叢書・ウニベルシタス 111
大革命前夜のフランス 〈新装版〉
経済と社会

四六判 / 420ページ / 上製 / 価格 4,620円 (消費税 420円) 
ISBN978-4-588-14006-8 C1322 [2015年03月 刊行]

内容紹介

大革命前夜、例えばパリの石工の賃金はどう推移したか、貴族や聖職者の実態はどうか、都市民衆と農民を圧迫する税と特権の数々、乞食や放浪者の世界、ブルジョワジーの実像と思想等々、社会経済構造から心性・願望の領域まで、旧体制を巨細に解剖する。批判的社会史学の方法を明快に示した好入門書。

著訳者プロフィール

A.ソブール(ソブール アルベール)

(Albert Soboul)
1914年生まれ。高等師範学校に学び、38年に教授資格試験に合格している。39年に兵役につくが、翌年6月フランスが敗れたため動員解除となり、モンペリエで高校教授となった。しかし、そのレジスタンス的活動のために42年7月に高校を追われ、以後の2年間はレジスタンス組織の闘士として非合法生活を送る。第2次大戦終了とともにモンペリエの高校教授に返り咲き、45年にはパリのアンリ4世高校に転じた。また50年からは博士論文準備のためフランス国立科学研究所の研究員にもなっている。58年、パリのサン=キュロットに関する論文で博士号を得、クレルモン=フェラン大学の近代史教授となった。他方、57年以来、パリ第1大学でフランス革命史を担当し、また、ロベスピエール研究会会長、『フランス革命史年報』編集責任者を兼任した。1982年没。『フランス革命』『資本主義と農村共同体』などの邦訳がある。

山崎 耕一(ヤマザキ コウイチ)

1950年神奈川県に生まれる。一橋大学社会学部を経て、同大学院博士課程修了。フランス史、社会思想史専攻。武蔵大学人文学部教授、一橋大学社会科学古典資料センター教授を経て、現在、同センター特任教授。著書に『啓蒙運動とフランス革命』(刀水書房、2007年)、共編著に『フランス革命史の現在』(山川出版社、2013年)、訳書にセディヨ『フランス革命の代償』(草思社、1991年)などがある。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

 まえがき
 日本語版への序文
 凡例

序章 旧体制

 第一部 経済構造

第一章 旧体制の経済 伝統的諸構造の存続
一 旧型の農業
1 農業の法的・技術的・社会的諸条件──共同体体制と集団的規制
2 農業の法的・社会的諸条件──領主体制と封建的徴収
3 いわゆる「農業革命」
二 工業生産の旧型組織
1 職人的構造の生産と商業──同業組合体制
2 農村工業
3 「集合」マニュファクチュア
三 大商業
1 商業の飛躍的発達の技術的諸条件
2 国内商業と対外貿易
3 陸上大貿易
4 海上大貿易
四 大工業の開始
1 織物工業
2 冶金工業
3 石炭業

第二章 状況連関の反転 人口と経済の波動
一 人口の動き
1 「十七世紀型人口動態」の終わり
2 十八世紀後半の人口増加
3 人口動態と都市の成長
4 人口動態の変動とその増減対照
二 物価と収入の動き
1 価格の動き
2 地代の動き
3 賃金の動き
4 物価と収入の動きの結果
三 経済の変動、成長、および出発
1 工業の成長
2 対外貿易の成長
3 資本主義経済への移行の道

 第二部 社会構造

第三章 アリストクラート層
一 貴族身分
1 貴族の出自。家門貴族と叙任貴族
2 貴族の構造
二 貴族の経済力
1 貴族の特権
2 俸給、年金および手当て
3 貴族の土地財産
4 貴族の商工業活動
三 アリストクラート層の思想
四 アリストクラート的反動
1 カストの精神
2 貴族の排他主義
3 領主的反動

第四章 聖職者
一 聖職者の身分
1 聖職者の機能
2 教会裁判
3 聖職者の特権
4 聖職禄の授与
二 この身分の資産と財務
1 聖職者の財産
2 聖職者の財務
三 聖職者の構成
1 修道聖職者
2 教区聖職者。上級聖職者
3 教区聖職者。下級聖職者
四 聖職者の伝統と傾向
1 ガリカン教会の自由
2 聖職者の思想

第五章 ブルジョワジー
一 ブルジョワジー──構造の問題
1 法的側面
2 社会的側面
二 金利生活者のブルジョワジー
三 自由業のブルジョワジー
四 職人・小商店主の小ブルジョワジー
1 従属的職人と独立的職人
2 商人的職人と職人的商人
五 実業家ブルジョワジー
1 金融ブルジョワジー
2 交易ブルジョワジー
3 マニュファクチュア・ブルジョワジー
六 ブルジョワジーの思想

第六章 都市の民衆諸階級
一 構造の問題──裸の労務者かプロレタリアかサン=キュロットか
二 民衆の諸カテゴリー
三 民衆の生活条件
1 民衆の生計費
2 賃金の変動
四 労働組織と行政による監視
1 仲間組合
2 法的従属
五 民衆の要求

第七章 農民
一 土地所有の分布
1 農民以外の土地所有
2 農民の土地所有
3 経営の分布
4 土地所有の法的体制
二 農民の生活条件
1 農民の法的条件。農奴と自由農民
2 農民の経済的条件。農民層の社会的グループ
3 乞食と浮浪。放浪者の世界
三 農民の負担。「封建制」
1 封建的諸権利と領主的諸権利。「封建的複合」
2 教会十分の一税
3 封建的徴収
4 国王の税
5 領主的反動
四 農民の心性と願望

結論
一 ブルジョワの繁栄による革命か
二 民衆の貧困による革命か
三 ブルジョワ革命と民衆運動

 訳注
 訳者あとがき
 参考文献

関連書籍

『ジャン = ジャック・ルソー』
B.グレトゥイゼン:著
『ロベスピエールの影』
P.ガスカール:著
『フランス革命論』
J.G.フィヒテ:著
『マルクスとフランス革命』
フランソワ・フュレ:著
『パリの断頭台 〈新装版〉』
バーバラ・レヴィ:著