田岡嶺雲全集 第四巻
評論及び感想 四

田岡 嶺雲:著, 西田 勝:編・校訂
四六判 / 906ページ / 上製貼箱入 / 価格 18,700円 (消費税 1,700円) 
ISBN978-4-588-11029-0 C1395 [2014年04月 刊行]

内容紹介

本巻は『中国民報』の主筆を辞し、上京して『天鼓』を創刊した1904年11月から、日光で没する五ヶ月前の1912年4月までに発表された評論及び感想を収録。『壺中観』や『霹靂鞭』が発売禁止になるなど、表現の自由を重く拘束される中で、隠喩や逆説、イロニーを多用し、狭義の文芸評論を超えて、人種的・社会的・性的格差のない世界共同体、とりわけ女性の解放をめざした論考が多数含まれる。

著訳者プロフィール

田岡 嶺雲(タオカ レイウン)

1871年、土佐国高知(現・高知県高知市)に生まれる。本名は田岡佐代治。自由民権運動の興隆を受け、1880年代には高知市内の民権結社にも加入していた。1890年、上京し水産伝習所(現在の東京海洋大学水産学部)に入学、後に東京帝国大学文科大学漢文学科選科(現在の東京大学文学部)に転学卒業。大学在学中に評論活動を始め、樋口一葉や泉鏡花の作品を高く評価した。その後、一時期には岡山県津山で学校教師も勤めたが、再び上京してからは新聞各紙の記者、ジャーナリスト兼評論家として、『平民新聞』や『帝国文学』、『太陽』などで執筆を続けた。ときには中国本土にわたり、北清事変の際には現地からルポを送信した。日露戦争後の1905年に刊行した『壺中観』、続刊の『霹靂鞭』が相次いで発禁処分を受け、その頃から権力に反抗する立場から、非戦論・資本主義批判の論調での執筆活動が多くなっていった。1909年には、自由民権運動のなかで起きた秩父事件などの武装決起事件の関係者からの聞き書きを元に『明治叛臣伝』を著した。1910年、大逆事件の容疑で幸徳秋水が湯河原で捕縛されたとき、その場面を目撃した。このころから脊髄を病み、歩行も困難になり、1912年療養地先の日光で世を去った。

西田 勝(ニシダ マサル)

1928年、静岡県に生まれる。1953年、東京大学文学部卒業、法政大学文学部教授を経て、現在〈西田勝・平和研究室〉主宰、植民地文化学会代表。主要著書に『グローカル的思考』『近代日本の戦争と文学』『近代文学の発掘』(以上、法政大学出版局)、『社会としての自分』(オリジン出版センター)、『近代文学閑談』(三一書房)、『私の反核日記』(日本図書センター)、編訳書に『田岡嶺雲全集』(全7巻、刊行中。法政大学出版局)、呂元明『中国語で残された日本文学』、鄭清文『丘蟻一族』(以上、法政大学出版局)、ゴードン・C・べネット『アメリカ非核自治体物語』(筑摩書房)、『世界の平和博物館』(日本図書センター)、『《満洲国》文化細目』(共編、不二出版)、『《満洲国》とは何だったのか』(共編、小学館)などがある。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

近松物に現はれたる心中──不自然なる社會の犧牲
文明と人類の墮落
鏡花の近業
作家ならざる二小說家(夏目漱石と木下尙江)
顯れたる名、隱れたる功(河口慧海と能海寬師)
近代思想の一缺陷
藝術は果して「眞」を要する乎
母乳論の道德的價値
女子解放は男子解放也
無當語
忠孝觀念の前途
韓非子評論
最後の別れを懷ふ(幸德秋水)
自覺しつゝある現代の女と其將來
『史記』の史書としての價値
戀愛は社會進歩の源なり
ほか

編注
解題

書評掲載

「高知新聞」(2014年6月23日付/片岡雅文氏・評)に紹介されました。