千森 幹子(チモリ ミキコ)
帝京大学外国語学部教授。英国イーストアングリア大学大学院で博士号(Ph.D.)を取得。大阪明浄女子短期大学講師・助教授、ケンブリッジ大学クレアホール学寮客員フェロー、山梨県立大学国際政策学部教授を経て、2014年から現職。専門領域は18世紀〜19世紀イギリス小説、日英比較文学、図像研究、翻訳研究。
主な著書に、『表象のアリス──テキストと図像に見る日本とイギリス』(第39回日本児童文学学会特別賞受賞、法政大学出版局)、Sense in Nonsense: The Alice Books and Their Japanese Translators and Illustrators (単著)(Ph.D.論文、2003)、『不思議の国のアリス〜明治・大正・昭和初期邦訳本復刻集成』(編集解説、エディションシナプス、2009)、Tove Jansson Rediscovered (共著、Cambridge Scholars Publishing, 2007)、Illustrating Alice (共著、Artists’ Choice Edition, 2013)、『図説 翻訳文学総合事典 第5巻 日本における翻訳文学(研究編)』(共著、大空社、2009)、『十八世紀イギリス文学研究[第4号]──交渉する文化と言語』(共著、開拓社、2010)など。主な論文に、Shigeru Hatsuyama’s Unpublished Alice Illustrations: A Comparative Study of Japanese and Western Art(The Carrollian: The Lewis Carroll Journal, No. 4, 1999)、“Tenkei Hasegawa’s Kagami Sekai:The First Japanese Alice Translation”(The Carrollian, No. 6, 2000)などがある。
『ガリヴァー旅行記』とオリエンタリズム/本書の概要/本書の独創性/文学テキストと図像研究/先行研究
第一部 英版『ガリヴァー旅行記』とオリエント
第一章 『ガリヴァー旅行記』の位相
一・一 風刺文学・児童文学としての『ガリヴァー旅行記』の位相
『ガリヴァー旅行記』の多領域性・多義性/子どものための『ガリヴァー旅行記』/児童文学としての『ガリヴァー旅行記』の魅力
一・二 英国におけるオリエント観とオリエント受容
ヨーロッパにおけるオリエントへの関心/日本への関心/イギリスの植民地政策と万国博覧会/ジャポニズム
一・三 英版図像におけるオリエント表象──先行研究と本書
第二章 『ガリヴァー旅行記』のオリエント描写と風刺
二・一 テキストにおけるオリエント描写
二・二 『ガリヴァー旅行記』と近代科学
はじめに/近代科学/『ガリヴァー旅行記』と科学風刺/スウィフトの人間観・理性観/スウィフトの科学風刺に含まれる警告/まとめ
二・三 『ガリヴァー旅行記』と医学
はじめに/スウィフトとストラルドブラグ/ストラルドブラグのソースと先行研究/ストラルドブラグとは/ストラルドブラグ風刺の矛先/ストラルドブラグにこめた警告/風刺の意味/むすび
第三章 英版『ガリヴァー旅行記』図像とオリエント表象
三・一 『ガリヴァー旅行記』図像史とオリエント表象
三・二 『ガリヴァー旅行記』図像における中東描写
三・三 『ガリヴァー旅行記』図像における中国表象
三・四 『ガリヴァー旅行記』図像における日本表象
第四章 英版『アラジン』図像にみるオリエント
四・一 オリエントイメージの混在と融合──日本表象を中心として
はじめに/『アラビアンナイト』と『アラジンと魔法のランプ』/アラビアンナイト『アラジン』画像におけるオリエント表象の系譜/日本イメージ──女性、男性、装飾品そして日本の美術技法
四・二 『ガリヴァー旅行記』と『アラジン』におけるオリエント表象
『ガリヴァー』と『アラジン』における日本表象/むすび
