叢書・ウニベルシタス 61
宗教とエロス 〈新装版〉

四六判 / 396ページ / 上製 / 価格 4,180円 (消費税 380円) 
ISBN978-4-588-14007-5 C1310 [2015年03月 刊行]

内容紹介

宗教の諸形態を神学的解釈の枠組から解放して、エロスとともに人間生命の根源をなす力として捉え、創造と救済、死と融合、嫉妬と狂信、禁欲と頽廃等々の包括的モチーフにおいて宗教とエロス精神の間に共通する諸現象を分析し、その本質的連関を明らかにしつつ、両者を人類史的全体像のなかに位置づけ、その創造的発展・統一をめざす。

著訳者プロフィール

ヴァルター・シューバルト(シューバルト,W.)

(Walter Schubart)
1897年、チューリンゲン地方のゾンネベルクに生まれる。法学部を修了後、ミュンヘン美術学校法律顧問、イェーナ高等裁判所弁護士として活躍。1933年、政治的理由により、リガ(現在のラトヴィア共和国首都)へ移り文学博士号を取得、同大学哲学講師となる。哲学的著書『ヨーロッパと東方の心』および『ニーチェとドストエフスキー』によって名をなす。1941年、ソ連のラトヴィア進駐後、ドイツへ戻ろうとしたがヒットラーの対ソ宣戦布告のため国境が封鎖され、爾来、夫人とともに消息を絶つ。

石川 実(イシカワ ミノル)

1955年京都大学修士課程修了。大阪大学名誉教授。

平田 達治(ヒラタ タツジ)

1959年大阪大学修士課程修了。大阪大学名誉教授。

山本 実(ヤマモト ミノル)

1966年京都大学修士課程修了。元大阪大学教授。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序論

第一章 根源についての魔神論
宗教的な根源的戦慄/犠牲と禁欲/宗教と倫理/エロス的な根源的戦慄/エロス精神と美学

第二章 創造の歓喜
生殖の形而上学/自然宗教の礼拝と祭典/処女たちの純潔の奉納/神殿侍女/男根崇拝/救済のモチーフの侵入/ヘブライ人とギリシア人における創造の歓喜と救済のモチーフの戦い/ローマ人とディオニュソス/キリスト教における自然宗教の要素/魔女の系譜/謝肉祭の宗教的意味/モルモン教徒とロシア鞭身教徒の宗派/現代の自然宗教

第三章 貪食本能と呪術
宗教とエロス精神における力への意志/多神教と一夫多妻/貪食本能の心理学/貪食本能と享楽的愛/呪術的なるものの特徴/呪術と宗教

第四章 救済のモチーフ
個別化の根源的悲劇/プラトンのエロス論/創造の歓喜と救済のモチーフ/救済のエロスと救済の宗教/エロス的用語と宗教的用語との間の転換/性の哲学/救済の愛の絶対的意味/救済の愛の特徴──完全化への衝動/愛の人格性/関心の固定化/愛の相互性

第五章 崇拝と融合
崇拝の愛と抱擁の愛/崇拝の愛の危険性/ミンネ/マドンナ崇拝/法悦の本質/ギリシア人の均整感覚/インド人の同一性の意識/融合の宗教的象徴性/神秘的法悦の手段としての酒と舞踏/宗教とエロス精神に対する音楽の関係/神秘的愛の位階とその形而上学的意味

第六章 退化の諸形態
嫉妬と狂言/呪物崇拝/ニヒリズム/ドン・ファンとニーチェ/マゾヒズム/犠牲の心理学について/サディズム

第七章 死と悲劇精神
死と神秘主義/死と愛/悲劇的なるものとその神秘主義およびエロス精神に対する関係/ディオニュソス神話/カタルシスの本質/インドと悲劇的なるもの

第八章 エロスと神々の不和
一時的禁欲と全面的禁欲/全面的禁欲の四つの根──犠牲のモチーフ/妨げのモチーフ/世界嫌悪/性恐怖/処女受胎の偶像/ギリシア人の同性愛

第九章 キリスト教と禁欲主義
イエスと女性たち/福音書におけるエロスの教義/パウロにおける禁欲主義/アウグスティヌスにおける性倫理/カトリック教会と女性/プロテスタンティズムと禁欲主義/禁欲主義による荒廃/魔女妄想/ロシアのスコプツィ派/キリスト教のエロス敵視の間接的結果/ボルシェヴィズムの性道徳

第十章 神々のもとへのエロスの帰還
性に関する自然主義の克服/肉体の尊厳について/エロスと自由/共同体と道徳の二つの源/世界の創造と世界の救済

訳者あとがき

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