明治初期、当時一流の洋学者たちを総動員して進められた、文部省主導の大規模な翻訳プロジェクトがあった。英国の百科事典を70名以上に及ぶ翻訳者・校正者が協働して日本語訳し、最先端の西洋文明を紹介した全97編の出版事業は、近代日本の言語・文化・学問に何をもたらしたのか。事業の概観とともに、各分野の主要翻訳語に着目し、翻訳学の視点から初めて総合的にアプローチした画期作。
長沼 美香子(ナガヌマ ミカコ)
愛知県生。通訳翻訳者。立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科特任准教授を経て、神戸市外国語大学外国語学部英米学科准教授。広島大学卒業、同大学院修士課程修了。オークランド大学大学院文部省国費派遣交換留学。マッコーリ大学大学院修士課程修了。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。専門は機能言語学、通訳翻訳学。NHK『ニュースで英会話』原稿執筆、共編著に『日本の翻訳論』(法政大学出版局)、共訳書に『通訳学入門』『翻訳学入門』(みすず書房)ほか。
※上記内容は本書刊行時のものです。序 章 文部省『百科全書』への招待
一 翻訳テクストの研究
二 『百科全書』研究の意義
三 本書の構成
第一章 翻訳研究における「等価」言説──スキャンダルの罠
一 翻訳の理論と「等価」
二 欧米翻訳学事始
三 近代日本の翻訳論
四 日本の翻訳学
第二章 文部省『百科全書』という近代──ふぞろいな百科事典
一 国家的翻訳プロジェクト
二 翻訳機関の変遷
三 『百科全書』の輪郭
四 起点テクストについて
五 翻訳者と校正者の群像
第三章 「身体教育」という近代──文明化される所作
一 身体の近代
二 明治政府と「教育」
三 「身体教育」の行方
四 「体育」とは
五 国民国家の「スポーツ」
第四章 「言語」という近代──大槻文彦の翻訳行為
一 大槻文彦と「言語」
二 『言語篇』の刊行事情
三 文法をめぐる『言海』と『百科全書』
四 「言語」とは
五 ためらいがちな「言語」というもの
第五章 「宗教」という近代──靖国体制の鋳型
一 「宗教」と非「宗教」
二 翻訳語としての「宗教」
三 明治政府と「宗教」
四 『百科全書』における「宗教」
五 非「宗教」のカモフラージュ
第六章 「大英帝国」という近代──大日本帝国の事後的な語り
一 遡及することば
二 「大英帝国」とは
三 「帝国」の記憶
四 「人種」をめぐる大日本帝国
五 更新され続ける「帝国」
第七章 「骨相学」という近代──他者を視るまなざし
一 人体解剖図と翻訳
二 西洋近代の「科学」
三 「骨相学」とは
四 語るまなざし
五 疑似科学の近代
第八章 「物理」「化学」という近代──窮理と舎密からのフィクショナルな離脱
一 蘭学から英学へ
二 自然科学の翻訳
三 「物理」「化学」への跳躍
四 定義するテクスト
五 学校制度のなかの自然科学
第九章 「百科全書」という近代──制度の流通と消費
一 「百科全書」とは
二 『百科全書』の視覚制度
三 制度としての学知
四 新聞広告による流通と消費
終 章 「翻訳」という近代──訳された文部省『百科全書』
一 翻訳語の遠近法
二 増殖する名詞
三 翻訳論的転回へ
あとがき
文献一覧
事項索引
人名索引
一 翻訳テクストの研究
二 『百科全書』研究の意義
三 本書の構成
第一章 翻訳研究における「等価」言説──スキャンダルの罠
一 翻訳の理論と「等価」
二 欧米翻訳学事始
三 近代日本の翻訳論
四 日本の翻訳学
第二章 文部省『百科全書』という近代──ふぞろいな百科事典
一 国家的翻訳プロジェクト
二 翻訳機関の変遷
三 『百科全書』の輪郭
四 起点テクストについて
五 翻訳者と校正者の群像
第三章 「身体教育」という近代──文明化される所作
一 身体の近代
二 明治政府と「教育」
三 「身体教育」の行方
四 「体育」とは
五 国民国家の「スポーツ」
第四章 「言語」という近代──大槻文彦の翻訳行為
一 大槻文彦と「言語」
二 『言語篇』の刊行事情
三 文法をめぐる『言海』と『百科全書』
四 「言語」とは
五 ためらいがちな「言語」というもの
第五章 「宗教」という近代──靖国体制の鋳型
一 「宗教」と非「宗教」
二 翻訳語としての「宗教」
三 明治政府と「宗教」
四 『百科全書』における「宗教」
五 非「宗教」のカモフラージュ
第六章 「大英帝国」という近代──大日本帝国の事後的な語り
一 遡及することば
二 「大英帝国」とは
三 「帝国」の記憶
四 「人種」をめぐる大日本帝国
五 更新され続ける「帝国」
第七章 「骨相学」という近代──他者を視るまなざし
一 人体解剖図と翻訳
二 西洋近代の「科学」
三 「骨相学」とは
四 語るまなざし
五 疑似科学の近代
第八章 「物理」「化学」という近代──窮理と舎密からのフィクショナルな離脱
一 蘭学から英学へ
二 自然科学の翻訳
三 「物理」「化学」への跳躍
四 定義するテクスト
五 学校制度のなかの自然科学
第九章 「百科全書」という近代──制度の流通と消費
一 「百科全書」とは
二 『百科全書』の視覚制度
三 制度としての学知
四 新聞広告による流通と消費
終 章 「翻訳」という近代──訳された文部省『百科全書』
一 翻訳語の遠近法
二 増殖する名詞
三 翻訳論的転回へ
あとがき
文献一覧
事項索引
人名索引
書評掲載
「図書新聞」(2017年10月7日号/伊藤真実子氏・評)にて紹介されました。
「ADALTIORA SEMPER(神戸市外国語大学 図書館報)」(第56号、2023年01月31日発行)に紹介されました。