第二部 『ガリヴァー旅行記』邦訳と日英図像
第五章 明治期の邦訳と図像
五・一 はじめに
日本の『ガリヴァー旅行記』
五・二 明治期の翻訳(大人用の翻訳)
『ガリヴァー旅行記』翻訳史
五・二・一 初訳 片山平三郎譯『繪本 鵞瓈皤児回島記』(一八八七年)
五・二・二 大久保常吉編譯・服部誠一校閲『南洋漂流 大人國旅行』(一八八七年)
五・二・三 松原至文・小林梧桐共譯『ガリヴァー旅行記』(一九〇九年)
日本最初の平易な完全翻訳/風刺作品/まとめ
五・三 明治の翻訳図像
『鵞瓈皤児回島記』挿絵/大久保常吉編譯『南洋漂流 大人國旅行』挿絵/島尾岩太郎譯『政治小説 小人國発見録』挿絵/松浦政恭譯『小人島大人島抱腹珍譚』挿絵/松原至文・小林梧桐共譯『ガリヴァー旅行記』挿絵/吉岡向陽編『大艦隊の捕獲』鰭崎英朋画/近藤敏三郎譯『ガリヴァー旅行記 小人國大人國』挿絵/風浪生譯『ガリヴァー小人島大人國漂流記』挿絵/まとめ
五・四 明治の児童文学翻案──巌谷小波『小人島』『大人國』(一八九九年)
はじめに/少年教育とポストコロニアリズム──帝国主義教育と立身出世主義/巌谷小波と帝国主義教育と立身出世主義/『世界お伽噺』/『ガリヴァー旅行記』翻訳史における巌谷翻案の位置づけ/巌谷小波の『小人島(ガリバア島廻上編)』と『大人國(ガリバア島廻下編)』
五・五 『小人島』と『大人國』の挿絵
海外のイラストの影響/筒井年峰挿絵のオリジナリティー/まとめ
第六章 大正期の邦訳と図像
六・一 はじめに
六・二 大正雑誌『少年少女譚海』の鹿島鳴秋文、初山滋挿絵「ガリバー譚」(一九二〇年)
鹿島鳴秋「ガリバー譚」の画家初山滋/初山滋の「ガリバー譚」図像
六・三 大正雑誌『赤い鳥』の野上豊一郎文、清水良雄・深澤省三絵「馬の國」(一九二〇年)
『赤い鳥』と『ガリヴァー旅行記』/野上豊一郎の「馬の國」/「馬の國」と清水良雄の絵画/清水の白黒挿絵/深澤省三の挿絵/まとめ
六・四 平田禿木譯・岡本帰一画『ガリバア旅行記』(一九二一年)
平田禿木譯『ガリバア旅行記』/平田禿木の邦訳/『ガリバア旅行記』の挿絵画家岡本帰一/岡本帰一の『ガリバア旅行記』図像
六・五 濱野重郎著『ガリバー旅行記』(一九二五年)
濱野重郎著『ガリバー旅行記』/濱野重郎著『ガリバー旅行記』の挿絵──挿絵の西洋版ソースの発掘/ゴードン・ブラウンの挿絵/濱野版におけるブラウンの図像/むすび
第七章 昭和初期から戦前までの邦訳と図像
七・一 昭和初期の絵雑誌『幼年俱楽部』における『ガリヴァー旅行記』邦訳二種
──巌谷小波文・本田庄太郎絵「小人島」「大人國」と村岡花子文・井上たけし絵「小人トガリバー」
『幼年俱楽部』における『ガリヴァー』邦訳/先行研究/『幼年俱楽部』/巌谷小波の「小人島」と「大人國」/挿絵画家本田庄太郎/本田庄太郎の『ガリヴァー』挿絵/本田庄太郎の『ガリヴァー』挿絵の独自性/村岡花子文・井上たけし絵「小人トガリバー」/「小人トガリバー」の挿絵画家井上たけし/まとめ
七・二 初山滋のもう一冊の『ガリヴァー』挿絵(一九二九年)──初山滋とラッカム
七・三 大正末から昭和初期にかけての『ガリヴァー』表紙と外函
中村祥一譯『ガリヴァ旅行記』(一九一九年)/池田永治装幀『ガリバー旅行記』(一九二五年)/小西重直・石井蓉年撰『ガリバー旅行記』(一九三四年)
七・四 西条八十文・吉邨二郎絵『ガリバア旅行記 小人島物語』(一九三八年)
講談社の『世界お伽噺』/吉邨二郎絵『ガリバア旅行記 小人島物語』挿絵
七・五 まとめ
エピローグ
オリエンタリズムと「ガリヴァー」/第二次世界大戦終結までの『ガリヴァー』邦訳/邦訳図像/将来の展望
あとがき
注
初出一覧
図版リスト
参考文献
索 引
書評掲載
「日本古道通信」(2018年6月号)にて著者・千森幹子氏による寄稿が掲載されました。
「読書人」(2018年6月15日号/立石弘道氏・評)にて紹介されました。
「比較文学」(61巻 2019年3月31日発行/庄子ひとみ氏・評)に紹介されました