1980年代以降は福祉国家が縮減していくとともに、他方では、グローバリゼーションのもとで家族政策が主流となっていく歴史的な過程であった。本書は、福祉国家の今後の方向性に対して社会政策としての家族政策がもつ含意を、アメリカ、イギリス、ドイツ、スウェーデン、日本などの歴史的な事例を通して、理論的かつ政策的な観点から比較検証する共同研究の成果。
原 伸子(ハラ ノブコ)
法政大学経済学部教授
※上記内容は本書刊行時のものです。 はじめに
第Ⅰ部 市場と家族
第1章 市場と世帯経済──産業革命期イギリスにおける家族の経験 (ジェーン・ハンフリーズ/川崎暁子訳)
1 イントロダクション
2 世帯と経済に関する進化論と構造機能主義理論
3 工業化以前の世帯の規模と構成
4 産業革命期の世帯の規模と構成
5 利己的な個人と相互利益的な世帯
6 変化の一方で維持されたもの──住み込み奉公と家庭内企業
7 産業革命期における賃金収入世帯
8 世帯経済、生活水準と消費
9 結論
第2章 福祉国家の変容と家族政策──公私二分法とジェンダー平等 (原伸子)
1 福祉国家の変容と家族政策の主流化
2 福祉国家の新たな政治──「第三の道」の概念と政策
3 「ワーク・ライフ・バランス」政策の論理──ジェンダー平等政策から雇用政策へ
4 おわりに──WLB政策のインプリケーション
第3章 第二世代の両立支援と労働法──スウェーデン法を参考に (両角道代)
1 雇用システムと労働法
2 両立をめぐる法政策の基本構造
3 両立に関連する雇用上の不利益と法規制
4 第二世代の両立支援の構造と基本理念
5 日本法への示唆
第Ⅱ部 福祉レジームと家族政策
第4章 アメリカの福祉改革 福祉退出者研究の教訓と洞察 (江沢あや/前原直子訳)
1 アメリカの福祉改革から15年
2 アメリカ福祉改革
3 個人的責任とTANF(貧困世帯一時扶助)
4 福祉改革とその結果の評価
5 改革がもたらした結果の評価──日本への教訓
第5章 イギリスの成年後見法にみる福祉社会の構想──判断能力の不十分な成年者をとりまく家族、社会、国家 (菅富美枝)
1 本章の視点
2 2005年意思決定能力法
3 家族の枠組みを超えた支援体制──制度の担い手としての広義の「市民」
4 家族の機能を補完する仕組みの構築
5 むすびにかえて──個人、家族、市民、国家が織りなす、自己決定を支援する社会
第6章 フランスの家族手当と家族政策の歴史的転換──「主婦手当」問題を中心として (深澤敦)
1 本章の課題と「二階建て」のフランス家族手当制度
2 フランスにおける家族手当制度の生成と展開
3 仲裁裁定と最初の主婦手当(割増)の導入
4 1938年11月12日政令法と「家族法典」
5 第二次世界大戦後における家族手当と家族政策の展開
第7章 ドイツ社会国家と家族政策 (齋藤純子)
1 家族に対する経済的支援の展開
2 児童手当──子の存在にもとづく普遍的な給付
3 育児休業制度──親手当と親時間への発展
4 保育の拡充
5 家族政策の変遷と社会国家の変容
第8章 ひとり親家族の子育てと福祉援助──貧困家族におけるジェンダーと家族主義からの考察 (岩田美香)
1 問題の背景
2 ひとり親家族にみるジェンダーと家族責任の重なり
3 家族問題と家族主義
4 二つの「支え手」への援助展開
第Ⅲ部 家族と女性の歴史分析
第9章 近代日本の企業福祉と労働者家族 (榎一江)
1 課題と方法
2 大正期におけるパターナリズムの再編
3 繊維産業の社宅・家族政策
4 労働者家族の生活──倉敷紡績の調査から
5 結語
