの群れ》
Ⅱ キリストの恩寵の分配
1 神の正義と遺棄
⒜ 異教徒たちの徳
⒝ 無知の罪
2 神の憐憫と選別
⒜ 神における救済の意志
⒝ 《我々は恩寵が万人に与えられるわけではないことを知っている》
⒞ 堅忍の神秘
3 キリストの恩寵
⒜ 新たな恩寵
⒝ イエス・キリストは万人のために死に給うたのか
⒞ イエス・キリストはすべての中心である
Ⅲ キリストの恩寵の全能
1 《相反する二つの誤謬》
⒜ 宗教改革
⒝ モリナ主義
2 ペラギウス主義的傾向を無きものにすること
⒜ ペラギウス主義
⒝ 半ペラギウス主義
⒞ アウグスティヌス──カトリック信仰の守護者
3 薬効的恩寵
⒜ 常存的恩寵と助力の恩寵
⒝ 知解の恩寵、意志の恩寵
⒞ 《文字は殺し、「霊」は活かす》
信仰と業
秘 蹟
教 会
4 二つの愉楽
5 パスカルにおける恩寵と自由意志
⒜ 神の全能と人間の抵抗
⒝ 《過つことなく》
⒞ 恩寵、功徳、祈り
結 論
恩寵、抒情的主題
《下巻》
第四章 透過性の到来
Ⅰ 創造の透過性
1 物理的宇宙
2 諸々の出来事
3 聖性
Ⅱ 聖書の深遠さ
1 霊的意味の存在証明
⒜ アウグスティヌスの草案
⒝ パスカルの論証
2 霊的意味の存在理由
⒜ アウグスティヌスの回答
⒝ パスカルの回答
3 聖書注解の方法
⒜ 第一原理
⒝ 第二原理
⒞ 第三原理
⒟ 第四原理
4 透過性、恩寵の効果
結 論
第五章 歴史神学
Ⅰ 時間の神秘
1 歴史の時間の両義性
2 三つの期間
3 世界の六つの時代
Ⅱ 歴史と人間の進歩
1 科学
2 道徳的宗教的意識
⒜ キリスト以前
⒝ キリストと「教会」の時代
Ⅲ 聖人たちの共同体の発展
1 神、歴史の主
2 二つの国
Ⅳ キリスト者の期待
結 論
第六章 イスラエルの神秘
Ⅰ 歴史的超越性
1 《ユダヤ民族の古さ》
2 一神論の非妥協性
3 ユダヤ教の「律法」の偉大さ
4 兄弟たちからなる民族
5 「メシア」の告知
6 試練と神の助け
7 イスラエルの救済の問題
Ⅱ 護教論的使命
1 肉的民族の選び
2 胡乱ではない証言
⒜ この暗闇の人々によって担われた諸書の純粋性
⒝ ユダヤ人はキリスト者の敵なり
⒞ この民の己の諸書への配慮
⒟ 予言された戦慄すべき悲惨
⒠ この証人たちは至る所に存在する
⒡ この証人たちは常に存在する
Ⅲ 神学の一範疇としての《ユダヤ人的なるもの》
1 「神殺し」という非難
2 ユダヤ教と救霊予定
3 聖人たち
4 民 衆
結 論
第七章 神学と護教論
Ⅰ 普遍的諸原理
1 隠れた神
2 真理と聖愛──意志の役割
3 権威と理性──精神の役割
⒜ アウグスティヌスにおける信仰と理性
⒝ パスカルにおける《理性の服従と利用》
⒞ 心の認識活動
4 強制か自由か──身体の役割
⒜ アウグスティヌス或いは強制の効用
⒝ パスカルと自由
⒞ パスカルにおける身体の役割
5 修辞学と信仰の提示
⒜ アウグスティヌスの修辞学
⒝ 『キリスト教の教え』の読者パスカル
⒞ アウグスティヌスの文体、パスカルの文体
Ⅱ キリスト教の仮説から確実性へ
1 キリスト教の諸仮説の魅力
2 偉大な諸証拠
3 預言と前表
4 「教会」
⒜ 《聖性》
⒝ 可視的「教会」の確立
⒞ 永続性
5 奇 蹟
⒜ 奇蹟の定義──アウグスティヌスかトマス・アクィナスか
⒝ アウグスティヌスの残したもの
結 論
結 び
『パスカルと聖アウグスティヌス』解説(道躰滋穂子)
訳者あとがき
パスカルの著作におけるアウグスティヌスの引用一覧
アウグスティヌス著作一覧
参考文献
人名索引
書評掲載
「読書人」(2022年05月13日/塩川徹也氏・評)に紹介されました。