情報と通信の文化史〈新装版〉

A5判 / 550ページ / 上製 / 価格 7,150円 (消費税 650円) 
ISBN978-4-588-37129-5 C0020 [2024年11月 刊行]

内容紹介

狼煙にはじまり、古代ペルシアの駅制、江戸時代の飛脚、イギリスの郵便馬車、フランスの電信・電話、そして現代のインターネット社会にいたるまで、情報と通信にまつわる技術・制度の変遷と社会生活の変化を描いた、通信技術の歴史。

著訳者プロフィール

星名 定雄(ホシナ サダオ)

星名 定雄(ホシナ サダオ)
1945年東京に生まれる。法政大学経営学部卒業。通商産業省(現経済産業省)に35年間勤務。情報通信史・イギリス郵便史を長年研究。著書『郵便の文化史──イギリスを中心として』(みすず書房、1982)、『郵便と切手の社会史〈ペニー・ブラック物語〉』(法政大学出版局、1990)、『情報と通信の文化史』(法政大学出版局、2006)、『イギリス郵便史文献散策』(郵研社、2012)、『陸・海・空、手紙をはこぶ──イギリス郵便の歴史』(法政大学出版局、2024)など。交通史学会会員、郵便史研究会会員。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はじめに

第1部 情報通信史のあけぼの──人類の歴史とともに出発

第1章 コミュニケーションの源流を辿る

1 プロローグ 古代人のコミュニケーション
2 絵から文字へ ヒトは記録する
3 書写の材料 石から紙へ
4 焰と煙と 狼煙が伝えたもの

第2章 古代王国を支えた強大な駅制

1 古代オリエント 乾いた大地に使者が走る
2 古代ペルシア 王の道と駅伝システム
3 古代ギリシャ ヘメロドローメンが走る
4 古代中国漢字に秘められた郵駅の仕組み

第3章 古代ローマ帝国の駅制

1 ローマの道 すべての道はローマより発す
2 クルスス・プブリクス 公共の道というけれど
3 ディプロマタ 乱用が制度崩壊の一因に

第Ⅱ部 基本通信メディアの誕生──中世から近世へ

第4章 大帝国の巨大通信ネットワークの出現

1 唐の駅制 南船北馬の地に展開
2 サラセンの駅伝 カリフの魔法の鏡
3 モンゴルの站赤 東西の架け橋となる
4 インカの飛脚 王の目と耳に

第5章 仏英における駅制の発展過程

1 フランスの駅制 ルイ一一世が整備開始
2 イギリスの駅制 ヘンリー八世が創設

第6章 わが国の情報通信の歩み

1 弥生時代 意外と高い情報密度
2 大化前代 大和と筑紫のあいだに早馬が走る
3 律令時代 唐制を範に通信網を敷く
4 平安時代 手紙文化の誕生
5 鎌倉時代 六波羅飛脚が京都と鎌倉をむすぶ
6 戦国時代 密使が飛び交う世界
7 江戸時代 飛脚のネットワークが完備

第7章 中世ヨーロッパの成立と飛脚の台頭

1 僧院飛脚 キリスト教社会の絆に
2 大学飛脚 故郷と学生をむすぶ
3 商都の飛脚 商業活動を支える
4 為替と飛脚 支払期限を決める飛脚の速さ
5 騎士飛脚 青い外套をまとい馬にまたがる
6 都市の飛脚 市民のコミュニケーションを支える

第8章 ハプスブルク家と歩んだタクシス郵便(駅通)

1 一六世紀中葉までの発展 フランツが基礎を築く
2 一八世紀中葉までの発展 帝国駅逓の地位を獲得
3 タクシス郵便の終焉 四〇〇年の歴史に幕

第Ⅲ部 改革と発展の時代──近世から近代へ

第9章 合衆国成立とアメリカ郵便の誕生

1 手紙をはこんだ私営船 母国との絆を担う
2 植民地飛脚の整備 遅々として進まず
3 植民地の駅逓 イギリス本国が管理する
4 駅逓から郵便へ 新聞郵便がスタート
5 アメリカ郵便の発展 西部開拓とともに歩む
6 ニューヨークの市内郵便 民営郵便が活躍する
7 安息日の労働 是非を巡り論争

第10章 19世紀イギリスの郵便改革

1 近代の郵便事情 高い料金が利用を阻む
2 ヒルの郵便改革案 外部からの提案
3 一ペニー郵便開始 社会生活に溶け込む

第11章 日本の郵便近代化

1 創業前夜 幕末の混乱で宿駅制度が崩壊
2 前島密 近代郵便創設を建議
3 杉浦譲 新式郵便スタートに尽力
4 郵便創業 六五の郵便局でスタート
5 前島洋行 英米の郵便制度を視察
6 旧制の再編成 交通と通信を分離
7 郵便の全国展開 政府専掌を打ち出す
8 外国郵便の開始 日米郵便交換条約の締結で
9 東京府内の郵便 一日一九回も配達

第Ⅳ部 情報の伝送──古代から現代まで

第12章 陸路の情報伝送

1 使者と飛脚 情報通信史のプロローグを飾る
2 駿馬 至急報伝達の主役に
3 馬車 旅人と郵便をはこぶ
4 鉄道 機械時代の到来
5 自動車 馬なし時代に移る

第13章 海路の情報伝送

1 イギリス 郵便の船舶輸送に補助金を出す
2 日本 官主導で日本郵船を創設

第14章 空路の情報伝達

1 伝書鳩 古代から情報を空輸する
2 気球 普仏戦争で活躍
3 飛行船 世界一周を敢行する
4 航空機 輸送で民間航空がスタート

第15章 空間と時間を克服した通信技術

1 人間テレグラフ 眼と耳と口と
2 腕木通信 現代通信ネットワークの起源に
3 有線電信 電気式テレグラフの誕生
4 無線電信 海の世界で不可欠に
5 電話 人々の生活に浸透する

第V部 マスメディアの台頭──近代

第16章 新聞の創業

1 新聞前史 口承伝達から手書きメディアへ
2 ヨーロッパ 印刷メディアの誕生
3 アメリカ 独立運動を鼓舞する
4 日本 瓦版からはじまる

第17章 通信社の誕生

1 ヨーロッパ 英仏独の三強が誕生
2 アメリカ 共同取材から出発
3 日本 政治宣伝機関から出発

第18章 ラジオからテレビの時代へ

1 ラジオ 無線電話の技術を使う
2 テレビ 新聞と並ぶマスメディアに

第Ⅵ部 エピローグ

第19章 情報通信の隠された世界

1 暗号 古代から活用される
2 情報活動 検閲と密使の話

第20章 昭和の想い出と平成の変貌

1 昭和の時代 人の温もりを残すコミュニケーション
2 平成の時代 高度情報化社会の到来

あとがき

図版・地図・表リスト
参考文献
索引