仮面の奇人 三木清

四六判 / 342ページ / 上製 / 価格 3,740円 (消費税 340円) 
ISBN978-4-588-46026-5 C0023 [2025年03月 刊行]

内容紹介

戦前期日本の哲学界および論壇のスターであり、治安維持法下で獄死を強いられた三木清(1897-1945)。独仏留学生活の内実からその著作活動の特異な性格、パスカル研究やスピノザ論の筆致、マニラでの徴用体験まで、きわめて人間くさい生身の生涯を、戦争の時代背景のうちに跡づける。法政大学社会学部で長く教鞭をとり、近代日本の西洋諸学・語学導入過程を広く探究してきた著者による批判的ポートレート。

著訳者プロフィール

宮永 孝(ミヤナガ タカシ)

宮永 孝(ミヤナガ タカシ)
1943年生。富山県高岡市出身。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。法政大学名誉教授。著書に『ペリー提督──日本遠征とその生涯』(有隣堂)、『幕府オランダ留学生』(東京書籍)、『ポンペ──日本近代医学の父』(筑摩書房)、『万延元年のアメリカ報告』(新潮社)、『幕末おろしや留学生』(筑摩書房)、『アメリカの岩倉使節団』(筑摩書房)、『日独文化人物交流史──ドイツ語事始め』(三修社)、『ジョン・マンと呼ばれた男──漂流民中浜万次郎の生涯』、『幕末異人殺傷録』(角川書店)『白い崖の国をたずねて──木戸孝允のみたイギリス』(集英社)『日本史のなかのフランス語──幕末明治の日仏文化交流』(白水社)『海を渡った幕末の曲芸団──高野広八の米欧漫遊記』(中央公論新社)『プリンス昭武の欧州紀行──慶応3年パリ万博使節』(山川出版社)『日本とイギリス』(山川出版社)『ポーと日本──その受容の歴史』(彩流社)、『日本洋学史──葡・羅・蘭・英・独・仏・露語の受容』(三修社)、『幕末遣欧使節団』(講談社学術文庫)、『社会学伝来考──明治・大正・昭和の日本社会学史』(角川学芸出版)、『哲学の受容史研究──西洋哲学と日本』(三協美術出版)ほか多数。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はしがき
三木清 略年譜

第一章 三木清のドイツ・フランス留学記
1 ヨーロッパへの旅立ち
2 ハイデルベルク
3 マールブルク
4 パリ
5 三木清の「パスカルと生の存在論的解釈」
6 同論文にみる三木清の文体
7 三木清の『パンセ』読解

第二章 三木清の方法──「スピノザに於ける人間と国家」
1 三木論文の内容
2 スピノザが生きた(低地諸国)時代
3 スピノザの『国家論』の構成の概要
むすび
三木清の方法/三木論文の中味の概要/学者たちの三木評/哲学徒としての三木の願望

第三章 仮面の奇人──マニラにおける陸軍報道班員 三木清
1 三木清 徴用通知をうけとる
2 輸送船「崑山丸」でフィリピンへ
3 報道班員 三木清
4 部屋にこもった三木清と同輩との確執
5 三木清のフィリピン研究
むすび
軍政下のマニラ地図/大阪毎日新聞の特派員・木村毅のマニラ報告/木村が見たフィリピンにおける文化工作/三木清の偽装術

第四章 法政と社会運動家
1 ロシア革命、日本を震撼
2 法政大の学生および教員による社会主義運動
3 法政を追われた教師たち
4 三木清はなぜ法政にきたのか
5 法政における三木清
6 ふたたび獄中へ
7 戸坂潤のさいご
あとがき

人名索引