法政大学現代法研究所叢書 56
地方自治基礎理論の探求
宮﨑伸光の自治体学をめぐって

名和田 是彦:編著, 宮﨑 伸光:編著
A5判 / 386ページ / 上製 / 価格 4,950円 (消費税 450円) 
ISBN978-4-588-63056-9 C3336 [2025年03月 刊行]

内容紹介

故宮﨑伸光名誉教授の膨大な地方自治研究を受け継ぎ、地方自治理論の新しい視点を提示する。「ズームレンズ理論」、領域社団論、アメリカの市民による自治体の創設、小規模自治体論、地方自治の責任部局論、都市内分権論、公共サービスの職務パフォーマンス論などに関する論稿のほか、宮﨑氏の2020年度春学期の「自治体論」講義録、氏の学問をめぐる座談会などを収録。

著訳者プロフィール

名和田 是彦(ナワタ ヨシヒコ)

名和田 是彦(ナワタ ヨシヒコ)
法政大学教授

宮﨑 伸光(ミヤザキ ノブミツ)

宮﨑 伸光(ミヤザキ ノブミツ)
法政大学名誉教授

※上記内容は本書刊行時のものです。

目次

はしがき

第1部 地方自治基礎理論の探求

第1章 「ズームレンズ理論」における「領域社団」論を読み解く 【名和田是彦】
Ⅰ はじめに
Ⅱ 問題提起 ~「ズームレンズ」論の体系的位置~
Ⅲ 宮﨑「ズームレンズ理論」の全体像
1 「ズームレンズ理論」に至る宮﨑の思索の跡
2 「ズームレンズ理論」の構成要素 その1「ズームレンズ」論
3 「ズームレンズ理論」の構成要素 その2「自治」概念
4 「ズームレンズ理論」の構成要素 その3「領域社団」概念
Ⅳ 「ズームレンズ理論」の展望
1 領域的秩序について
2 「調整・規制・給付」のための権限
Ⅴ 結びにかえて

第2章 自治体に住民は含まれるのか?──故・宮﨑伸光教授のズームレンズ理論と消防行政論 【嶋田暁文】
はじめに
Ⅰ 宮﨑の「ズームレンズ理論」
1 概要
2 自治体に住民は含まれるのか?
Ⅱ 宮﨑の消防行政論──その内実とズームレンズ理論への接合の意義
1 消防広域化推進論~国および永田尚三の立場
2 消防広域化慎重論~宮﨑の立場
おわりに

第3章 自治体と市民のあいだ──「自治体論」の射程をめぐって 【土山希美枝】
Ⅰ 本稿の目的と構成
1 宮﨑伸光氏講義が「自治体論」であることの示唆
2 本稿の構成
Ⅱ 自治体の発見
1 敗戦から1960年代なかばまで
2 高度成長の本格化と地域課題の顕在化
3 革新自治体から先駆自治体へ
4 2000年分権改革
Ⅲ 地域社会の構造変動と「都市型社会論」
1 高度成長期の社会変動と「都市型社会論」
2 地域課題をめぐる政策主体の再設定
3 地域課題をめぐる政策主体としての市民の3面性
Ⅳ 自治体と市民のあいだにある「期待」と「制度」
1 市民(による)政策と政府政策との境界
2 自治体と市民の政策主体間関係
3 市民政策主体にたいする自治体の「期待」
Ⅴ 自治体と市民・住民の自治の論
1 地縁系市民政策主体への行政による「期待」と「支援」
2 「自治の萎縮」という危機

第4章 アメリカにおける自治体設立(自治体法人化)と公共サービス 【宗野隆俊】
Ⅰ アメリカの地方自治における自治体
1 「市民が自治体を創る」
2 地方政府の類型
Ⅱ 境界変更の一形態としての自治体設立
1 自治体の境界変更
2 境界変更としての合併
3 自治体の設立
4 自治体の権能
Ⅲ 自治体設立の手続き
1 自治体設立の要件と手続き
2 ノースカロライナ州における自治体設立の手続き
Ⅳ 自治体設立と公共サービス
1 サンディスプリングス市
2 サンディスプリングス市設立の過程
3 サンディスプリングス市の統治機構と公共サービス
Ⅴ おわりに

