嗜好品カートとイエメン社会

A5判 / 350ページ / 上製 / 価格 6,600円 (消費税 600円) 
ISBN978-4-588-33601-0 C3039 [2017年08月 刊行]

内容紹介

現代イエメンの経済・文化・社会に大きな影響力をもつ嗜好品カート。その生産・流通・消費をめぐる現地調査を通じて、イエメン独自のイスラーム社会を描いた民族誌的研究。商品作物としてのカートについて日本語で書かれた初の総合的モノグラフである本書は、中東世界の多様性のみならず、人類の嗜好品との関係について普遍的な理解をもたらす。地域研究を超えた、人文社会科学全般への貢献。

著訳者プロフィール

大坪 玲子(オオツボ レイコ)

東京大学教養学部教養学科卒業、東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位修得退学。博士(学術)。現在同研究科学術研究員。専門は文化人類学。共著に『〈断〉 と 〈続〉 の中東──非境界世界を游ぐ』悠書館(2015年)、主な論文に「誠実な浮気者──イエメンにおけるカート市場の事例から」『文化人類学』(2013年)、「浮気できない人々──イエメンのカート商人の比較」『アジア・アフリカ言語文化研究』(2016年)がある。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序 論 イエメン、カート、イスラーム
 1 はじめに
 2 一つめの違和感──部族とカート
 3 二つめの違和感──イスラーム経済とカート
 4 本書の構成
 5 調査に関して

第1章 カート伝来と消費の拡大
 1 はじめに
 2 カート伝来
 3 広がる消費
 4 南北イエメン時代
 5 統合イエメン時代

第Ⅰ部 カートを噛む
 セッション会場にて

第2章 カートをめぐるマナー
 1 噛む準備
 2 セッション会場
 3 通過儀礼とカート

第3章 消費の変化
 1 はじめに
 2 一九七〇年代のカート・セッションの特徴
 3 二〇〇〇年代のカート・セッションの特徴
 4 おわりに

コラム 男女の生活空間の分離の実際

第Ⅱ部 嗜好品か薬物か
 嗜好品への執念

第4章 薬物としてのカート
 1 生産地と消費地
 2 薬物とは何か
 3 薬物としてのカート
 4 イエメンにおけるカート問題

第5章 嗜好品としてのカート
 1 嗜好品とは何か
 2 結衆の手段
 3 消費する場所
 4 消費形態の多様化

コラム イルハームの決断

第Ⅲ部 カートを作る
 カート生産地にて

第6章 生産者とカート
 1 生産方法
 2 生産者の生活

第7章 コーヒーとカート
 1 はじめに
 2 生産と販売の比較
 3 カート化の実際
 4 コーヒー化の可能性

コラム 飲み物の話

第Ⅳ部 カートを売買する
 カート市場にて

第8章 流通経路とその効率化
 1 はじめに
 2 市場、商人、カート
 3 道路開発と流通量の増加
 4 流通の特徴と変化
 5 おわりに

第9章 商人、生産者、購入者の関係
 1 はじめに
 2 情報の非対称性と信頼関係
 3 カート市場の特徴
 4 カート市場における信頼関係
 5 考 察

コラム 女性と買い物

結 論 ゆるやかな関係
 1 議論の総括
 2 ゆるやかな関係


あとがき
資 料
参考文献
索 引

書評掲載

「イスラーム世界研究」(12号 2019年3月25日発行/松本弘氏・評)に紹介されました。

「イスラム世界」(90号 2018年11月/馬場多聞氏・評)に紹介されました。