原子論の可能性
近現代哲学における古代的思惟の反響

A5判 / 352ページ / 上製 / 価格 6,050円 (消費税 550円) 
ISBN978-4-588-15096-8 C3010 [2018年11月 刊行]

内容紹介

原子論とは、世界がそれ以上分割できない最小単位、原子(アトム)から構成されているとする説である。古代ギリシアのデモクリトスらに始まり、エピクロスやルクレティウスが提唱したこの世界観は、ガッサンディからヒューム、ライプニッツ、マルクスなどによる哲学的改訂を経て、現代科学にまで息づいている。明治日本における受容史や現代物理学の視点をも展望する、本邦初、全11章の包括的論集。

著訳者プロフィール

田上 孝一(タガミ コウイチ)

1967年生。立正大学人文科学研究所研究員、立正大学非常勤講師。博士(文学)。著書:『マルクス疎外論の視座』(本の泉社、2015年)、『環境と動物の倫理』(本の泉社、2017年)、『権利の哲学入門』(編著、社会評論社、2017年)ほか。

本郷 朝香(ホンゴウ アサカ)

1972年生。立教大学非常勤講師。博士(人文科学)。論文:「ニーチェから見たライプニッツ」(『ライプニッツ読本』、法政大学出版局、2012年)、「遅れてきた主体」(『理想』No.684「特集 哲学者ニーチェ」、2010年)、「ニーチェの歴史観における人間の位置づけ」(『現代文明の哲学的考察』社会評論社、2010年)ほか。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 【田上孝一】

第1章 古代原子論 デモクリトスとエピクロス、二つの原子論の差異をめぐって
【金澤 修】
はじめに
1 レウキッポスとデモクリトス
2 エピクロス
おわりに

第2章 ピエール・ガッサンディの原子論 エピクロス主義、キリスト教、新科学
【坂本邦暢】
はじめに
1 エピクロス哲学の歴史
2 聖職者にして文献学者にして自然哲学者
3 新たな天文学と原子論
4 摂理の導入と分子
おわりに

第3章 ジョン・ロックと近代粒子説 近現代の存在論、認識論への影響
【青木滋之】
はじめに
1 ガッサンディとロック
2 ボイルとロック
3 『人間知性論』での粒子説の展開──物体の性質と本質、自然学の限界
おわりに

第4章 ライプニッツと原子論 〈アトム〉から〈モナド〉へ
【池田真治】
はじめに
1 初期ライプニッツの原子論──物体的アトムの精神的基礎づけ
2 中期ライプニッツの原子論批判──物体的アトムから実体的アトムへ
3 後期ライプニッツとモナド論──実体的アトムからモナドへ
おわりに

第5章 ヒューム『対話』のエピクロス的宇宙論 古代原子論とダーウィン主義の間
【木島泰三】
はじめに
1 近代における目的論的自然観とイギリスの自然神学
2 ダーウィンとヒューム
3 古典的エピクロス主義とダーウィン主義の差異と連続性
4 『対話』の中でのエピクロス的宇宙論の位置づけ
5 フィロのエピクロス的宇宙論の考察
6 ヒュームの葛藤と『対話』の多声性
おわりに

第6章 コペルニクス的転回と原子論 カントのライプニッツ受容と批判
【小谷英生】
はじめに
1 前批判期の議論──モナド論の修正と擁護
2 批判期におけるモナド論批判
おわりに

第7章 マルクスの原子論 現実の理想からの疎外
【田上孝一】
はじめに
1 ヘーゲルとの邂逅────「父への手紙」
2 最初の疎外概念────自由の根拠としてのパレンクリシス
おわりに

第8章 ニーチェと原子論 不可分な自己から可分的な自己へ
【本郷朝香】
はじめに
1 『善悪の彼岸』一二節
2 原子論から質点理論へ
3 霊魂原子論から主体複合体としての霊魂
4 主体複合体としての霊魂
おわりに

第9章 ハイデガーと古代原子論 古代原子論の現象学的解釈の試み
【武井徹也】
はじめに
1 古代原子論の基本原理
2 ハイデガーにおける古代原子論の現象学的解釈
3 ハイデガーにおける古代原子論の現象学的解釈の射程
おわりに