第5章 小規模自治体のサステイナビリティに関する一考察 【武藤博己】
はじめに
Ⅰ 島嶼自治体
1 青ヶ島村
2 御蔵島村
3 その他の島嶼自治体
Ⅱ 山間地自治体
1 野迫川村
2 檜枝岐村
おわりに:小規模自治体が存続してきた要因
1 地理的状況
2 住民の意思
3 自治体の持つ資源の魅力
4 自治体という仕組み(制度)

第6章 「国による〈自治〉の擁護」についての一試論──戦間期の内務省地方局長講話を端緒として 【谷本有美子】
Ⅰ はじめに
1 解題「戦間期における町村自治」
2 分析の視座:町村自治に対する「後見」
Ⅱ 国家振興に期する自治体:自治の発達が意味するもの
1 自治の本義と国民の精神面における発達
2 農村地域の開発課題
Ⅲ 名誉職・公民と自治制
1 「治者」たる名誉職の心得
2 有給吏員の待遇問題と政党政治の影響
Ⅳ 自治行政と財政・税制
1 町村財政の原則と運営の実際
2 税負担の公平均衡問題
まとめにかえて

第7章 公共サービス動機付けと職務パフォーマンス──自治体職員に対するアンケートデータを用いた実証分析 【林 嶺那】
概要
Ⅰ はじめに
Ⅱ 公共サービス動機付けと多面的な職務パフォーマンス
Ⅲ 研究方法
1 データ
2 測定尺度
Ⅳ 分析結果
Ⅴ 考察と結論

第8章 市民と熟議する自治体議会:ベルギーにおける熟議委員会制度 【德田太郎】
はじめに
Ⅰ 「多様な人材が参画し住民に開かれた地方議会」
Ⅱ 選挙制による議員と抽選制による市民との混合熟議
Ⅲ ベルギー・ブリュッセル首都地域議会の熟議委員会
Ⅳ わが国における類似制度の導入の可能性と課題
おわりに

第9章 国土利用と地域コミュニティ──自治機能の「伝来」・「制度保障」と「固有」の狭間における運用をめぐる考察 【竹野克己】
Ⅰ はじめに(日本における「地域計画」の特性)
Ⅱ 国土利用計画「国土の管理構想」における
  「地域管理構想」策定制度
Ⅲ 「地域管理構想」の課題
Ⅳ 「国土計画」における住民と「地域コミュニティ」の意思の反映

第10章 ウィーン市都市内分権制度 【細井 保】
序 理論的視座
Ⅰ 歴史
Ⅱ 制度
Ⅲ 運用
Ⅳ 課題
補 オーストリア共和国の政治構造と政治文化

第2部 宮﨑伸光の自治体学

その1 座談会
宮﨑さんの学問と人を語る 【武藤博己・牛山久仁彦・嶋田暁文・名和田是彦】

その2 宮﨑伸光名誉教授
2020年度春学期「自治体論Ⅰ」講義録

第1回 開講

第2回 古典的地方自治理論
~民主主義と地方自治をめぐる古典的議論~

第3回 古典的地方自治理論(その2)
~民主主義と地方自治をめぐる古典的議論(つづき)~

第4回 古典的地方自治理論(その3)
~民主主義と地方自治をめぐる古典的議論(つづき2)~

第5回 領域社団の形成と自治の普遍性
~独自の視点から自治の普遍性を導く~

第6回 統率者の選出と統率者に対する授権
~地域共同社会の統率者をどのように決めるか~

第7回 統率者の選出と統率者に対する授権(その2)
~地域共同社会の統率者をどのように決めるか(つづき)~

第8回 統率者に対する統制
~「殿」の思い上がりの予防と対処~

■著者(50音順)
牛山 久仁彦(ウシヤマ クニヒコ) 明治大学教授

嶋田 暁文(シマダ アキフミ) 九州大学教授

竹野 克己(タケノ カツミ) 法政大学客員研究員

谷本 有美子(タニモト ユミコ) 法政大学准教授

土山 希美枝(ツチヤマ キミエ) 法政大学教授

德田 太郎(トクダ タロウ) 法政大学兼任講師

林 嶺那(ハヤシ レオナ) 法政大学教授

細井 保(ホソイ タモツ) 法政大学教授

武藤 博己(ムトウ ヒロミ) 法政大学名誉教授

宗野 隆俊(ムネノ タカトシ) 滋賀大学教授