衛生と近代
ペスト流行にみる東アジアの統治・医療・社会

永島 剛:編, 市川 智生:編, 飯島 渉:編
A5判 / 276ページ / 上製 / 価格 5,280円 (消費税 480円) 
ISBN978-4-588-37604-7(4-588-37604-7) C1022 [-0001年11月 刊行]

内容紹介

19世紀末以降、ペスト流行の舞台は帝国主義に揺れ動くアジアだった。列強の拠点となった中国の開港都市、外国人居留地が撤廃されたばかりの神戸、日本の植民地になってまもない台湾と朝鮮、そしてオランダ統治下のジャワ。権力関係が錯綜する場所で模索された西洋的な衛生事業の導入は、そのまま近代に至る道に直結していた。国境を越えて広がる共通の脅威を通して「アジアの近代」の総体に迫る画期的な試み!

著訳者プロフィール

永島 剛(ナガシマ タケシ)

1968年生まれ。英国サセックス大学大学院博士課程修了。D. Phil. (History). 専修大学経済学部教授。医療社会史、都市史。
“Meiji Japan’s encounter with the ‘English system’ for the prevention of infectious disease”, The East Asian Journal of British History, Volume 5, 2016.「19 世紀末イギリスにおける保健行政――ブライトン市衛生当局の活動を中心として」、『社会経済史学』第68巻第4号、2002年。

市川 智生(イチカワ トモオ)

1976年生まれ。横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士後期課程修了。博士(学術)。長崎大学熱帯医学研究所助教。日本近代史、医療社会史。
「近代日本の開港場における伝染病流行と外国人居留地――1879年「神奈川県地方衛生会」によるコレラ対策」、『史学雑誌』第117編第6号、2008年。「明治初期の伝染病流行と居留地行政――1870・71年横浜の天然痘対策」、『日本歴史』第762号、2011年。

飯島 渉(イイジマ ワタル)

1960年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。青山学院大学文学部教授。医療社会史。
『ペストと近代中国――衛生の「制度化」と社会変容』研文出版、2000年。『感染症の中国史――公衆衛生と東アジア』中央公論新社(中公新書)、2009年。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

  はじめに   永島 剛

第1章 ペスト・パンデミックの歴史学   飯島 渉

第2章 香 港 一八九四年        永島 剛
  ―〈イギリス流〉衛生行政と植民地社会―

第3章 台 湾 一八九六年        芹澤良子
  ―日本の〈帝国医療〉の揺籃―

第4章 神 戸 一八九九年        市川智生
  ―開港場の防疫と外国人社会―

第5章 上 海 一九一〇年        福士由紀
  ―暴れる民衆、逃げる女性―

第6章 天 津 一九一一年        戸部 健
  ―鼠疫をめぐる中医の社会史―

第7章 朝 鮮 一九一一年        金穎穂
  ―総督府と満洲ペスト流行の脅威―

第8章 ジャワ 一九一一年        村上 咲
  ―ペスト政策を通じたオランダ領東インド専門保健行政の定着―

  あとがき   永島 剛・市川智生

  索 引

【執筆者紹介】
芹澤良子(せりざわよしこ)
お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了。博士(人文科学)。医療社会史。
「ハンセン病医療をめぐる政策と伝道――日本統治期台湾における事例から」、『歴史学研究』第834号、2007年。「日治時期台湾癩病防治政策的発展」、国史館台湾文献館整理組『第四届台湾総督府檔案学術研討会論文集』国史館台湾文献館、2006年。

福士由紀(ふくしゆき)
1973年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。首都大学東京都市教養学部准教授。中国近現代史。
『近代上海と公衆衛生――防疫の都市社会史』御茶の水書房、2010年。

戸部 健(とべけん)
1976年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程修了。博士(史学)。静岡大学学術院人文社会科学領域准教授。中国近現代史、教育・医療社会史。
『近代天津の「社会教育」――教育と宣伝のあいだ』汲古書院、2015年。「北洋新政時期天津中医界的改革活動与地域社会」、『中国社会歴史評論』第8巻、2007年。

金 穎 穂(キムヨンス)
1977年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得満期退学。博士(学術)。韓国延世大学校医科大学研究員。医療社会史、東アジア医学史、韓国・日本近代史。
「植民地朝鮮の防疫対策と中国人労働者の管理」、『医史学』第23巻第3号、2014 年。“The development of medical and sanitary systems in the treaty port of Incheon”, Journal of Comparative Asian Development, Volume 11, Issue 1, 2012.

村上 咲(むらかみさき)
1978-2008年。東南アジア医療社会史。
「ペスト対策を通じたオランダ領東インド専門保健行政の定着、1900-1925 年」、『社会経済史学』第73巻第3号、2007年。“Call for doctors!: uneven medical provision and the modernization of state health care during the decolonization of Indonesia, 1930s−1950s”, Freek Colombijn and Joost Coté (eds.), Cars, Conduits, and Kampongs: The Modernization of the Indonesian City, 1920−1960, Brill, 2015.

書評掲載

「朝日新聞」(2017年6月11日付/椹木野衣氏・評)にて紹介されました。

「社会経済史学」(第84巻第2号/見市雅俊氏・評)に紹介されました。