叢書・ウニベルシタス 1137
パスカルと聖アウグスティヌス 上・下

四六判 / 1382ページ / 上製箱入 / 価格 14,850円 (消費税 1,350円) 
ISBN978-4-588-01137-5 C1310 [2021年11月 刊行]

内容紹介

『パンセ』の哲学者の神学的思索が、先人たる教父アウグスティヌスの著作に細部まで大きく依拠していた事実を初めて徹底論証し、パスカル研究を一新した古典的大著(1970年刊)。17世紀の論争的キリスト教世界を背景に、神と宇宙、霊魂と恩寵、理性と道徳、不安と悲惨、異教とユダヤ的なるものなど、聖書的世界の伝統的モチーフや護教論をめぐるパスカル固有の思考の総体を明らかにする。訳者解説付。

著訳者プロフィール

フィリップ・セリエ(セリエ フィリップ)

(Philippe Sellier)
1931年生まれ。著名な研究者が輩出したティエール財団の給費生、CNRS(国立科学研究センター)研究員を経て、パリ第四大学(ソルボンヌ)教授。現在同大学名誉教授。
主要著作としては、本書の他に以下の書がある。Pascal et la liturgie(『パスカルと典礼』)、Le mythe du héros ou le désir d’être Dieu(『英雄神話あるいは神たらんとの欲望』)、Histoire de la littérature française(『フランス文学史』)、Jésus-Christ dans la littérature française(『フランス文学におけるイエス・キリスト』)、La Bible de Port-Royal(『ポール・ロワイヤルの聖書』)、Les Moralistes français du XVIIe siècle(『十七世紀フランスのモラリスト』)、Port-Royal et la littérature(『ポール・ロワイヤルと文学』)、La Bible expliquée à ceux qui ne l’ont pas encore lue(邦訳『聖書入門』講談社、2016年)、La Bible. Aux sources de la culture occidentale (『聖書──西洋文明の源泉へ』)。

道躰 滋穂子(ドウタイ シホコ)

1945年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程哲学専攻単位取得退学。早稲田大学、清泉女子大学講師を経て桜美林大学教授。現在、桜美林大学名誉教授。著書:『パスカルの宗教哲学』(知泉書館)。『哲学のエチュード』(水声社)。『真理への旅─新・基礎の哲学』(共著、北樹出版)。訳書:ジャン・ミール『パスカルと神学』(晃洋書房)。リチャード・ロウル『愛の火』(上智大学中世思想研究所編「中世思想原典集成 17」平凡社)。ロバート・ウィルケン『ローマ人が見たキリスト教』(共訳、ヨルダン社)。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

《上巻》

緒 言
序 章

第一章 世界の「薄明(明─暗)」

Ⅰ 世界の暗夜的流動性
 1 宇宙的流動
 2 死の思想
 3 眩暈と失墜
 4 無常性
 5 愚、夢、錯乱
 6 安息への強い思い

Ⅱ 我々の認識の不確実性
 1 懐疑論の価値
 2 アウグスティヌスと懐疑主義
 3 パスカルの《相反》

Ⅲ 神は現存するか
 1 神に関する混乱した意識
 2 まずは信じること
 3 アウグスティヌスの証明
 4 パスカルにおける証明の諸断章
 5 プラトン主義者たちの歴史的事例
 6 諸証明の心理学的無効性
 7 諸証明の宗教上の無価値

Ⅳ 霊魂の神秘
 1 魂と身体
 2 霊魂の起源
 3 霊魂の不死

Ⅴ 最高善福と真の道徳についての無知
 1 真理と幸福
 2 《万人が幸福になることを追い求めている》
 3 プラトンとエピクテトス
 4 哲学者たちの見解の相違
 5 理性にとっての道徳確立の不可能性
 6 聖アウグスティヌスにおける自然法と道徳的曇化
 7 パスカルにおける自然法と道徳的曇化
  ⒜ 『プロヴァンシアル』
  ⒝ 『パンセ』

結 論

第二章 悪しき心の支配

Ⅰ 魂の機能
 1 認 識
 2 上位の感情性
 3 心
  ⒜ 聖書における「心」
  ⒝ 聖アウグスティヌスにおける「心」
  ⒞ パスカルにおける「心」

Ⅱ 強欲の絶対的な力
 1 二つの愛
  ⒜ 神か、或いは被造物か
  ⒝ 己自身を愛すべきか
  ⒞ 他者への愛  ⒟ 他の被造物への愛
 2 罪
  ⒜ 《uti(受用する)》と《frui(享受する)》
  ⒝ 愛 着
  ⒞ 離反、転向、気晴らし

3 邪欲の普遍性

4 三つの邪欲
  ⒜ 肉的逸楽
  ⒝ 好奇心
  ⒞ 高 慢
  ⒟ 邪欲の体系

Ⅲ 政治、若しくは「邪欲の秩序」
 1 アウグスティヌスの悲観主義
 2 パスカルによる悪しき国
 3 パスカルによるキリスト者と国家

結 論

第三章 至高の恩寵

Ⅰ キリストの恩寵の必要性──原罪
 1 聖アウグスティヌスにおける経験と原罪
 2 パスカルと人間の二つの状態
 3 無辜の状態
  ⒜ 無辜の自然本性の美しさ
  ⒝ アダムの恩寵
  ⒞ 功徳予見による救霊予定
 4 失 墜
  ⒜ 過 失
  ⒝ 最初の自然本性の破壊 
  ⒞ 神秘的遺伝
 5 《滅びの群れ》