第10章 明治期における実在論の系譜と原子論 「一即多」の哲学の展開
【白井雅人】
はじめに
1 明治期における原子論理解
2 井上円了の哲学と原子論
3 井上哲次郎の現象即実在論と原子論
4 清沢満之の哲学と原子論
おわりに

第11章 素粒子と米粒の自己同一性 量子力学的対象と粒子概念
【東 克明】
はじめに
1 「重ね合わせ」の状態
2 素粒子の自己同一性
3 丹治氏の分析──「米粒の自己同一性」
4 時間的推移を用いた自己同一性基準
おわりに

人名索引

■著者(章順)
金澤 修(カナザワ オサム)
1968年生。東京学芸大学研究員、首都大学東京非常勤講師。博士(文学)。論文:「「ギリシア哲学」とは何か」(『内在と超越の閾』知泉書館、2015年)、訳書:アリストテレス『宇宙について』(『アリストテレス全集6』岩波書店、2015年)、同『動物誌』上下(『アリストテレス全集8・9』岩波書店、2015年)ほか。

坂本邦暢(サカモト クニノブ)
1982年生。明治大学文学部専任講師。博士(学術)。著書: Julius Caesar Scaliger, Renaissance Reformer of Aristotelianism(Leiden: Brill, 2016)、『いま、哲学が始まる。──明大文学部からの挑戦』(共著、明治大学出版会、2018年)ほか。

青木滋之(アオキ シゲノブ)
1974年生。会津大学上級准教授。博士(人間・環境学)。論文:“Descartes and Locke on the Nature of Matter: a Note”(Studies on Locke: Sources, Contemporaries, and Legacy, Dordrecht: Springer,2008)、「宇宙における我々の位置」(『科学と文化をつなぐ』東京大学出版会、2016年)ほか。

池田真治(イケダ シンジ)
1976年生。富山大学准教授。博士(文学)。論文:「虚構を通じて実在へ──無限小の本性をめぐるライプニッツの数理哲学」(『ライプニッツ研究』第5号、2018年)、共訳書:『デカルト 数学・自然学論集』(法政大学出版局、2018年)ほか。

木島泰三(キジマ タイゾウ)
1969年生。法政大学非常勤講師。論文:「現代英語圏におけるスピノザ読解」(『主体の論理・概念の倫理』以文社、2017年)、訳書:ダニエル・C・デネット『心の進化を解明する──バクテリアからバッハへ』(青土社、2018年)ほか。

小谷英生(コタニ ヒデオ)
1981年生。群馬大学教育学部准教授。博士(社会学)。論文:「道徳と〈幸福であるに値すること〉」(『現代カント研究』第14巻、2018年)、「カントとコモンセンス」『思想』第1135 号、2018年)ほか。

武井徹也(タケイ テツヤ)
1972年生。立正大学人文科学研究所研究員、立正大学非常勤講師。論文:「自然の諸相──前期ハイデガーにおける自然についての議論」(『現代文明の哲学的考察』社会評論社、2010年)、「M・ハイデガーにおける〈二つのアレーテイア〉の解釈」(『存在の意味への探求』秋田書店、2011年)ほか。

白井雅人(シライ マサト)
1979年生。東洋大学井上円了研究センター客員研究員、立正大学非常勤講師。博士(哲学)。論文:「個の確立と善なる世界──西田幾多郎『善の研究』における人間観と世界観」(『近代化と伝統の間』教育評論社、2016年)、「「事実」とは何か──滝沢哲学の出発点と方法」(『滝沢克己を語る』春風社、2010年)ほか。

東 克明(ヒガシ カツアキ)
博士(文学)。論文:「EPR論証とベルの不等式」「コッヘン=シュペッカーのNO-GO定理」(『量子という謎』勁草書房、2012年)、“The limits of common cause approach to EPR correlation”(Foundations of Physics, vol. 38, 2008)ほか。

関連書籍

『エピクロスの園のマルクス』
フランシーヌ・マルコヴィッツ:著