十五年戦争下の満州・日本・北京を往来し人気を博した梅娘、同じく大戦下の香港・上海で活躍したのちアメリカへと渡った張愛玲、そして難民の子として台湾に生まれアメリカ、ドイツ、香港を渡り歩く現代の人気作家・龍應台。中国を襲った二十世紀の戦火に運命を決定づけられ、故郷と異郷、妥協と抵抗、歴史と記憶の境にその文体を確立した三人の女性作家の分析を中心に、文学とアイデンティティの問題に迫る。
張欣(チョウキン)
(Zhang Xin)
1966年生まれ。北京大学中国言語文学部中国文学科および東洋言語文学部日本言語文化科(第二専攻)卒業。北京大学大学院中国文学科中国近代文学専攻修士課程修了。東京大学大学院人文社会系研究科アジア文化研究専攻博士課程修了。東京大学東洋文化研究所研究機関研究員を経て、現在、法政大学経済学部教授。専攻は中国近代文学・華人文学。長安の筆名で随筆等がある。
まえがき
第一部 梅娘──越境の軌跡
第一章 梅娘と満州文壇
第一節 文学少女
一 梅娘の原風景
二 文壇デビュー
第二節 文壇論争
一 様変わりした山河
二 郷土性vsモダニズム
第三節 「アメ」と「ムチ」
第四節 「満州浪曼」vs「満州脱离」
第二章 異邦での文学修行
第一節 異邦の歳月
第二節 異邦で書く
一 満州版の『家』
二 植民地の風景
第三節 異邦を書く
一 阪急線上の心理ドラマ
二 恋愛紛糾の逃避行先としての異国
第三章 梅娘と北京文壇
第一節 華北文壇の再建
第二節 「一身六臂」の梅娘
第三節「石叫ぶべし」
一 「新進作家」群
二 「新進作家」の作品をめぐる議論
第四節 梅娘が描いた「女の人生」
一 憂鬱の少女時代
二 泥沼の恋愛
三 矛盾だらけの同棲と結婚
四 自愛・不倫
第五節 戦後の梅娘
第二部 淪陥・葛藤・離散の怨
第四章 淪陥区の女性作家
第一節 被占領の時空に置かれて
一 満州
二 上海
三 華北
第二節 職業婦人vs「女結婚員」
第三節 二通りの男性像
第四節 監禁・越境・逃亡
第五章 戦時下に揺れた文学者たち
第一節 関係者へのインタビュー調査等
一 華北文壇について
二 新進作家および「大東亜文学者大会」について
三 平行線の「交流」
四 「わが北京留恋の記」
第二節 彷徨の呉瑛、「面従腹背」の古丁
第三節 苦悩の袁犀
第四節 狂気の徐祖正
第六章 張愛玲の異域想像と離散への「怨」
第一節 異域への想像
一 「青空の下の小さな赤い家」
二 華僑の范柳原
三 海帰の佟振保と華僑の王嬌蕊
第二節 オリエンタリズムへの抵抗
第三節 「欠点」のある小説
一 自伝性および叙事の視点
二 人物と構成
第四節 「怨」に囚われて
第三部 異郷・灰色・ポストメモリー
第七章 北京の台湾文人三銃士
第一節 越境してきた台湾文人
第二節 異郷歳月
第三節 張我軍と「大東亜文学者大会」
第四節 三人のその後
第八章 灰色の影に覆われた『日本研究』
第一節 「文化の力」を信じて
第二節 張我軍らの「日本文化の再認識」
第三節 実藤恵秀らの寄稿
第四節 周作人の「怠業の弁」
第九章 龍應台における離散とポストメモリー
第一節 「いくら流離っても、存在からは逃げられない」
一 難民の娘
二 「海外から帰って来た女英雄」
三 「荒野の中の一匹の狼」
第二節 「中国語は私のパスポートだ」
一 「貧血の向日葵」
二 「文化中国」にあこがれて
第三節 海徳堡(ハイデルベルク)には愛がない
一 荒涼なる情愛の場
二 「子宮思考」
第四節 揺れるポストメモリー
一 記憶・文学・歴史
二 修辞と感傷
三 『大江大海一九四九』をめぐる議論
あとがき
初出一覧
参考文献
索 引
第一部 梅娘──越境の軌跡
第一章 梅娘と満州文壇
第一節 文学少女
一 梅娘の原風景
二 文壇デビュー
第二節 文壇論争
一 様変わりした山河
二 郷土性vsモダニズム
第三節 「アメ」と「ムチ」
第四節 「満州浪曼」vs「満州脱离」
第二章 異邦での文学修行
第一節 異邦の歳月
第二節 異邦で書く
一 満州版の『家』
二 植民地の風景
第三節 異邦を書く
一 阪急線上の心理ドラマ
二 恋愛紛糾の逃避行先としての異国
第三章 梅娘と北京文壇
第一節 華北文壇の再建
第二節 「一身六臂」の梅娘
第三節「石叫ぶべし」
一 「新進作家」群
二 「新進作家」の作品をめぐる議論
第四節 梅娘が描いた「女の人生」
一 憂鬱の少女時代
二 泥沼の恋愛
三 矛盾だらけの同棲と結婚
四 自愛・不倫
第五節 戦後の梅娘
第二部 淪陥・葛藤・離散の怨
第四章 淪陥区の女性作家
第一節 被占領の時空に置かれて
一 満州
二 上海
三 華北
第二節 職業婦人vs「女結婚員」
第三節 二通りの男性像
第四節 監禁・越境・逃亡
第五章 戦時下に揺れた文学者たち
第一節 関係者へのインタビュー調査等
一 華北文壇について
二 新進作家および「大東亜文学者大会」について
三 平行線の「交流」
四 「わが北京留恋の記」
第二節 彷徨の呉瑛、「面従腹背」の古丁
第三節 苦悩の袁犀
第四節 狂気の徐祖正
第六章 張愛玲の異域想像と離散への「怨」
第一節 異域への想像
一 「青空の下の小さな赤い家」
二 華僑の范柳原
三 海帰の佟振保と華僑の王嬌蕊
第二節 オリエンタリズムへの抵抗
第三節 「欠点」のある小説
一 自伝性および叙事の視点
二 人物と構成
第四節 「怨」に囚われて
第三部 異郷・灰色・ポストメモリー
第七章 北京の台湾文人三銃士
第一節 越境してきた台湾文人
第二節 異郷歳月
第三節 張我軍と「大東亜文学者大会」
第四節 三人のその後
第八章 灰色の影に覆われた『日本研究』
第一節 「文化の力」を信じて
第二節 張我軍らの「日本文化の再認識」
第三節 実藤恵秀らの寄稿
第四節 周作人の「怠業の弁」
第九章 龍應台における離散とポストメモリー
第一節 「いくら流離っても、存在からは逃げられない」
一 難民の娘
二 「海外から帰って来た女英雄」
三 「荒野の中の一匹の狼」
第二節 「中国語は私のパスポートだ」
一 「貧血の向日葵」
二 「文化中国」にあこがれて
第三節 海徳堡(ハイデルベルク)には愛がない
一 荒涼なる情愛の場
二 「子宮思考」
第四節 揺れるポストメモリー
一 記憶・文学・歴史
二 修辞と感傷
三 『大江大海一九四九』をめぐる議論
あとがき
初出一覧
参考文献
索 引
書評掲載
「読書人」(2019年11月15日号/山口守氏・評)に紹介されました。