Ⅱ キリストの恩寵の分配

 1 神の正義と遺棄
  ⒜ 異教徒たちの徳
  ⒝ 無知の罪
 2 神の憐憫と選別
  ⒜ 神における救済の意志
  ⒝ 《我々は恩寵が万人に与えられるわけではないことを知っている》 
  ⒞ 堅忍の神秘
 3 キリストの恩寵
  ⒜ 新たな恩寵
  ⒝ イエス・キリストは万人のために死に給うたのか
  ⒞ イエス・キリストはすべての中心である

Ⅲ キリストの恩寵の全能

 1 《相反する二つの誤謬》
  ⒜ 宗教改革
  ⒝ モリナ主義
 2 ペラギウス主義的傾向を無きものにすること 
  ⒜ ペラギウス主義
  ⒝ 半ペラギウス主義
  ⒞ アウグスティヌス──カトリック信仰の守護者
 3 薬効的恩寵
  ⒜ 常存的恩寵と助力の恩寵
  ⒝ 知解の恩寵、意志の恩寵
  ⒞ 《文字は殺し、「霊」は活かす》
    信仰と業
    秘 蹟
    教 会
 4 二つの愉楽
 5 パスカルにおける恩寵と自由意志
  ⒜ 神の全能と人間の抵抗
  ⒝ 《過つことなく》
  ⒞ 恩寵、功徳、祈り

結 論
  恩寵、抒情的主題

《下巻》

第四章 透過性の到来

Ⅰ 創造の透過性
 1 物理的宇宙
 2 諸々の出来事
 3 聖性

Ⅱ 聖書の深遠さ
 1 霊的意味の存在証明
  ⒜ アウグスティヌスの草案
  ⒝ パスカルの論証
 2 霊的意味の存在理由
  ⒜ アウグスティヌスの回答
  ⒝ パスカルの回答
 3 聖書注解の方法
  ⒜ 第一原理
  ⒝ 第二原理
  ⒞ 第三原理
  ⒟ 第四原理

4 透過性、恩寵の効果

結 論

第五章 歴史神学

Ⅰ 時間の神秘
 1 歴史の時間の両義性
 2 三つの期間
 3 世界の六つの時代

Ⅱ 歴史と人間の進歩
 1 科学
 2 道徳的宗教的意識
  ⒜ キリスト以前
  ⒝ キリストと「教会」の時代

Ⅲ 聖人たちの共同体の発展
 1 神、歴史の主
 2 二つの国

Ⅳ キリスト者の期待

結 論

第六章 イスラエルの神秘

Ⅰ 歴史的超越性
 1 《ユダヤ民族の古さ》
 2 一神論の非妥協性 
 3 ユダヤ教の「律法」の偉大さ
 4 兄弟たちからなる民族
 5 「メシア」の告知
 6 試練と神の助け 
 7 イスラエルの救済の問題

Ⅱ 護教論的使命
 1 肉的民族の選び
 2 胡乱ではない証言
  ⒜ この暗闇の人々によって担われた諸書の純粋性
  ⒝ ユダヤ人はキリスト者の敵なり
  ⒞ この民の己の諸書への配慮
  ⒟ 予言された戦慄すべき悲惨
  ⒠ この証人たちは至る所に存在する
  ⒡ この証人たちは常に存在する

Ⅲ 神学の一範疇としての《ユダヤ人的なるもの》
 1 「神殺し」という非難
 2 ユダヤ教と救霊予定
 3 聖人たち
 4 民 衆
 結 論

第七章 神学と護教論

Ⅰ 普遍的諸原理 
 1 隠れた神
 2 真理と聖愛──意志の役割
 3 権威と理性──精神の役割
  ⒜ アウグスティヌスにおける信仰と理性
  ⒝ パスカルにおける《理性の服従と利用》
  ⒞ 心の認識活動
 4 強制か自由か──身体の役割
  ⒜ アウグスティヌス或いは強制の効用
  ⒝ パスカルと自由
  ⒞ パスカルにおける身体の役割
 5 修辞学と信仰の提示
  ⒜ アウグスティヌスの修辞学
  ⒝ 『キリスト教の教え』の読者パスカル
  ⒞ アウグスティヌスの文体、パスカルの文体

Ⅱ キリスト教の仮説から確実性へ
 1 キリスト教の諸仮説の魅力
 2 偉大な諸証拠
 3 預言と前表
 4 「教会」
  ⒜ 《聖性》
  ⒝ 可視的「教会」の確立
  ⒞ 永続性
 5 奇 蹟
  ⒜ 奇蹟の定義──アウグスティヌスかトマス・アクィナスか
  ⒝ アウグスティヌスの残したもの
 結 論

結 び

『パスカルと聖アウグスティヌス』解説(道躰滋穂子)

訳者あとがき
パスカルの著作におけるアウグスティヌスの引用一覧
アウグスティヌス著作一覧
参考文献
人名索引

関連書籍

『ポール・ロワイヤル論理学』
アントワーヌ・アルノー:著