19世紀末以降、ペスト流行の舞台は帝国主義に揺れ動くアジアだった。列強の拠点となった中国の開港都市、外国人居留地が撤廃されたばかりの神戸、日本の植民地になってまもない台湾と朝鮮、そしてオランダ統治下のジャワ。権力関係が錯綜する場所で模索された西洋的な衛生事業の導入は、そのまま近代に至る道に直結していた。国境を越えて広がる共通の脅威を通して「アジアの近代」の総体に迫る画期的な試み!
永島 剛(ナガシマ タケシ)
1968年生まれ。英国サセックス大学大学院博士課程修了。D. Phil. (History). 専修大学経済学部教授。医療社会史、都市史。
“Meiji Japan’s encounter with the ‘English system’ for the prevention of infectious disease”, The East Asian Journal of British History, Volume 5, 2016.「19 世紀末イギリスにおける保健行政――ブライトン市衛生当局の活動を中心として」、『社会経済史学』第68巻第4号、2002年。
市川 智生(イチカワ トモオ)
1976年生まれ。横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士後期課程修了。博士(学術)。長崎大学熱帯医学研究所助教。日本近代史、医療社会史。
「近代日本の開港場における伝染病流行と外国人居留地――1879年「神奈川県地方衛生会」によるコレラ対策」、『史学雑誌』第117編第6号、2008年。「明治初期の伝染病流行と居留地行政――1870・71年横浜の天然痘対策」、『日本歴史』第762号、2011年。
飯島 渉(イイジマ ワタル)
1960年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。青山学院大学文学部教授。医療社会史。
『ペストと近代中国――衛生の「制度化」と社会変容』研文出版、2000年。『感染症の中国史――公衆衛生と東アジア』中央公論新社(中公新書)、2009年。
はじめに 永島 剛
第1章 ペスト・パンデミックの歴史学 飯島 渉
第2章 香 港 一八九四年 永島 剛
―〈イギリス流〉衛生行政と植民地社会―
第3章 台 湾 一八九六年 芹澤良子
―日本の〈帝国医療〉の揺籃―
第4章 神 戸 一八九九年 市川智生
―開港場の防疫と外国人社会―
第5章 上 海 一九一〇年 福士由紀
―暴れる民衆、逃げる女性―
第6章 天 津 一九一一年 戸部 健
―鼠疫をめぐる中医の社会史―
第7章 朝 鮮 一九一一年 金穎穂
―総督府と満洲ペスト流行の脅威―
第8章 ジャワ 一九一一年 村上 咲
―ペスト政策を通じたオランダ領東インド専門保健行政の定着―
あとがき 永島 剛・市川智生
索 引
第1章 ペスト・パンデミックの歴史学 飯島 渉
第2章 香 港 一八九四年 永島 剛
―〈イギリス流〉衛生行政と植民地社会―
第3章 台 湾 一八九六年 芹澤良子
―日本の〈帝国医療〉の揺籃―
第4章 神 戸 一八九九年 市川智生
―開港場の防疫と外国人社会―
第5章 上 海 一九一〇年 福士由紀
―暴れる民衆、逃げる女性―
第6章 天 津 一九一一年 戸部 健
―鼠疫をめぐる中医の社会史―
第7章 朝 鮮 一九一一年 金穎穂
―総督府と満洲ペスト流行の脅威―
第8章 ジャワ 一九一一年 村上 咲
―ペスト政策を通じたオランダ領東インド専門保健行政の定着―
あとがき 永島 剛・市川智生
索 引
【執筆者紹介】
芹澤良子(せりざわよしこ)
お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了。博士(人文科学)。医療社会史。
「ハンセン病医療をめぐる政策と伝道――日本統治期台湾における事例から」、『歴史学研究』第834号、2007年。「日治時期台湾癩病防治政策的発展」、国史館台湾文献館整理組『第四届台湾総督府檔案学術研討会論文集』国史館台湾文献館、2006年。
福士由紀(ふくしゆき)
1973年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。首都大学東京都市教養学部准教授。中国近現代史。
『近代上海と公衆衛生――防疫の都市社会史』御茶の水書房、2010年。
戸部 健(とべけん)
1976年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程修了。博士(史学)。静岡大学学術院人文社会科学領域准教授。中国近現代史、教育・医療社会史。
『近代天津の「社会教育」――教育と宣伝のあいだ』汲古書院、2015年。「北洋新政時期天津中医界的改革活動与地域社会」、『中国社会歴史評論』第8巻、2007年。
金 穎 穂(キムヨンス)
1977年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。韓国延世大学校医科大学研究員。医療社会史、東アジア医学史、韓国・日本近代史。
「植民地朝鮮の防疫対策と中国人労働者の管理」、『医史学』第23巻第3号、2014 年。“The development of medical and sanitary systems in the treaty port of Incheon”, Journal of Comparative Asian Development, Volume 11, Issue 1, 2012.
村上 咲(むらかみさき)
1978-2008年。東南アジア医療社会史。
「ペスト対策を通じたオランダ領東インド専門保健行政の定着、1900-1925 年」、『社会経済史学』第73巻第3号、2007年。“Call for doctors!: uneven medical provision and the modernization of state health care during the decolonization of Indonesia, 1930s−1950s”, Freek Colombijn and Joost Coté (eds.), Cars, Conduits, and Kampongs: The Modernization of the Indonesian City, 1920−1960, Brill, 2015.
芹澤良子(せりざわよしこ)
お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了。博士(人文科学)。医療社会史。
「ハンセン病医療をめぐる政策と伝道――日本統治期台湾における事例から」、『歴史学研究』第834号、2007年。「日治時期台湾癩病防治政策的発展」、国史館台湾文献館整理組『第四届台湾総督府檔案学術研討会論文集』国史館台湾文献館、2006年。
福士由紀(ふくしゆき)
1973年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。首都大学東京都市教養学部准教授。中国近現代史。
『近代上海と公衆衛生――防疫の都市社会史』御茶の水書房、2010年。
戸部 健(とべけん)
1976年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程修了。博士(史学)。静岡大学学術院人文社会科学領域准教授。中国近現代史、教育・医療社会史。
『近代天津の「社会教育」――教育と宣伝のあいだ』汲古書院、2015年。「北洋新政時期天津中医界的改革活動与地域社会」、『中国社会歴史評論』第8巻、2007年。
金 穎 穂(キムヨンス)
1977年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。韓国延世大学校医科大学研究員。医療社会史、東アジア医学史、韓国・日本近代史。
「植民地朝鮮の防疫対策と中国人労働者の管理」、『医史学』第23巻第3号、2014 年。“The development of medical and sanitary systems in the treaty port of Incheon”, Journal of Comparative Asian Development, Volume 11, Issue 1, 2012.
村上 咲(むらかみさき)
1978-2008年。東南アジア医療社会史。
「ペスト対策を通じたオランダ領東インド専門保健行政の定着、1900-1925 年」、『社会経済史学』第73巻第3号、2007年。“Call for doctors!: uneven medical provision and the modernization of state health care during the decolonization of Indonesia, 1930s−1950s”, Freek Colombijn and Joost Coté (eds.), Cars, Conduits, and Kampongs: The Modernization of the Indonesian City, 1920−1960, Brill, 2015.
書評掲載
「朝日新聞」(2017年6月11日付/椹木野衣氏・評)にて紹介されました。
「社会経済史学」(第84巻第2号/見市雅俊氏・評)に紹介されました。