ものと人間の文化史 64
蛙(かえる)

四六判 / 396ページ / 上製 / 価格 3,520円 (消費税 320円) 
ISBN978-4-588-20641-2(4-588-20641-9) C0320 [1989年10月 刊行]

内容紹介

動物学の立場からその特異な生態を描き出すとともに,和漢洋の文献資料を駆使して故事・習俗・神事・民話・文芸・美術工芸にわたる蛙の多彩な活躍ぶりを活写する。

目次

第一章 動物としての蛙
 一 尾のない両生類
  1 陸上への移行過程の動物
  2 水中生活と陸上生活
  3 生活の効率
  4 水とのかかわり
  5 産卵・幼生・変態
  6 カエルの運動
  7 有尾類・無尾類
 二 カエルの種類
  1 ヒキガエル亜目
  2 アカガエル亜目
  3 世界の珍しいカエル
 三 蛙をさす諸語――古文献を主として
  1 『和名抄』では
  2 タニグク
  3 タニグクの語源
  4 ヒ キ
  5 ガ マ
  6 カエル・カハヅ・カジカ
  7 魚のカジカ
  8 カヘル――帰巣性か鳴き声か
 四 蛙類を表わす漢字
 五 カエルと帰る・返る

第二章 蛙の生活に関して
 一 蛙のからだつき
  1 手をついて歌申し上ぐる蛙
  2 蟇股
  3 カヘルデ
  4 蛙の尾
  5 オオバコと蛙
  6 蛙の体の色
  7 京の蛙、大阪の蛙――蛙の目
  8 蛙の目借り時
 二 水溜りと蛙
  1 蛙飛び込む水の音
  2 蛙と水
  3 蓮の葉と蛙
  4 蛙と雨
  5 雨乞いと蛙
 三 蛙の跳躍と遊泳
  1 蛙の跳躍
  2 蛙の幅跳び
  3 小野道風と蛙
  4 蛙の遊泳
  5 蛙泳ぎ
 
第三書 蛙と鳴き声
 一 蛙の鳴き声
  1 蛙といえば鳴き声
  2 季節や時刻と鳴き声
  3 蛙の発声と聴覚
  4 蛙の種類と鳴き声
 二 河鹿
  1 カジカの鳴く季節・時刻
  2 カジカの美声と飼育
  3 河童の名所
  4 井出の蛙
 三 うとましい蛙の声
  1 蛙鳴蟬噪
  2 冴えない墓の声
  3 鹿笛と墓の皮
  4 「怪物」の唸り声
 四 蛙の鳴き声の表現
  1 諸言語での表現
  2 歌謡・童謡・民謡と蛙の鳴き声
  3 草野心平『定本蛙』と鳴き声
  4 鳴き声の「意味」
  5 蛙鳴き譚
第四章 食いかつ食われる
 一 蛙と餌
  1 蟾蜍は気をもって物を惹く
  2 蛙の餌のとり方
  3 蛙の餌の種類
  4 蛙、蛇を食う
  5 蛙と害虫駆除
  6 蝦蟇と鹿の角など
 二 蛙の外敵
  1 蛇と蛙
  2 蛇と蛙の説信
  3 三すくみ
  4 蛇の好物蛙に関する俗信
  5 もずのはやにえ
  6 釣餌としての蛙

第五章 蛙――薬用・食用として
 一 ガマの油
  1 ガマの油のいわれ
  2 四六のガマと油汗
  3 話芸としての売り口上
  4 ガマの妖異とガマの油
 二 蟾酥――ヒキノアブラ
  1 イボガエルと癩蛤蟆
  2 蟾蜍の皮膚分泌液の性質
  3 蟾酥――製法と効能
  4 六神丸
  5 矢毒蛙の皮膚毒
 三 薬用としての蛙
 四 食用としての蛙
  1 日本での蛙食
  2 食用蛙とその導入
  3 食用蛙導入のいきさつ
  4 食用蛙と世間の反響
  5 蛙料理
  6 中国の蛙食
  7 田 
  8 フランスの蛙料理

第六章 繁殖と産卵
 一 蛙の冬眠と繁殖期
  1 体温低下と冬眠
  2 蝦蟇の行列
  3 蝦蟇の大発生
 二 蛙合戦
  1 痩蛙まけるな
  2 蛙合戦の情景
  3 蛙の相撲とかわずがけ
  4 蛙の抱接
 三 蛙の産卵
  1 カエルの卵
  2 モリアオガエルの卵
  3 コモリガエル
 四 オタマジャクシ
  1 おたまじゃくしは蛙の子
  2 オタマジャクシの体と変態
  3 オタマジャクシの呼び名
  4 蝌蚪文と音符
  5 オタマジャクシと多産
  6 オタマジャクシの効用

第七章 蛙と故事・神事
 一 蛙と故事・諺
  1 月と蛙
  2 三本足の蛙
  3 蝦蟇仙人
  4 陀羅尼助本舗の三本足の蛙
  5 井の中の蛙
 二 蛙と神事
  1 蛙――田の神の使者
  2 諏訪大社の蛙狩の神事
  3 国栖奏と蛙の供物
  4 吉野蔵王堂の蛙飛びの行事
  5 二見輿玉神社の蛙奉献
  6 竜ケ崎の橦舞
  7 筑波山のガマ祭り

第八章 がまの妖異と妖術
 一 がまの妖異・霊性
  1 がまの妖異
  2 五 毒
  3 魂の姿はひきがえる
  4 蟇 目
 二 人の姿をとった蛙
  1 金蛙と高句麗の始祖
  2 蛙の哥よむこと
  3 老人の姿をした蟇
 三 蝦蟇と妖術
  1 ヒキガエル石
  2 魔女とヒキガエル
  3 錬金術とヒキガエル
  4 毒キノコとヒキガエル
  5 聖書「蛙の襲撃」

第九章 蛙と民謡・文芸
 一 蛙と和歌・俳句
  1 文芸における蛙の処遇
  2 西欧人の見た蛙の和歌・俳句
 二 蛙と民謡
  1 蛙報恩譚
  2 蛙婚姻譚(一)――蛙女房
  3 蛙婚姻譚(二)――蟾息子など
 三 蛙と文芸(西欧)
  1 イソップ物語と蛙
  2 アリストパネース『蛙』
  3 ルナール『博物誌』の蛙
 四 蛙と文芸(近代日本)
  1 森鷗外『蛙』
  2 島木健作「赤蛙」
  3 木下順二「蛙昇天」
  4 井上ひさし『表裏源内蛙合戦』、臼井吉見『蛙のうた』など
 五 蛙と近代詩
  1 森鷗外「蛙」
  2 草野心平詩集『定本蛙』その他

第十章 蛙の絵画と造形物
 一 蛙の絵画
  1 銅鐸の蛙の絵
  2 「鳥獣戯画」
  3 蛙を題材とした絵画
 二 蛙の造形物

第十一章 蛙と科学
 一 科学史の挿話
  1 竜と蛙の地震計
  2 蛙の足と動物電気
  3 獲得形質の遺伝と蛙・山椒魚
 二 両生類と生物学
  1 理科教材としての蛙
  2 蛙と生物学研究
  3 両生類関係の研究施設など

 主要参考文献
 あとがき
 索  引