第10章 イギリスにおける女性労働と古典派経済学──ガヴァネス問題から男女同一賃金論まで (舩木惠子)
1 淑女の貧困
2 『イングリッシュ・ウーマンズ・ジャーナル』における「ヴァネス問題」
3 パークスによる解説記事「ジョン・スチュアート・ミルの見解」
4 フォーセットとラズボーンの男女同一賃金論をめぐる相異
5 男女同一賃金論の二つの帰結
第11章 雑誌『青鞜』における「堕胎論争」の一考察──妊娠した原田皐月・伊藤野枝・平塚らいてうにとっての母になること (松尾純子)
1 「母性」を問う
2 「獄中の女より男に」──子どものための堕胎
3 両性の自律──避妊の肯定
4 性の自律の苦痛──避妊と子捨ての“あいだ”で
5 〈母性〉を問う──原田皐月・伊藤野枝・平塚らいてうの“新しい母”をふまえて
人名・事項索引
第Ⅰ部 市場と家族
第1章 市場と世帯経済──産業革命期イギリスにおける家族の経験 (ジェーン・ハンフリーズ/川崎暁子訳)
1 イントロダクション
2 世帯と経済に関する進化論と構造機能主義理論
3 工業化以前の世帯の規模と構成
4 産業革命期の世帯の規模と構成
5 利己的な個人と相互利益的な世帯
6 変化の一方で維持されたもの──住み込み奉公と家庭内企業
7 産業革命期における賃金収入世帯
8 世帯経済、生活水準と消費
9 結論
第2章 福祉国家の変容と家族政策──公私二分法とジェンダー平等 (原伸子)
1 福祉国家の変容と家族政策の主流化
2 福祉国家の新たな政治──「第三の道」の概念と政策
3 「ワーク・ライフ・バランス」政策の論理──ジェンダー平等政策から雇用政策へ
4 おわりに──WLB政策のインプリケーション
第3章 第二世代の両立支援と労働法──スウェーデン法を参考に (両角道代)
1 雇用システムと労働法
2 両立をめぐる法政策の基本構造
3 両立に関連する雇用上の不利益と法規制
4 第二世代の両立支援の構造と基本理念
5 日本法への示唆
第Ⅱ部 福祉レジームと家族政策
第4章 アメリカの福祉改革 福祉退出者研究の教訓と洞察 (江沢あや/前原直子訳)
1 アメリカの福祉改革から15年
2 アメリカ福祉改革
3 個人的責任とTANF(貧困世帯一時扶助)
4 福祉改革とその結果の評価
5 改革がもたらした結果の評価──日本への教訓
第5章 イギリスの成年後見法にみる福祉社会の構想──判断能力の不十分な成年者をとりまく家族、社会、国家 (菅富美枝)
1 本章の視点
2 2005年意思決定能力法
3 家族の枠組みを超えた支援体制──制度の担い手としての広義の「市民」
4 家族の機能を補完する仕組みの構築
5 むすびにかえて──個人、家族、市民、国家が織りなす、自己決定を支援する社会
第6章 フランスの家族手当と家族政策の歴史的転換──「主婦手当」問題を中心として (深澤敦)
1 本章の課題と「二階建て」のフランス家族手当制度
2 フランスにおける家族手当制度の生成と展開
3 仲裁裁定と最初の主婦手当(割増)の導入
4 1938年11月12日政令法と「家族法典」
5 第二次世界大戦後における家族手当と家族政策の展開
第7章 ドイツ社会国家と家族政策 (齋藤純子)
1 家族に対する経済的支援の展開
2 児童手当──子の存在にもとづく普遍的な給付
3 育児休業制度──親手当と親時間への発展
4 保育の拡充
5 家族政策の変遷と社会国家の変容
第8章 ひとり親家族の子育てと福祉援助──貧困家族におけるジェンダーと家族主義からの考察 (岩田美香)
1 問題の背景
2 ひとり親家族にみるジェンダーと家族責任の重なり
3 家族問題と家族主義
