歴史をどう語るか
近現代フランス、文学と歴史学の対話

四六判 / 324ページ / 上製 / 価格 3,520円 (消費税 320円) 
ISBN978-4-588-35236-2 C1098 [2021年08月 刊行]

内容紹介

大革命以降の二世紀間、フランスの文学と歴史学は、旧い世界の神話を解体し、新しい社会の現実を表象・再現・記録しようとしてきた。法や文明を問うユゴーやフロベールらの実験小説、ミシュレからコルバンにいたる社会史、そして近年の「エグゾフィクション」の流行に至るまで、リアリズムと虚構の方法を発明し、互いに深く影響しあった両者の関係を、19世紀文学研究の第一人者が描き出す。

著訳者プロフィール

小倉 孝誠(オグラ コウセイ)

1956年生まれ。東京大学大学院博士課程中退、パリ・ソルボンヌ大学文学博士。現在、慶應義塾大学教授。専門は近代フランスの文学と文化史。著書に『ゾラと近代フランス』『革命と反動の図像学』(以上、白水社)、『写真家ナダール』『愛の情景』『身体の文化史』(以上、中央公論新社)、『犯罪者の自伝を読む』(平凡社新書)、『パリとセーヌ川』(中公新書)、『近代フランスの誘惑』(慶應義塾大学出版会)、『「感情教育」歴史・パリ・恋愛』(みすず書房)、『歴史と表象』(新曜社)など、編著に『世界文学へのいざない』(新曜社)、訳書にユルスナール『北の古文書』(白水社)、アラン・コルバン監修『身体の歴史 II』(監訳、藤原書店)、フローベール『紋切型辞典』(岩波文庫)、ルジュンヌ『フランスの自伝』(法政大学出版局)など多数。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序論 文学と歴史学の対立を超えて
 アリストテレス『詩学』
 文学にとっての歴史学
 歴史学にとっての文学
 本書の構成

第一部 文学における歴史の表象

第1章 歴史としての現在──リアリズム文学の射程
 リアリズム文学とは何か
 革命後の世界を読み解く
 現在に続く歴史
 習俗を描く歴史家
 習俗の表象から「生理学」へ
 危険な集団の文学的登場
 蛮族から民衆ヘ

第2章 文学はいかにして歴史の神話を解体するか
 年代記から歴史学へ
 英雄の不在
 ナポレオン三世の表象
 差異と反復
 近い過去の歴史化
 歴史を読み解く

第3章 文学、法、歴史──ユゴー『死刑囚最後の日』

Ⅰ ユゴーの位置と死刑にたいする立場表明
 国民的作家ユゴー
 作品の成り立ち
 ユゴーの立場

Ⅱ 作品の歴史的位相
 死刑制度をめぐる論争
 死刑制度の変遷
 フランス革命とギロチンの誕生

Ⅲ 作品の主題と構造
 自己を語る犯罪者
 死刑囚であるということ
 徒刑という制度
 死刑囚の苦悶と恐怖
 死刑台への歩み
 祝祭と群衆

Ⅳ 小説技法の刷新
 日記体小説の嘴矢
 断片性の美学
 隠語の機能

Ⅴ ユゴー以後の文学と監獄

第4章 フロベールと歴史のエクリチュール
 フロベールの歴史への関心
 歴史の認識論から歴史小説へ
 同時代の歴史小説をどう読んだか
 歴史家をどう読んだか
 『サラムボー』──叙事詩と歴史
 文明と野蛮
 歴史学の流れに抗して
 『感情教育』から『ブヴァールとペキュシェ』へ

第5章 第二次世界大戦と現代文学
 現代小説と歴史
 文学から歴史学への越境──リテル、エネル
 現代文学と第二次世界大戦への関心
 ナチスを語る

第二部 歴史学と文学へのいざない

第6章 十九世紀における歴史叙述の思想と詩学
 歴史認識論の現在地
 ロマン主義歴史学の誕生
 「起源」の探求に魅せられた時代
 フランス革命を問いかける
 歴史叙述の詩学
 ジュール・ミシュレの位置
 実証主義歴史学に向けて
 二十世紀──実証主義への疑義

第7章 フランス史における英雄像の創出
 アラン・コルバンの一冊の書物
 パンテオンというモニュメント
 十九世紀と偉人の創出
 教育制度と歴史学
 記念碑の時代
 偉人たちの盛衰
 二十世紀の状況──変化と恒常性
 偉人の政治的効用
 坂本龍馬と織田信長
 日本における偉人の伝統

第8章 アラン・コルバンと歴史学の転換
 歴史学界におけるコルバンの位置
 感性の歴史の系譜
 コルバンの仕事──五つの領域
 例外的な試み
 集大成と発掘
 コルバンの欠落?
 コルバンと十九世紀文学

第9章 現代の歴史家と文学の誘惑
 歴史学からの反応
 文学と歴史学の関係──その過去と現状
 歴史学の底流
 アラン・コルバンの位置
 イヴァン・ジャブロンカと「方法としての私」
 歴史書から小説ヘ──アントワーヌ・ド・ベックの試み
 不在者の声

初出一覧
あとがき

人名索引

書評掲載

「UP」(2022年02月号、2022年02月05日発行/成田龍一氏・評)に紹介されました。