『存在と時間』はどう書き継がれるべきか? ハイデガーの思考に拠りつつ、それを超えて哲学に意味を見出すことはいかにして可能か? 日本のハイデガー研究を牽引する著者が、カント、マルクス、アリストテレスの今日的読み直しも含め、言語、世界、死、時間、技術、労働、政治といった問題群に真正面から切り込んだ全16章の探究。「愉しい学問」の実践!
森 一郎(モリ イチロウ)
1962年埼玉県生まれ。東京大学文学部卒業。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了、同博士課程中途退学。東京大学文学部助手、東京女子大学文理学部専任講師、助教授、教授を経て、現在、東北大学大学院情報科学研究科教授。博士(文学)。専攻は近現代ドイツ哲学、現代における哲学の可能性。著書に、『死と誕生──ハイデガー・九鬼周造・アーレント』(東京大学出版会、第21回和辻哲郎文化賞・学術部門受賞)、『死を超えるもの──3・11以後の哲学の可能性』(東京大学出版会)、『世代問題の再燃──ハイデガー、アーレントとともに哲学する』(明石書店)、『現代の危機と哲学』(放送大学教育振興会)、共編著に、『ハイデガー読本』『続・ハイデガー読本』(法政大学出版局)、訳書に、ハイデッガー『ブレーメン講演とフライブルク講演 ハイデッガー全集第79巻』(創文社)、アーレント『活動的生』(みすず書房、第52回日本翻訳文化賞受賞)、ニーチェ『愉しい学問』(講談社学術文庫)、など。
※上記内容は本書刊行時のものです。序
凡 例
第Ⅰ部 自己と世界
第一章 ハイデガーにおける形式的暗示について
一 語り方の問題
二 「解釈学的直観」の生成
三 『存在と時間』における問いの構造とその遂行意味
第二章 死の明証
一 死に関するデモクラシーと、死の管理体制
二 死を飼い馴らすことと、死によって飼い馴らされること
三 死の経験可能性と、死のリアリティー
四 他者の死と、そのひとごとならなさ
五 「我死につつ在る」という語りと、その遂行的明証性
第三章 自発性の回路 『存在と時間』における世界概念の再検討
一 ハイデガーの「世界」概念の問題性
二 「適所を得させること」と「自己を指示しむけること」
三 自発性の回路としての「有意義性」
第四章 感受性と主体 カントの尊敬論から
一 「主体」という問題
二 主体における自己服従の回路
三 感受性と主体──支配と服従の間
第五章 哲学的言説のパフォーマティヴな性格について
一 現象学の方法的アポリア?
二 「ふるまい」としての語り
三 パフォーマンスとしての哲学
四 気分とレトリック
第Ⅱ部 時間とその有意義性
第六章 配慮される時間 ハイデガーの世界時間論
一 世界と時間
二 世界時間という蝶番
三 世界時間のまったき構造
第七章 時計と時間
一 時間が「客観的」に与えられる現場
二 尺度としての時計
三 〈尺度するモノ〉と〈尺度されるモノ〉
四 尺度における反照規定
五 時計と時間
第八章 時間の有意義性について
一 陳腐な教訓か、時間論の根本問題か
二 時間の有意義性の意味するもの
三 有限性と〈死への存在〉
四 限りある〈いのち〉の限りなさ
五 有限性への抵抗と、時間のエコノミー
第九章 技術と生産 ハイデガーからマルクスへ
一 ハイデガーとマルクス?
二 技術への問い
三 集立と資本
四 時間のテクノロジー
五 テクネーはスコレーのために
第Ⅲ部 哲学と政治
第十章 哲学の実存 ハイデガーとアリストテレス
一 実存の哲学と哲学の実存
二 理論と実践の対立の起源へ
三 ソフィアかフロネーシスか
四 観照的生と近代
第十一章 ハイデガーにおける学問と政治 『ドイツの大学の自己主張』再読
一 「ハイデガー問題」とは何であったか
二 『ドイツの大学の自己主張』は何を主張しているか
三 「学問の原初的本質」はどこまで原初的か
四 ハイデガー問題からソクラテス問題へ
第十二章 労働のゆくえ 「ハイデガーからアーレントへ」の途上
一 ハイデガーのマルクス論と労働概念
二 勤労奉仕を奨励する学長
三 労働の擬似存在論
四 労働批判としての「総かり立て体制」論
五 労働者はどこへ?
