石原吉郎の詩の構造
他者、言語、世界

四六判 / 382ページ / 上製 / 価格 4,180円 (消費税 380円) 
ISBN978-4-588-46028-9 C0090 [2025年11月 刊行]

内容紹介

シベリアの強制収容所を生き延びた詩人・石原吉郎(1915‒1977)。難解さをもって知られる詩人のテクストの「構造」に初めて全面的に焦点をあて、解きほぐす画期的な試み。理性の外部にあるもの、すなわち「他者」への呼びかけ、「世界」の現出、そして両者が顕れる場そのものとしての「言語」。詩の構造を精緻に分析することでしかその核には迫れない。生誕110年、石原作品読解の到達点。

著訳者プロフィール

斉藤 毅(サイトウ タケシ)

斉藤 毅(サイトウ タケシ)
1966年生まれ。大妻女子大学ほか講師。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。専門はロシア文学・文化。共著に『他者のトポロジー──人文諸学と他者論の現在』『暴力の表象空間──ヨーロッパ近現代の危機を読み解く』ほか、訳書にマンデリシターム『言葉と文化──ポエジーをめぐって』、マージン『オネイログラフィア──夢、精神分析、芸術家』、ブロツキー『レス・ザン・ワン──詩について 詩人について 自分について』(共訳)など。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次


第1章 石原吉郎の詩における他者のトポロジー
はじめに──詩、他者
1 詩集『サンチョ・パンサの帰郷』における書物と証言
 (1) 書物
 (2) 証言──冒頭の四篇
 (3) 構成──綱領、シベリア、男
2 詩《位置》──土の次元、空の次元
 (1) 位置
 (2) 敵
 (3) 土と空
3 詩《やぽんすきい・ぼおぐ》──去勢、お(の)れ
 (1) シベリア連作
 (2) 日本の神、陰茎
 (3) 去勢
 (4) お(の)れ、証言
おわりに


第2章 兇器の時
はじめに
1 道具、武器、兇器
2 「日」と「ひとつのとき」
3 「うす目」の証言
4 自由の時──その他の収容所詩篇

第3章 風の顕れ
1 「名づけ」としての風──詩集『禮節』の諸詩篇
2 風という「もの」──詩《陸南風》(一)
3 風、望郷──詩《陸南風》(二)

第4章 うずくまる
1 海を流れる河
2 うずくまる(一)──「条件」の放棄
3 うずくまる(二)──「現在」という時間
4 水準原点

第5章 サンチョ・パンサの帰郷──石原吉郎と三井葉子
1 詩人の帰郷
2 主体の諸層
3 権威を地におろす
4 位置
5 去勢とは何か
6 位置も動く

第6章 世界がほろびる日に
1 終末ブームとカール・バルト
2 個の終末と世界の終末
3 世界がほろびる日に(一)──ユーモア、終末と日常
4 世界がほろびる日に(二)──自我と時間の二重化
5 おわりに──石原吉郎の死

第7章 斧の思想
1 詩集『斧の思想』の位置
2 詩《斧の思想》の構成
3 提示部──森、斧、風
4 展開部(1)──声
5 展開部(2)──刃
6 展開部(3)──静寂、みどり
7 結論部(1)──斧の顔
8 結論部(2)──第一詩集のほうから


あとがき
参考文献
作品名索引