法政大学現代法研究所叢書 53
権威主義化する世界と憲法改正

溝口 修平:編著
A5判 / 176ページ / 上製 / 価格 2,530円 (消費税 230円) 
ISBN978-4-588-63053-8 C3331 [2024年04月 刊行]

内容紹介

世界的に民主主義に対する信頼が後退し、権威主義的指導者が力をつけている。彼らはいかにして自身の権力を強化しているか。それを国民はなぜ支持するのか。本書は、多くの権威主義国家が憲法改正を利用して体制強化を図っていることに着目し、そうした事例を歴史・地域を横断して比較する。権威主義体制における憲法の役割に新たな解釈を提示する一冊。

著訳者プロフィール

溝口 修平(ミゾグチ シュウヘイ)

溝口 修平(ミゾグチ シュウヘイ)
法政大学教授 序章,第6章,終章

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

序章 権威主義体制における憲法改正とその正統性 【溝口修平】

1 問題の所在
2 本書で目指すこと
3 本書の意義
4 本書の構成

第1部 歴史・理論編

第1章 権威主義体制における憲法──その機能と実態 【武藤祥】
1 今なぜ憲法なのか?
2 権威主義体制における憲法の機能と役割
3 権威主義体制と憲法との関係
 (1)歴史的視座からのアプローチ──イベリア半島の事例を中心に
 (2)理論的視座からのアプローチ
4 立憲主義の反転と「憲法による権威主義」

第2章 韓国の権威主義体制における2つの憲法改正──第4共和国憲法と第5共和国憲法 【國分典子】
1 韓国における憲法改正の歴史
2 第4共和国憲法
 (1)改正の動機
 (2)改正内容の特徴
 (3)改正の正当化理由
 (4)体制の崩壊とその理由
3 第5共和国憲法
 (1)朴正煕暗殺以降の動き
 (2)改正の経過
 (3)改正の内容
 (4)改正の正当化理由
 (5)体制の崩壊とその理由
4 2つの共和国の崩壊要因の比較

第2部 現代編

第3章 トルコにおける2017年改憲過程──執政制度の変更はいかにして実現したのか 【岩坂将充】
1 2017年改憲という転換点
2 先行研究
3 1982年憲法と過去の改憲
 (1)1982年憲法(2007年改憲まで)における執政権
 (2)1982年憲法における改憲規定と大統領権限
 (3)1982年憲法における過去の改憲案
 (4)最初の転換点としての2007年改憲
4 2017年国民投票に向けた過程
 (1)2016年前半の状況
 (2)2016年クーデタ未遂事件とAKPの大統領制導入における言説
 (3)MHPの変化と改憲案の可決
5 2017年改憲以降のAKP-MHP関係
  【資料3-1】1982年憲法における変更不可条項(第1条~第3条)および第4条
  【資料3-2】1982年憲法における改憲手続き(概要)
  【資料3-3】2017年1月21日改憲案概要(同年4月16日国民投票実施)

第4章 ベネズエラにおける民主主義の後退と権威主義化──新憲法制定との関連からの一考察 【坂口安紀】
1 民主主義の後退と権威主義化の好例
2 指標でみるベネズエラにおける民主主義の弱体化
3 ベネズエラの民主主義の弱体化、権威主義化のプロセス
 (1)チャベスを政権に押し上げた背景
 (2)すべての国家権力の掌握
 (3)どのように権力集中を進めたのか
4 新憲法制定、憲法改正とマドゥロ政権下の制憲議会
 (1)1999年憲法による変更点
 (2)2007年の憲法改正提案とその否決
 (3)マドゥロ下による制憲議会の設立
5 正統性のロジックと支持調達

第5章 「逆走」する中国政治──2018年の憲法改正と「権力の個人化」 【加茂具樹】
1 「集団支配」から「個人支配」へ
2 2018年に何を改正したのか
3 憲法を改正する
 (1)党の意思を国家の意思に置き換える
 (2)市場経済化
 (3)公式イデオロギー
4 権力の個人化
 (1)第1条第2項と第79条第3項
 (2)1982年の共通認識
 (3)段階的にすすむ権力の個人化
5 「権力の個人化」はどの様に、誰がすすめ、なぜ必要なのか
 (1)どの様にすすんできたのか
 (2)誰がすすめたのか
 (3)なぜ必要なのか

第6章 ロシアにおける個人支配型権威主義体制の強化と「国民のための」憲法改正 【溝口修平】
1 憲法は独裁者の道具か?
2 ロシア憲法改正の歴史
 (1)1993年憲法の制定
 (2)憲法改正の手続き
 (3)憲法改正の歴史
3 憲法改正を正当化する言説の変化
 (1)「タブー」としての憲法改正
 (2)「国家の安定」のための憲法改正
 (3)「社会の発展レベルに対応した」憲法改正
4 終わりに

第7章 タイにおける2017年憲法の制定と持続可能な権威主義体制の構築 【外山文子】
1 タイ憲法の歴史と「立憲主義」
2 2014年クーデタの大義名分
3 2017年憲法の特徴
 (1)憲法の基本原則
 (2)上院
 (3)憲法裁判所
4 政策の制度化と軍事政権ネットワークの拡大
 (1)2017年憲法、20年国家戦略計画
 (2)「プラチャー・ラット」プロジェクト
 (3)親軍政党「パラン・プラチャーラット」
 (4)「持続可能なタイ主義」プロジェクト
5 2019年・2023年総選挙への影響と今後
 (1)2019年3月総選挙
 (2)2023年5月総選挙
 (3)NCPOの試みと今後

終章 権威主義化する世界と憲法改正 【溝口修平】
1 執政権力への権力集中
2 危機の克服
3 ナショナリズムとポピュリズム

著者(50音順)
岩坂 将充(イワサカ マサミチ) 北海学園大学教授 第3章
加茂 具樹(カモ トモキ) 慶應義塾大学教授 第5章
國分 典子(コクブン ノリコ) 法政大学教授 第2章
坂口 安紀(サカグチ アキ) アジア経済研究所主任調査研究員 第4章
外山 文子(トヤマ アヤコ) 筑波大学准教授 第7章
武藤 祥(ムトウ ショウ) 関西学院大学教授 第1章