第十三章 出来事から革命へ ハイデガー、ニーチェ、アーレント
一 始まりの思索者たち
二 反時代的な脱現在化から、近代そのものの批判へ
三 大いなる出来事としての哲学革命
四 新しきものへの自由──将来は原初にやどる
五 『出来事について』から『革命について』へ
第Ⅳ部 哲学の可能性
第十四章 共‑脱現在化と共‑存在時性 ハイデガー解釈の可能性
一 存在者と存在、物と世界
二 『存在と時間』における存在者論
三 「もとでの存在」の問題点と、脱現在化
四 物の「共‑脱現在化」の働き
五 物は何を語るか──『マルテの手記』の一節から
六 本来性と非本来性との絡み合い──渡邊二郎の解釈
七 『存在と時間』における「共‑存在時性」の問題群
八 「隔世代倫理」へ──原爆ドームを手がかりに
九 「反‑存在時性」の爛熟──3・11以後
第十五章 政治に対する哲学する者たちの応答可能性 ハイデガーの事例を手がかりに
一 ある戦中と戦後の間──『注記』拾い読み
二 準備的考察──責任の所在
三 政治に対する哲学する者たちの応答可能性
四 われわれの政治責任
第十六章 『存在と時間』はどう書き継がれるべきか
一 夢を追い続けて
二 では、どのようにして書き継ぐか
三 「前半」はどう終わっていたか
四 二通りの暫定的結論めいたもの
五 「時間性のある本質上の時熟可能性」
六 歴史性と時間内部性の絡み合い
七 四方界の反照‑遊戯
八 共‑存在時性の問題群
あとがき
初出一覧
人名索引
著作名索引
事項索引
凡 例
第Ⅰ部 自己と世界
第一章 ハイデガーにおける形式的暗示について
一 語り方の問題
二 「解釈学的直観」の生成
三 『存在と時間』における問いの構造とその遂行意味
第二章 死の明証
一 死に関するデモクラシーと、死の管理体制
二 死を飼い馴らすことと、死によって飼い馴らされること
三 死の経験可能性と、死のリアリティー
四 他者の死と、そのひとごとならなさ
五 「我死につつ在る」という語りと、その遂行的明証性
第三章 自発性の回路 『存在と時間』における世界概念の再検討
一 ハイデガーの「世界」概念の問題性
二 「適所を得させること」と「自己を指示しむけること」
三 自発性の回路としての「有意義性」
第四章 感受性と主体 カントの尊敬論から
一 「主体」という問題
二 主体における自己服従の回路
三 感受性と主体──支配と服従の間
第五章 哲学的言説のパフォーマティヴな性格について
一 現象学の方法的アポリア?
二 「ふるまい」としての語り
三 パフォーマンスとしての哲学
四 気分とレトリック
第Ⅱ部 時間とその有意義性
第六章 配慮される時間 ハイデガーの世界時間論
一 世界と時間
二 世界時間という蝶番
三 世界時間のまったき構造
第七章 時計と時間
一 時間が「客観的」に与えられる現場
二 尺度としての時計
三 〈尺度するモノ〉と〈尺度されるモノ〉
四 尺度における反照規定
五 時計と時間
第八章 時間の有意義性について
一 陳腐な教訓か、時間論の根本問題か
二 時間の有意義性の意味するもの
三 有限性と〈死への存在〉
四 限りある〈いのち〉の限りなさ
五 有限性への抵抗と、時間のエコノミー
第九章 技術と生産 ハイデガーからマルクスへ
一 ハイデガーとマルクス?
二 技術への問い
三 集立と資本
四 時間のテクノロジー
五 テクネーはスコレーのために
第Ⅲ部 哲学と政治
第十章 哲学の実存 ハイデガーとアリストテレス
一 実存の哲学と哲学の実存
二 理論と実践の対立の起源へ
三 ソフィアかフロネーシスか
四 観照的生と近代
第十一章 ハイデガーにおける学問と政治 『ドイツの大学の自己主張』再読
一 「ハイデガー問題」とは何であったか
二 『ドイツの大学の自己主張』は何を主張しているか
三 「学問の原初的本質」はどこまで原初的か
四 ハイデガー問題からソクラテス問題へ
第十二章 労働のゆくえ 「ハイデガーからアーレントへ」の途上
一 ハイデガーのマルクス論と労働概念
二 勤労奉仕を奨励する学長
三 労働の擬似存在論
四 労働批判としての「総かり立て体制」論
五 労働者はどこへ?
第十三章 出来事から革命へ ハイデガー、ニーチェ、アーレント
一 始まりの思索者たち
二 反時代的な脱現在化から、近代そのものの批判へ
三 大いなる出来事としての哲学革命
四 新しきものへの自由──将来は原初にやどる
五 『出来事について』から『革命について』へ
第Ⅳ部 哲学の可能性
第十四章 共‑脱現在化と共‑存在時性 ハイデガー解釈の可能性
一 存在者と存在、物と世界
二 『存在と時間』における存在者論
三 「もとでの存在」の問題点と、脱現在化
四 物の「共‑脱現在化」の働き
五 物は何を語るか──『マルテの手記』の一節から
六 本来性と非本来性との絡み合い──渡邊二郎の解釈
七 『存在と時間』における「共‑存在時性」の問題群
八 「隔世代倫理」へ──原爆ドームを手がかりに
九 「反‑存在時性」の爛熟──3・11以後
第十五章 政治に対する哲学する者たちの応答可能性 ハイデガーの事例を手がかりに
一 ある戦中と戦後の間──『注記』拾い読み
二 準備的考察──責任の所在
三 政治に対する哲学する者たちの応答可能性
四 われわれの政治責任
第十六章 『存在と時間』はどう書き継がれるべきか
一 夢を追い続けて
二 では、どのようにして書き継ぐか
三 「前半」はどう終わっていたか
四 二通りの暫定的結論めいたもの
五 「時間性のある本質上の時熟可能性」
六 歴史性と時間内部性の絡み合い
七 四方界の反照‑遊戯
八 共‑存在時性の問題群
あとがき
初出一覧
人名索引
著作名索引
事項索引
書評掲載
「読書人」(2018年10月26日号/原大佑木氏・評)に紹介されました。