4 二つの「支え手」への援助展開
第Ⅲ部 家族と女性の歴史分析
第9章 近代日本の企業福祉と労働者家族 (榎一江)
1 課題と方法
2 大正期におけるパターナリズムの再編
3 繊維産業の社宅・家族政策
4 労働者家族の生活──倉敷紡績の調査から
5 結語
第10章 イギリスにおける女性労働と古典派経済学──ガヴァネス問題から男女同一賃金論まで (舩木惠子)
1 淑女の貧困
2 『イングリッシュ・ウーマンズ・ジャーナル』における「ヴァネス問題」
3 パークスによる解説記事「ジョン・スチュアート・ミルの見解」
4 フォーセットとラズボーンの男女同一賃金論をめぐる相異
5 男女同一賃金論の二つの帰結
第11章 雑誌『青鞜』における「堕胎論争」の一考察──妊娠した原田皐月・伊藤野枝・平塚らいてうにとっての母になること (松尾純子)
1 「母性」を問う
2 「獄中の女より男に」──子どものための堕胎
3 両性の自律──避妊の肯定
4 性の自律の苦痛──避妊と子捨ての“あいだ”で
5 〈母性〉を問う──原田皐月・伊藤野枝・平塚らいてうの“新しい母”をふまえて
人名・事項索引
[執筆者](執筆・翻訳順)
ジェーン・ハンフリーズ(Jane Humphries) [第1章]
オックスフォード大学オールソウルズ・カレッジ教授
川崎 暁子(カワサキ アキコ) [第1章翻訳]
NPO法人Bridge Asia Foundation
原 伸子(ハラ ノブコ) [第2章](*編者)
法政大学経済学部教授
両角 道代(モロズミ ミチヨ) [第3章]
明治学院大学法学部教授
江沢 あや(エザワ アヤ) [第4章]
ライデン大学日本学部准教授
前原 直子(マエハラ ナオコ) [第4章翻訳]
中央大学経済研究所客員研究員
菅 富美枝(スガ フミエ) [第5章]
法政大学経済学部准教授
深澤 敦(フカサワ アツシ) [第6章]
立命館大学産業社会学部教授
齋藤 純子(サイトウ ジュンコ) [第7章]
国立国会図書館調査及び立法考査局社会労働調査室主幹
岩田 美香(イワタ ミカ) [第8章]
法政大学現代福祉学部教授
榎 一江(エノキ カズエ) [第9章]
法政大学大原社会問題研究所准教授
舩木 惠子(フナキ ケイコ) [第10章]
武蔵大学総合研究所研究員
松尾 純子(マツオ ジュンコ) [第11章]
法政大学大原社会問題研究所兼任研究員
ジェーン・ハンフリーズ(Jane Humphries) [第1章]
オックスフォード大学オールソウルズ・カレッジ教授
川崎 暁子(カワサキ アキコ) [第1章翻訳]
NPO法人Bridge Asia Foundation
原 伸子(ハラ ノブコ) [第2章](*編者)
法政大学経済学部教授
両角 道代(モロズミ ミチヨ) [第3章]
明治学院大学法学部教授
江沢 あや(エザワ アヤ) [第4章]
ライデン大学日本学部准教授
前原 直子(マエハラ ナオコ) [第4章翻訳]
中央大学経済研究所客員研究員
菅 富美枝(スガ フミエ) [第5章]
法政大学経済学部准教授
深澤 敦(フカサワ アツシ) [第6章]
立命館大学産業社会学部教授
齋藤 純子(サイトウ ジュンコ) [第7章]
国立国会図書館調査及び立法考査局社会労働調査室主幹
岩田 美香(イワタ ミカ) [第8章]
法政大学現代福祉学部教授
榎 一江(エノキ カズエ) [第9章]
法政大学大原社会問題研究所准教授
舩木 惠子(フナキ ケイコ) [第10章]
武蔵大学総合研究所研究員
松尾 純子(マツオ ジュンコ) [第11章]
法政大学大原社会問題研究所兼任研究員