虜囚
一六〇〇〜一八五〇年のイギリス、帝国、そして世界

A5判 / 574ページ / 上製 / 価格 8,580円 (消費税 780円) 
ISBN978-4-588-37125-7 C3022 [2016年12月 刊行]

内容紹介

地中海、北アフリカ、アメリカ、インドへと歩を進め、かつてない大帝国を築き上げたイギリス。しかし、帝国の版図をめぐる争いのなかで、多くのイギリス人が敵国の捕虜となっていた。あらゆる価値が転倒する異国の地で、敵の手中に落ちた無名のロビンソン・クルーソーあるいはガリヴァーたちの目に母国イギリスは、そして世界はどのように映ったのか。歴史に埋もれた虜囚体験記に光をあてるもうひとつのイギリス史。

著訳者プロフィール

リンダ・コリー(コリー リンダ)

(Linda Colley)
1949年生。イギリス出身の歴史家。専門は1700年以降のイギリス史。ブリストル大学を卒業後、ケンブリッジ大学で博士号を取得。同大学クライスツ・カレッジのフェローをつとめた後、イェール大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスを経て、現在はプリンストン大学教授。前作Britons: Forging the Nation 1707-1837(1992)でウルフソン賞を受賞(日本語訳は『イギリス国民の誕生』川北稔監訳、名古屋大学出版会、2000年)。グローバルな視点からの学際的な研究を得意とし、『ガーディアン』や『タイムズ・リテラリー・サプリメント』への寄稿、BBCラジオへの出演(Acts of Union and Disunionとして2014年に出版)、世界各国の大学研究者を結ぶプロジェクトなど幅広く精力的に活動を続けている。

中村 裕子(ナカムラ ヒロコ)

1965年生。神戸大学文化学研究科博士課程単位取得退学。神戸大学非常勤講師。18世紀イギリス文学専攻。訳書に、ウォード『ロンドン・スパイ──都市住民の生活探訪』(共訳、小局刊、2000年)、リンギス『汝の敵を愛せ』(洛北出版、2004年)、モロン『フロイトと作られた記憶』(岩波書店、2004年)ほか。

土平 紀子(ツチヒラ ノリコ)

1958年生。神戸大学文化学研究科博士課程単位取得退学。神戸大学非常勤講師。18世紀イギリス文学専攻。訳書に、ウォード『ロンドン・スパイ──都市住民の生活探訪』(共訳、小局刊、2000年)、ポプラウスキー『ジェイン・オースティン事典』(共訳、鷹書房弓プレス、2003年)、ヒートン『ウィトゲンシュタインと精神分析』(岩波書店、2004年)ほか。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

 謝 辞

序 章
 小ささゆえの脆弱さ、小ささゆえの攻撃性
 人びとや物語が重要だ
 帝国を見直す

第一部 地中海──虜囚と拘束

第一章 タンジール
 砕け散る波
 もう一つの海、もう一つの見方
 弱 点
第二章 イスラム勢力と海
 バーバリ
 数値的側面
 イギリス人も奴隷になる
 海の襲撃者たちと一つの海洋帝国
第三章 物語を語る
 公表する
 教会と国家
 虜囚の声
 読み物
第四章 イスラムとの出会い
 方位修正
 混在するメッセージ
 証 言
 変遷?

第二部 アメリカ──虜囚と困惑

第五章 さまざまなアメリカ人、さまざまなイギリス人
 大西洋の彼方を見る
 生け捕りにする
 分 断
第六章 戦争と新世界
 衝 突
 荒野の中へ
 魅了された虜囚たち
 勝利の成果、島国の制約からくる苦労
第七章 革命
 正体を見誤る
 誰を数に入れるべきか
 網でライオンを捕らえる
 帝国を黒くすること、複数の帝国を新たに築くこと

第三部 インド──虜囚と征服

第八章 インドへのもう一つの道
 セアラの話
 リミット
 虎に乗る
第九章 虎と剣
 マイソールとその意味
 書き手としての戦士
 敗北への適応
 勝つための書き直し
第十章 制服姿の虜囚たち
 数当て賭博に勝つ
 出ていった者たち
 鞭で軍隊を従わせる
 帝国の兵士たちについての見方を改める
終章 アフガニスタンへ、そしてその先へ
 さらなる虜囚、さらなる物語
 同じままだったこと、違ったこと
 十九世紀 結論
 二十一世紀の問題

 訳者あとがき
 挿絵タイトル・出所一覧
 原 註
 補遺 虜囚に関する資料
 索 引

書評掲載

「朝日新聞」(2017年4月9日付/柄谷行人氏・評)にて紹介されました。

「Latina」(2017年7月号/伊高浩昭氏・評)にて紹介されました。

「イギリス哲学研究」(第41号/松園伸氏・評)にて紹介されました。

「英文学研究」(第95巻、2018年12月/佐藤光氏・評)に紹介されました。

関連書籍

『イギリス通商案』
ダニエル・デフォー:著