「本が焼かれるところでは、いずれ人も焼かれるのです」。ベルリンのベーベル広場にある、ナチス・ドイツの焚書追悼記念碑に刻まれたこの言葉は、ハイネの初期戯曲『アルマンゾル』(1823)に登場する台詞として知られる。15世紀末、レコンキスタ後のグラナダを舞台に、イスラム教徒の青年アルマンゾルと、キリスト教徒の恋人スレイマに生じた悲劇。マラーノの系譜に連なるユダヤ人詩人ハイネの現代性がいま甦る。
ハインリヒ・ハイネ(ハイネ ハインリヒ)
ハイリンヒ・ハイネ(Heinrich Heine)
ドイツの詩人、作家。1797年にデュッセルドルフのユダヤ人家庭に生まれ、のちにプロテスタントに改宗した。初期の代表作である詩集『歌の本』の詩は、シューベルトやシューマンなどが作曲した歌曲としても広く知られる。三大詩集として、そのほかに『新詩集』と『ロマンツェーロ』がある。ハイネの詩には甘美な恋愛や美しい自然を歌う抒情性と、それに耽溺せずに一歩引いたユーモアと皮肉を含んだまなざしが同居し、その批判的精神ゆえに最後のロマン主義者であると同時に最初の現代的詩人とも評される。ハイネの作品はドイツにおいて検閲や批判を受け、1831年からパリに移住し、ドイツの新聞の通信員として、フランスの文化や社会について報告するジャーナリスティックな文章を執筆。1848年以降は病に侵され、寝たきりの状態になりながらも創作を続け、1856年に死去した。
今本 幸平(イマモト コウヘイ)
今本 幸平(イマモト コウヘイ)
津市立三重短期大学准教授。1975年生まれ。2006年に関西大学大学院文学研究科ドイツ文学専攻博士課程後期課程修了。博士(文学)。関西大学、京都教育大学、三重短期大学などの非常勤講師を経て2018年より現職。研究分野は19世紀ドイツ文学。ヴィルヘルム・ミュラーとハインリヒ・ハイネの作品を中心に研究している。主な論文に「ハインリヒ・ハイネとヴィルヘルム・ミュラー──愛、女性をめぐる『タンホイザー』と『美しい水車小屋の娘』の比較」(『ハイネ逍遥』第10号、2017年)、「『アッタ・トロル 夏の夜の夢』における熊の演説──「笑いの嫌悪」に関する小考」(『ハイネ逍遥』第14号、2021年)がある。
アルマンゾル 悲劇
荒廃したムーア人の古い屋敷の内部
アリーの屋敷
夜。アリーの屋敷の外
アリーの屋敷の前庭
森
アリーの屋敷の広間
森
岩山
訳註
訳者解説
荒廃したムーア人の古い屋敷の内部
アリーの屋敷
夜。アリーの屋敷の外
アリーの屋敷の前庭
森
アリーの屋敷の広間
森
岩山
訳註
訳者解説