黄春明選集 溺死した老猫

黄春明:著, 西田 勝:編訳
四六判 / 280ページ / 上製 / 価格 2,860円 (消費税 260円) 
ISBN978-4-588-49039-2 C0097 [2021年05月 刊行]

内容紹介

「光復」後も困難な政治状況が続いた台湾社会で、近代化ゆえに弱い立場におかれた民衆の現実を温かい眼差しで見つめながら、老若男女の悲哀と喜び、苦難と希望をユーモアあふれる筆致で描き続けてきた黄春明(1935年~)。1960年代以降の現代台湾文学を牽引し、世界各国語に訳され愛されてきた作家の代表的な短編小説10篇と、訳者によるインタビューなどを収録する格好のセレクション。

著訳者プロフィール

黄春明(ホワン チュンミン)

1935年、日本統治下の台北州羅東街(現・中華民国台湾省宜蘭県羅東鎮)に生まれる。中学時代、継母との間がこじれ、家出するが、最終的に屏ピン東トン師範学校を卒業。小学校教員となるが、その後、地方テレビの記者、記録映画の制作者、広告会社の社員となる。1962年、「『城仔』下車」で文壇にデビュー、以来、「海を訪ねる日」・「坊やの大きな人形」・「さよなら・再見」など代表作を次々に発表、映画化もされ、「郷土文学」の代表的作家の一人と称せられる。金権社会に取り込まれた「大人」には希望はないとして1994年、「黄大魚児童劇団」を宜蘭市に設立、脚本も執筆した。1998年、「国家文化芸術基金会文芸奨」を受賞。2014年、リンパ腺癌となり、療養生活に入ったが、創作活動は衰えていない。彼の主要な作品は現在、童話や新作を除き、『黄春明作品集』(10巻、聯合文学出版社、2009年5月~2018年6月)で読むことができる。

西田 勝(ニシダ マサル)

1928年、静岡県に生まれる。1953年、東京大学文学部卒業、法政大学文学部教授を経て、現在〈西田勝・平和研究室〉主宰、植民地文化学会理事。主要著書に『グローカル的思考』『近代日本の戦争と文学』『近代文学の発掘』(以上、法政大学出版局)、『社会としての自分』(オリジン出版センター)、『近代文学閑談』(三一書房)、『私の反核日記』(日本図書センター)、編訳書に『田岡嶺雲全集』全7巻、呂元明『中国語で残された日本文学』、鄭清文『丘蟻一族』、葉石涛『台湾男子簡阿淘』(以上、法政大学出版局)、ゴードン・C. べネット『アメリカ非核自治体物語』(筑摩書房)、『世界の平和博物館』(日本図書センター)、『《満洲国》文化細目』(共編、不二出版)、『中国農民が証す《満洲開拓》の実相』(共編、小学館)などがある。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

道路清掃人夫の子供

「城仔」下車

青番爺さんの話

溺死した老猫

海を訪ねる日

坊やの大きな人形

今や先生

花の名前を知りたい

死んだり生き返ったり

人工寿命同窓会

児童劇 小李子は大騙りではない 筋書

インタビュー ① 龍眼の熟する季節

インタビュー ② わが文学を語る

黄春明の眼差し──社会的弱者・ユーモア・文明批判(西田 勝)

編注

編訳者あとがき

書評掲載

「読書人」(2021年07月16日号/山口守氏・評)に紹介されました。

「図書新聞」(2021年07月24日号/下村作次郎氏・評)に紹介されました。

「朝日新聞」(2021年07月17日付/温又柔氏・評)に紹介されました。

「朝日新聞 折々のことば」(2021年10月03日付/鷲田清一氏・評)に紹介されました。

「植民地文化研究」(第20号、2021年10月20日発行/星名宏修氏・評)に紹介されました。