サピエンティア 14
文化を転位させる
アイデンティティ・伝統・第三世界フェミニズム

四六判 / 352ページ / 上製 / 価格 4,290円 (消費税 390円) 
ISBN978-4-588-60314-3 C3336 [2010年11月 刊行]

内容紹介

インドに生まれ、米国の大学で政治哲学やフェミニズムを教える著者は、自らの体験も交えながら、西洋のステレオタイプな第三世界観に警鐘を鳴らす。欧米の女性が殴られると家庭内暴力といわれるのに、第三世界の女性が殴られるとなぜ文化のせいにされるのか。第三世界の「文化」とは、帝国が植民地を包摂する過程で創造されたのではないだろうか。【社会・政治・フェミニズム】

著訳者プロフィール

ウマ・ナーラーヤン(ナーラーヤン,U.)

インドに生まれ、8歳までムンバイで過ごしたあと、家族とともにウガンダに移住。14歳でインドに戻り、ボンベイ大学で学士号、プーナ大学で哲学の修士号を取得。米国に渡ってラトガース大学で博士号を取得した。現在はニューヨーク州にあるヴァッサー・カレッジの哲学科教授として社会・政治哲学やフェミニスト理論を教えている。本書のほか、Having and Raising Children: Unconventional Families, Hard Choices, and the Social Good, edited by Uma Narayan and Julia J. Bartkowiak, University Park, Penn.: Pennsylvania State University Press, 1999; Decentering the Center: Philosophy for a Multicultural, Postcolonial, and Feminist World, edited by Uma Narayan and Sandra Harding, Bloomington: Indiana University Press, 2000などの編著がある。

塩原 良和(シオバラ ヨシカズ)

1973年生まれ。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(社会学)。
慶應義塾大学法学部准教授(社会学・社会変動論)。
主な業績:『ネオ・リベラリズムの時代の多文化主義』三元社、2005年、『変革する多文化主義へ』法政大学出版局、2010年ほか。

川端 浩平(カワバタ コウヘイ)

1974年生まれ。オーストラリア国立大学大学院アジア歴史・社会センター博士課程修了。Ph.D.(Asian Studies) 関西学院大学大学院社会学研究科特任助教。
主な業績:『多文化社会の〈文化〉を問う』(共著)青弓社、2010年、「スティグマからの解放、自由による拘束――地方都市(ホームタウン)で生活する在日コリアンの若者の事例研究」『解放社会学研究』第21号、2010年ほか。

冨澤 かな(トミザワ カナ)

1971年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。東京大学大学院人文社会系研究科特任研究員。
主な業績:「「オリエンタリスト」のインド観に見る宗教と宗教史への視座」市川裕、松村一男、渡辺和子編『宗教史とは何か(下巻)』、リトン、2009年、「一八世紀インドにおけるイギリス人の死の記憶--カルカッタの二つの場をめぐって」池澤優、アンヌ・ブッシィ編『非業の死の記憶--大量の死者をめぐる表象のポリティックス』、秋山書店、2010年ほか。

濱野 健(ハマノ タケシ)

1978年生まれ。九州大学大学院比較社会文化学府日本社会文化専攻修了。修士(比較社会文化学)。西シドニー大学(オーストラリア)人文学部博士課程在籍中。

山内 由理子(ヤマノウチ ユリコ)

1973年生まれ。シドニー大学文化人類学部博士課程修了。Ph. D.(文化人類学)
シドニー工科大学客員研究員(Endeavour Postdoctoral Fellowship)。
主な業績:'Exploring Ambiguity: Aboriginal Identity Negotiation in Southwestern Sydney', Environment and Planning A 2010: 42(2), 「シドニー南西部郊外におけるアボリジニのコミュニティ意識とアイデンティティ」『オーストラリア研究』23号、2010年ほか。

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序文
第1章 文化に異議を申し立てる
――「西洋化」、自らの文化への敬意、第三世界フェミニストたち

第2章 「第三世界の伝統」に歴史性と政治性を取り戻すために
――「コロニアリスト・スタンス」と現代のサティー論

第3章 クロス・カルチュラルなつながり、越境、そして「文化による死」
――インドのダウリー殺人と米国のドメスティック・バイオレンス殺人を考える

第4章 鏡の向こうの暗闇
――使者・鏡・真の当事者という先入観 

第5章 文化を食べる
――編入、アイデンティティ、インド料理

訳者あとがき

関連書籍

テッサ・モーリス=スズキ+吉見俊哉編『グローバリゼーションの文化政治』平凡社、岡真理『彼女の「正しい」名前とは何か』青土社など