アーレントとテクノロジーの問い
技術は私たちを幸福にするのか?

四六判 / 288ページ / 並製 / 価格 2,970円 (消費税 270円) 
ISBN978-4-588-13044-1 C1010 [2025年01月 刊行]

内容紹介

情報通信技術や人工知能、生殖医療、そして核エネルギーなどの高度でブラックボックス的なテクノロジーが私たちの日常生活のみならず、政治環境まで変容させ管理するようになった現代。20世紀から今日まで、科学と技術の発展は私たちにどのような抑圧や悪を、あるいは解放や幸福をもたらしてきたか。アーレントの科学技術論を縦軸に、各個別分野の探究を横軸に、14人の執筆者が現代の問題に迫る。

著訳者プロフィール

木村 史人(キムラ フミト)

木村 史人(キムラ フミト)
立正大学文学部哲学科准教授。博士(文学)。著書『「存在の問い」の行方──『存在と時間』は、なぜ挫折せざるをえなかったのか』(北樹出版)、共編著『アーレント読本』(法政大学出版局)、『ハイデガー事典』(昭和堂)。

渡名喜 庸哲(トナキ ヨウテツ)

渡名喜 庸哲(トナキ ヨウテツ)
立教大学文学部教授。博士(パリ第7大学)。著書『レヴィナスの企て』(勁草書房)、『現代フランス哲学』(筑摩書房)、『レヴィナス 顔の向こうに』(青土社)、共編著『カタストロフからの哲学』(以文社)ほか。

戸谷 洋志(トヤ ヒロシ)

戸谷 洋志(トヤ ヒロシ)
立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授。博士(文学)。著書『ハンス・ヨナス 未来への責任』(慶應義塾大学出版会)、『スマートな悪』『生きることは頼ること』(講談社)、『原子力の哲学』『未来倫理』(集英社)ほか。

橋爪 大輝(ハシヅメ タイキ)

橋爪 大輝(ハシヅメ タイキ)
山梨県立大学人間福祉学部准教授。博士(文学)。著書『アーレントの哲学──複数的な人間的生』(みすず書房)、共訳書『メタヒストリー』(作品社)、『ハンナ・アーレント──〈世界への愛〉の物語』(みすず書房)ほか。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに 【木村史人】

第1部 理論編 【introduction 橋爪大輝】

1 アーレントのテクノロジー論 【三浦隆宏】

2 科学技術は「人間」を変容させるか──全体主義と「人間の条件」 【渡名喜庸哲】

3 デジタル時代における「我が手の仕事」再考──触知可能な物と人間の関係 【北野亮太郎】

4 手許にないものとしてのテクノロジー 【木村史人】

《コラム》アーレントと現代日本の原発問題 【宮永三亜】

第2部 応用編 【introduction:木村史人】

5 ポスト・ヒューマニズム時代のアーレント 【百木 漠】

6 科学技術をめぐる市民参加の公共性──アーレントにおける地球疎外論を手がかりに 【戸谷洋志】

7 中絶規制の根拠に関する批判的考察──人間の生の始まりとアーレントの出生性 【奥井 剛】

8 アーレント思想と生殖医療の交錯点──新型出生前診断と優生思想 【大形 綾】

9 アーレントにおける農業技術への問い 【齋藤宜之】

第3部 シンポジウム「テクノロジーは私たちを幸福にするのか」 【introduction:渡名喜庸哲】

10 超スマート社会における人間の幸福──アーレントの思想を手がかりに 【戸谷洋志】

11 スマートな徳──技術と内省について 【堀内進之介】

12 スマートさは「悪の凡庸さ」をもたらすのか 【河合恭平】

13 スマート社会と技術の創造性──技術のスマートさとガジェット性 【村田純一】

おわりに 【橋爪大輝】

事項索引
人名索引

■著者(章順)

三浦 隆宏(ミウラ タカヒロ)
椙山女学園大学人間関係学部准教授。博士(文学)。著書『活動の奇跡──アーレント政治理論と哲学カフェ』(法政大学出版局)、共著『〈悪の凡庸さ〉を問い直す』(大月書店)、『生きる場からの哲学入門』(新泉社)ほか。

北野 亮太郎(キタノ リョウタロウ)
立教大学大学院博士後期課程。論文「アーレントにおける「仕事」の活動力を通した公的領域形成の可能性──モニュメントの実例検討を通して」(『境界を越えて──比較文明学の現在』第24号)ほか。

宮永 三亜(ミヤナガ ミア)
京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程。論文「アーレントの科学技術論──『革命論』における専門家主導の肯定について」(『社会システム研究』第27号)ほか。

百木 漠(モモキ バク)
関西大学法学部准教授。博士(人間・環境学)。著書『アーレントのマルクス』(人文書院)、『嘘と政治』(青土社)、訳書『ハンナ・アーレント、三つの逃亡』(みすず書房)、共訳『アーレントと黒人問題』(人文書院)ほか。

奥井 剛(オクイ ゴウ)
神戸大学人文学研究科特命助教。博士(総合学術)。著書『ハンナ・アーレントの政治哲学の射程──開発という活動の再考に向けて』(春風社)、共著『実践する総合生存学』(京都大学学術出版会)ほか。

大形 綾(オオガタ アヤ)
日本学術振興会特別研究員(RPD)。博士(人間・環境学)。共著『アーレント読本』(法政大学出版局)。共訳書『アーレント=ショーレム往復書簡』(岩波書店)、『アーレントと黒人問題』(人文書院)ほか。

齋藤 宜之(サイトウ ヨシユキ)
中央大学兼任講師。博士(哲学)。共著『3STEPシリーズ5 倫理学』(昭和堂)、『アーレント読本』(法政大学出版局)、論文「農業とはいかなる営為なのか」(『環境倫理』第3号)、共訳:『環境正義』(勁草書房)ほか。

堀内 進之介(ホリウチ シンノスケ)
立教大学特任准教授。博士(社会学)。著書『データ管理は私たちを幸福にするか?』(光文社)・『人工知能時代を〈善く生きる〉技術』(集英社)、『善意という暴力』(幻冬舎)、『知と情意の政治学』(教育評論社)ほか。

河合 恭平(カワイ キョウヘイ)
大正大学准教授。博士(学術)。共著『アーレント読本』(法政大学出版局)、『モビリティーズのまなざし』(丸善出版)、論文「H・アーレントのアメリカ革命論と黒人差別の認識」(『社会思想史研究』第38号)ほか。

村田 純一(ムラタ ジュンイチ)
東京大学名誉教授。著書『知覚と生活世界』(東京大学出版会)、『色彩の哲学』『「わたし」を探険する』(岩波書店)、『技術の倫理学』(丸善出版)、『味わいの現象学』(ぷねうま舎)、『技術の哲学』(講談社学術文庫)ほか。

関連書籍

『アーレント読本』
日本アーレント研究会:編
『技術の道徳化』
ピーター=ポール・フェルベーク:著